The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF(01-64)

ポスター発表 PF(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 4:00 PM - 6:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PF04] 母子に発達課題がある事例に関する一考察

家族へのコンサルテーションと環境調整の必要性

沖原千菜美1, 吉川悟2 (1.龍谷大学, 2.龍谷大学)

Keywords:発達障害, システムズ・コンサルテーション

目   的
 近年,発達障害が注目され,発達相談が増加している。この場合,発達課題が子どもだけではなく,親にも課題があることで子育てに困難を感じていることも少なくない。本研究では,母子ともに発達障害及び知的能力障害の懸念がある事例を通し,周囲の支援の必要性とコンサルテーションの必要性について検討したい。
事例概要
主訴:双子のきょうだい(二卵性双生児)の言葉が少ない。関わり方に悩む。
家族構成:父(30代会社員),母(30代パート),姉(小学生),IP①(♂2歳),IP②(♂2歳),母方祖父(60代アルバイト),母方祖母(50代元看護師)
面接構造:
 X-1年初回。前任のThが担当。面接構造は1回50分で隔週。祖母に双子との関わり方を提示することを目的に,双子のどちらかと祖母と一緒にプレイルームに入りプレイセラピーを実施。
 X年よりThが担当。Thとの初回は祖母と母親を含む合同面接を実施。当初は前任の治療構造を継続したが,祖母(もしくは母親)が子どもの様子より,自分の話を優先することが多いため,途中からプレイルームにはIPだけ入る構造へ変更。1回50分。双子のきょうだいそれぞれ1回/2週来談。前半30分プレイセラピーを実施。後半20分を家族合同面接。また,1回/月母親面接(50分)を実施。その他,必要に応じて祖母面接,両親面接を実施。
結   果
 IPらは,各々1人だけで行動することがなく,最初は戸惑っていたが,次第にコミュニケーションが活発になり,個々の特徴も顕著になっていった。それを母親や祖母に報告することで,双子を常に1セットで捉えていた見方を変え,各々に合わせて行動したり,個々の成長を確認するようになった。また,母親自身,知的に課題があるため,SSTベースで面接を進めることで,祖母との会話や状況判断を学習する様子が見受けられ,母親自身も支援が必要であることを考え始めた。祖母へは,母親自身の相談機関が必要であることを確認し,Thがあらかじめ各支援機関と調整を行った。
 結果,祖母も次第に母親への支援の必要性を理解し,そのことについて話し合う場が広がった。
考   察
 本事例は,双子の発達課題を主訴として来談していたが,祖母と母親の親子関係が相談の主として語られることが繰り返されていた。家族内では高い緊張状態が日常化していると考えられ,そのために,IPらが注意喚起を起こしたり,行動化が繰り返されていた。そこで,面接構造で治療者が対応している相談機関は,双子の子育てについての相談機関であることを明確にした。且つ,祖母と母親については,コミュニケーション構造が変わるよう介入はするが,基本的に成人対象の支援機関が必要なことを明確にすることを目的とした。
 当初は母親も祖母も障害受容に対する抵抗が見受けられた。しかし,治療者が母親面接を別枠で設定し,そこで母親の変化が生じ,祖母とのコミュニケーションが変化したこと,治療者が関係機関と事前調整を行ったことから,母親の支援機関の利用を検討し始めた。
 結果,母親自身が支援を受けられるようになり,祖母の母親に対する障害受容も促進され,家族内の関わりそのものが変化していったと考えられる。