[PF20] レポート執筆におけるアウトラインツール利用の効果
大学生は論理関係を正しく判定できるか
Keywords:文章産出, 高等教育, アカデミックライティング
背 景
レポートの論理展開を検討するために,アウトラインの作成が重視されている。冨永ほか (2015) は,レポート作成の授業において大学生に論理展開を検討させるために,マップ,アウトラインマップ,詳細化アウトラインといった一連のアウトラインツールを用いた。その結果,レポート全体のまとまりや一貫性に対する意識が高まることが示唆された。その一方で,アウトラインツールを活用できた学習者と,そうでない学習者がいたことも明らかにされている(椿本ほか,2015)。本研究では,アウトラインツールを用いてレポートを執筆することにより,大学生が文と文との論理関係を正しく判定できるかをテストにより検証した。
授業概要
公立X大学情報系1年生を対象とした文章作成授業(半期15回,履修者302人)は,グラフを解説するミニ課題(500字程度)と,科学技術に関する自由テーマの意見文レポート(1500字程度)から構成される。執筆にあたっては,1)調べたことや自分の考えを図(マップ)に整理,2)主張とそれを支える証拠と理由づけの対応をアウトラインマップに整理,3)表計算ソフトを用いて情報と情報との関係を階層構造で表した詳細化アウトラインを作成した。詳細化アウトライン上で情報同士の関係や全体の流れを検討することにより,論理展開が適切な文章を目指した。
方 法
学期の初回(pre)および最終回(post)に,論理関係を問うテストを行った。テストでは,2つの文を示し,その2つの文の論理関係を選択肢から選ばせた(Table 1)。扱った論理関係は,藤田ほか(2015)をもとに,主張を支える証拠・理由づけ(5問),事実の因果関係(4問),詳細化(4問),言い換え・まとめ(2問),成立条件(2問),リスト・対照(3問)とした。問題数は20問(1問1点)であった。受講者には,各論理関係の意味を説明した資料を配布した。
結果および考察
pre・postテストの両方に解答した253人を分析対象とし,論理関係(6)×時期(2)の参加者内2要因分散分析を行ったところ,交互作用が有意であった(F(5,1260)=3.56, p <.01)。時期の単純主効果は,すべての論理関係において有意であり,preよりもpostのほうが高かった(Table 2)。論理関係の単純主効果は,pre・postともに有意であった(F(5,1260)=131.30, p <.01 ; F(5,1260)=102.87, p <.01)。preにおいては,言い換え・まとめ,詳細化,リスト・対照に有意な差はなく,これらが最も得点が高く,次に成立条件が高かった。証拠・理由づけと因果関係には有意な差はなく,最も得点が低かった。postにおいては,言い換え・まとめの得点が最も高く,次に詳細化とリスト・対照が高く,成立条件と続き,証拠・理由づけと因果関係が最も低かった。得点が低かった証拠・理由づけと因果関係では,事実と意見とを区別できず,「したがって」「なぜならば」という接続表現のみで判断し誤答しているケースが多く見受けられた。
引用文献
藤田 篤・柏野和佳子・大塚裕子・冨永敦子・椿本弥生(2015)文章作成・推敲教育に向けた詳細なアウトラインの仕様設計と修辞構造情報付与の試み.言語処理学会第21回年次大会,pp.241-244
冨永敦子・大塚裕子・椿本弥生(2015)アウトラインツールが大学生の文章産出困難感に与える影響.日本教育心理学会第57回総会,p.226
椿本弥生・冨永敦子・大塚裕子(2015)論理的文章の産出支援要素の活用度による学習者分類.日本教育工学会第31回全国大会,pp.623-624
レポートの論理展開を検討するために,アウトラインの作成が重視されている。冨永ほか (2015) は,レポート作成の授業において大学生に論理展開を検討させるために,マップ,アウトラインマップ,詳細化アウトラインといった一連のアウトラインツールを用いた。その結果,レポート全体のまとまりや一貫性に対する意識が高まることが示唆された。その一方で,アウトラインツールを活用できた学習者と,そうでない学習者がいたことも明らかにされている(椿本ほか,2015)。本研究では,アウトラインツールを用いてレポートを執筆することにより,大学生が文と文との論理関係を正しく判定できるかをテストにより検証した。
授業概要
公立X大学情報系1年生を対象とした文章作成授業(半期15回,履修者302人)は,グラフを解説するミニ課題(500字程度)と,科学技術に関する自由テーマの意見文レポート(1500字程度)から構成される。執筆にあたっては,1)調べたことや自分の考えを図(マップ)に整理,2)主張とそれを支える証拠と理由づけの対応をアウトラインマップに整理,3)表計算ソフトを用いて情報と情報との関係を階層構造で表した詳細化アウトラインを作成した。詳細化アウトライン上で情報同士の関係や全体の流れを検討することにより,論理展開が適切な文章を目指した。
方 法
学期の初回(pre)および最終回(post)に,論理関係を問うテストを行った。テストでは,2つの文を示し,その2つの文の論理関係を選択肢から選ばせた(Table 1)。扱った論理関係は,藤田ほか(2015)をもとに,主張を支える証拠・理由づけ(5問),事実の因果関係(4問),詳細化(4問),言い換え・まとめ(2問),成立条件(2問),リスト・対照(3問)とした。問題数は20問(1問1点)であった。受講者には,各論理関係の意味を説明した資料を配布した。
結果および考察
pre・postテストの両方に解答した253人を分析対象とし,論理関係(6)×時期(2)の参加者内2要因分散分析を行ったところ,交互作用が有意であった(F(5,1260)=3.56, p <.01)。時期の単純主効果は,すべての論理関係において有意であり,preよりもpostのほうが高かった(Table 2)。論理関係の単純主効果は,pre・postともに有意であった(F(5,1260)=131.30, p <.01 ; F(5,1260)=102.87, p <.01)。preにおいては,言い換え・まとめ,詳細化,リスト・対照に有意な差はなく,これらが最も得点が高く,次に成立条件が高かった。証拠・理由づけと因果関係には有意な差はなく,最も得点が低かった。postにおいては,言い換え・まとめの得点が最も高く,次に詳細化とリスト・対照が高く,成立条件と続き,証拠・理由づけと因果関係が最も低かった。得点が低かった証拠・理由づけと因果関係では,事実と意見とを区別できず,「したがって」「なぜならば」という接続表現のみで判断し誤答しているケースが多く見受けられた。
引用文献
藤田 篤・柏野和佳子・大塚裕子・冨永敦子・椿本弥生(2015)文章作成・推敲教育に向けた詳細なアウトラインの仕様設計と修辞構造情報付与の試み.言語処理学会第21回年次大会,pp.241-244
冨永敦子・大塚裕子・椿本弥生(2015)アウトラインツールが大学生の文章産出困難感に与える影響.日本教育心理学会第57回総会,p.226
椿本弥生・冨永敦子・大塚裕子(2015)論理的文章の産出支援要素の活用度による学習者分類.日本教育工学会第31回全国大会,pp.623-624