日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PF(01-64)

ポスター発表 PF(01-64)

2016年10月9日(日) 16:00 〜 18:00 展示場 (1階展示場)

[PF12] 幼児期前期の積み木遊びの発達

親子遊びと一人遊びの比較

細谷里香 (兵庫教育大学)

キーワード:積み木, 幼児, 相互作用

問題と目的
 積み木遊びは幼児に好まれる遊びであるだけでなく,幼児期後期を対象とした研究から,幼児期の積み木構成スキルと空間的視覚化能力との関連性が見いだされるなど(Caldera et al., 1999),空間認知能力の発達との関連性からも注目されている(Kamii et al., 2004)。子どもの積み木遊びは年齢が上がるにつれて構成物が複雑になるが(Hanline, 2001),幼児期前期における積み木遊びの発達,および遊びにおける養育者などの大人との相互作用についてはあまり検討されていない。ヴィゴツキーの社会文化的発達理論によれば,子どもの新しい物事の学習は大人との相互作用の中で行われていくと考えられる(バーク・ウィンスラー, 2001)。本研究では,幼児期前期の子どもの積み木遊びが,親子で遊ぶ場面と一人遊び場面でどのように異なるか,また,1年後にどのように進展するか明らかにすることを目的とした。
方   法
参加者 参加者は事前に保護者より研究参加に対する同意が得られた,月齢18〜47ヶ月までの女児(Time1時における満年齢で1歳群9人,2歳群7人,3歳群10人)とその母親であった。
手続き Time1: 親子は一組ずつ来室し,研究に参加した。部屋には全7種類130個の積み木があり,参加児は一人で積み木遊びをする一人場面,母親と一緒に積み木遊びをする親子場面の二場面で自由に遊ぶよう促された。二場面の間には別の活動を実施し,場面の実施順序はカウンターバランスを取った。
 Time2: 約1年後にも同様にデータを取得した。
分析 各場面10分間のビデオ映像の中から2分ごとに5時点の静止画を作成した。構成物の複雑さについては,Reifel & Greenfield (1982)を参考に,0から3次元までの空間的次元の基準を設定した。さらに,低次元から高次元への移行段階と捉えられる中間評定値を設定し,全ての静止画について構成物の複雑さを評定した。5時点の評定値の平均をそれぞれの場面における構成物の複雑さを示す指標とした。
結果と考察
 Figure 1に各時期各場面の校正物の複雑さの平均評定値を年齢群別に示す。分散分析により年齢群差を検討したところ、Time1においては一人場面と親子場面ともに有意な年齢群差があり(p<.05),多重比較の結果,一人場面では3歳群が他の2群よりも有意に高く,親子場面では3歳群が1歳群よりも有意に高かった。Time2においても両場面とも年齢群差が見られる傾向にあった。
 次に,年齢群ごとに,場面(一人場面と親子場面)と時期(Time1とTime2)を被験者内要因とした二要因の分散分析を行った。全ての年齢群において場面の主効果が有意であった(p≦.001)。2歳群においてのみ,場面×時期の交互作用が認められた(p<.05)。単純主効果の検定の結果,親子場面においては構成物の複雑さの値はTime1から高く,1年後も有意な変化は認められなかったのに対し,一人場面においては構成物の複雑さが1年後に上昇した(p<.05)。子どもの積み木遊びは,大人とのやや高度な遊びが先行し,2歳から3歳にかけて,一人遊びの充実につながることが示唆される。(本研究はJSPS科研費若手(B)25750009の助成を受けて行われた。)