[PF31] ピアのやりとりのあり方にジェンダーと親密性がいかに影響を及ぼし,知識獲得の程度を異ならせるか
Keywords:協同活動, 知識獲得, ピア
目 的
奈田・丸野 (投稿中) では,親密性の高い子ども同士のペアでは,やりとりへの積極的態度を示すエラーバイアスの生起は見られず,知識獲得の程度も低かった。これは,メンバー間の親密性が高い集団では,課題外のやりとりが多く行われる (Shaw & Shaw, 1962) ように,ペア間の親密性が高いと,課題活動以外の部分でのやりとりも多くなり,当該の課題に積極的に参加できなくなるためと想定できる。しかしながら,この想定は,Shaw & Shaw (1962) と同様に,実験者の主観に基づくものである。また,やりとりのあり方は,親密性に加え,ジェンダーにも影響を受ける (Kutnick & Kington, 2005)。親密性の違いだけでは推し量られないやりとりの様相が,ジェンダーといった観点も含めることで見えてくるのである。そこで,本研究では,実験参加者児の実験時の様子をビデオに撮り,ペア間のやりとりのあり方の異なりと知識獲得の程度との関係性を検討していく。
方 法
実験参加児:親密性高男児ペア10組(平均年齢5.3歳),親密性高女児ペア10組 (平均年齢5.3歳),親密性低男児ペア10組 (平均年齢5.1歳),親密性低女児ペア9組 (平均年齢5.2歳)。
研究の流れ:参加児は,まず,部品を組み立てる順番をペアの相手と交代しながら構成玩具を5個作り (協同活動セッション),その後,各構成玩具を単独で作る (ポスト試行)。
結果及び考察
まず,やりとりの書き起こしから,『他児の知識獲得を支えるサポート的な側面が含まれた発言・行動』を抜き出し,Table 1に示すように,サポートの程度によってカテゴリ化を行い,各発言を分類した。さらに,『協同活動セッションでの手順通りにポスト試行で課題を完成できた程度』を知識獲得の程度を示すものとして算出した。次に,実験参加児の発言・行動の内容の頻度に関して条件間で異なりがあるのか否かを確かめるため,χ2検定を行った。その結果,有意差が得られ (χ2(18)=44.46, p<.01),やりとりで行われやすいサポートは,条件間で異なることが判明した。また,“課題には関係ない発言・行動”の発言先の頻度 (Table 2) が異なっているのか否かに関して直接確率検定を使用して検討した結果,1%水準で有意差が得られ,“課題には関係ない発言・行動”を向ける相手も,条件によって異なることが分かった。さらに,各参加児のポスト試行における課題成績の合計得点 (親密性高男児:13.9(3.29),親密性高女児:12.5 (3.56),親密性低男児:15.1 (3.08),親密性低女児:16.5 (2.98)) を分散分析したところ,課題成績は条件間で異なることが判明した。これらのことは,ペアのジェンダーや親密性の異なりにより,ペア間のやりとりのあり方が異なり,その結果,やりとりをしたことで得られる知識獲得の程度も異なってくることを意味している。
奈田・丸野 (投稿中) では,親密性の高い子ども同士のペアでは,やりとりへの積極的態度を示すエラーバイアスの生起は見られず,知識獲得の程度も低かった。これは,メンバー間の親密性が高い集団では,課題外のやりとりが多く行われる (Shaw & Shaw, 1962) ように,ペア間の親密性が高いと,課題活動以外の部分でのやりとりも多くなり,当該の課題に積極的に参加できなくなるためと想定できる。しかしながら,この想定は,Shaw & Shaw (1962) と同様に,実験者の主観に基づくものである。また,やりとりのあり方は,親密性に加え,ジェンダーにも影響を受ける (Kutnick & Kington, 2005)。親密性の違いだけでは推し量られないやりとりの様相が,ジェンダーといった観点も含めることで見えてくるのである。そこで,本研究では,実験参加者児の実験時の様子をビデオに撮り,ペア間のやりとりのあり方の異なりと知識獲得の程度との関係性を検討していく。
方 法
実験参加児:親密性高男児ペア10組(平均年齢5.3歳),親密性高女児ペア10組 (平均年齢5.3歳),親密性低男児ペア10組 (平均年齢5.1歳),親密性低女児ペア9組 (平均年齢5.2歳)。
研究の流れ:参加児は,まず,部品を組み立てる順番をペアの相手と交代しながら構成玩具を5個作り (協同活動セッション),その後,各構成玩具を単独で作る (ポスト試行)。
結果及び考察
まず,やりとりの書き起こしから,『他児の知識獲得を支えるサポート的な側面が含まれた発言・行動』を抜き出し,Table 1に示すように,サポートの程度によってカテゴリ化を行い,各発言を分類した。さらに,『協同活動セッションでの手順通りにポスト試行で課題を完成できた程度』を知識獲得の程度を示すものとして算出した。次に,実験参加児の発言・行動の内容の頻度に関して条件間で異なりがあるのか否かを確かめるため,χ2検定を行った。その結果,有意差が得られ (χ2(18)=44.46, p<.01),やりとりで行われやすいサポートは,条件間で異なることが判明した。また,“課題には関係ない発言・行動”の発言先の頻度 (Table 2) が異なっているのか否かに関して直接確率検定を使用して検討した結果,1%水準で有意差が得られ,“課題には関係ない発言・行動”を向ける相手も,条件によって異なることが分かった。さらに,各参加児のポスト試行における課題成績の合計得点 (親密性高男児:13.9(3.29),親密性高女児:12.5 (3.56),親密性低男児:15.1 (3.08),親密性低女児:16.5 (2.98)) を分散分析したところ,課題成績は条件間で異なることが判明した。これらのことは,ペアのジェンダーや親密性の異なりにより,ペア間のやりとりのあり方が異なり,その結果,やりとりをしたことで得られる知識獲得の程度も異なってくることを意味している。