[PF25] 物語文における登場人物の心情理解に影響を及ぼす要因
プレゼントに対する読者の欲しさ評価の影響
キーワード:物語文, 心情理解
目 的
本研究では,読者の品物Aに対する[欲しい/欲しくない]の判断が,その品物Aをプレゼントされる登場人物の心情理解に,どのような影響を及ぼすかを,物語文を使用して検討する。
方 法
1.実験参加者 女子大生47名(19-21歳)
2.刺激呈示文 「ブローチ」(1200字程度)を,一部改変して使用した(女のレポート編集部編, 2010, pp.82-83)。あらすじを表1に示す。
呈示文には,[花瓶/ネックレス]のどちらか一方の品名が埋め込まれていた。2つの品名は,予備実験の結果に基づいて採用した。予備実験では,「高価で欲しいプレゼント」と「高価でいらないプレゼント」を自由記述してもらったが,前者で最も回答頻度が高かった品が「ネックレス」で,後者で回答頻度が高かった品が「花瓶」だった。
3.実験計画 1要因実験参加者間計画だった。
要因は呈示文の品物に対する読者の欲しさの程度で,2条件を設定した。
ネックレス条件=読者が欲しいプレゼント
花瓶条件=読者が欲しくないプレゼント
4.手続 条件に応じた呈示文を読んでもらった
後に,以下の3つの質問に回答してもらった。
質問1=主人公の「私」は,職場で先生に会えたことをどのくらいうれしいと思ったでしょう。
質問2=主人公の「私」は,田中先生に[花瓶/ネックレス]を買ってもらったことを,どのくらいうれしいと思ったでしょう。
質問3=主人公の「私」は,今,プレゼントをどのくらい大事にしていると思いますか。
質問1と質問2は,大変うれしい (5点) ~何とも思わない (1点) の5件法で回答してもらった。
質問3は,とても大事にする (10点) ~まったく
大事にしない (1点) の10件法を採用した。
結果と考察
1.先生と再会した「私」のうれしさ(質問1)
2条件で評定平均値に有意差は認められなかった(表2上段)。どちらの条件でも,先生と再会することができた主人公「私」のうれしさを,同程度に読み取っていると推測できる。
2.プレゼントに対する「私」のうれしさ(質問2)
花瓶条件のほうが,ネックレス条件よりも評定値が有意に高かった(表2下段)。この結果は,読者にとって欲しくない「花瓶」のほうが,主人公の心情を読み取りやすいことを示唆している。
3.「私」がプレゼントを大切に思う程度 (質問3)
花瓶条件のほうがネックレス条件よりも,評定値が有意に高かった(表3)。先生との思い出を象徴する品として,花瓶のほうが適切であったと推測できる。質問2と質問3の結果は,読者が欲しい品物ほど,それを読者に送る相手が特定化されていて,反対に,欲しくない品物ほど具体的な相手を想定していない可能性を示唆している。だから,花瓶条件のほうが,「先生」からもらった品物を大切にする主人公「私」の気持ちを理解しやすくなったのだろう。
本研究では,読者の品物Aに対する[欲しい/欲しくない]の判断が,その品物Aをプレゼントされる登場人物の心情理解に,どのような影響を及ぼすかを,物語文を使用して検討する。
方 法
1.実験参加者 女子大生47名(19-21歳)
2.刺激呈示文 「ブローチ」(1200字程度)を,一部改変して使用した(女のレポート編集部編, 2010, pp.82-83)。あらすじを表1に示す。
呈示文には,[花瓶/ネックレス]のどちらか一方の品名が埋め込まれていた。2つの品名は,予備実験の結果に基づいて採用した。予備実験では,「高価で欲しいプレゼント」と「高価でいらないプレゼント」を自由記述してもらったが,前者で最も回答頻度が高かった品が「ネックレス」で,後者で回答頻度が高かった品が「花瓶」だった。
3.実験計画 1要因実験参加者間計画だった。
要因は呈示文の品物に対する読者の欲しさの程度で,2条件を設定した。
ネックレス条件=読者が欲しいプレゼント
花瓶条件=読者が欲しくないプレゼント
4.手続 条件に応じた呈示文を読んでもらった
後に,以下の3つの質問に回答してもらった。
質問1=主人公の「私」は,職場で先生に会えたことをどのくらいうれしいと思ったでしょう。
質問2=主人公の「私」は,田中先生に[花瓶/ネックレス]を買ってもらったことを,どのくらいうれしいと思ったでしょう。
質問3=主人公の「私」は,今,プレゼントをどのくらい大事にしていると思いますか。
質問1と質問2は,大変うれしい (5点) ~何とも思わない (1点) の5件法で回答してもらった。
質問3は,とても大事にする (10点) ~まったく
大事にしない (1点) の10件法を採用した。
結果と考察
1.先生と再会した「私」のうれしさ(質問1)
2条件で評定平均値に有意差は認められなかった(表2上段)。どちらの条件でも,先生と再会することができた主人公「私」のうれしさを,同程度に読み取っていると推測できる。
2.プレゼントに対する「私」のうれしさ(質問2)
花瓶条件のほうが,ネックレス条件よりも評定値が有意に高かった(表2下段)。この結果は,読者にとって欲しくない「花瓶」のほうが,主人公の心情を読み取りやすいことを示唆している。
3.「私」がプレゼントを大切に思う程度 (質問3)
花瓶条件のほうがネックレス条件よりも,評定値が有意に高かった(表3)。先生との思い出を象徴する品として,花瓶のほうが適切であったと推測できる。質問2と質問3の結果は,読者が欲しい品物ほど,それを読者に送る相手が特定化されていて,反対に,欲しくない品物ほど具体的な相手を想定していない可能性を示唆している。だから,花瓶条件のほうが,「先生」からもらった品物を大切にする主人公「私」の気持ちを理解しやすくなったのだろう。