[PF32] 理科学習に対する親の課題価値認知が子どもの学習行動に及ぼす影響
キーワード:動機づけ, 課題価値, 中学生
目 的
Eccles & Wigfield (1985) によって提唱された課題価値理論では,学習者のもつ学習内容に対する価値づけの高さが,動機づけや学習行動の予測因として重要な機能をもつことが明らかにされてきた。これらの知見を踏まえ,近年親や教師が子どもに学びの価値を伝達し,価値の認識を高める学習動機づけの社会化の機能が重要視されている (Simpkins, et al., 2014)。従来は主に学校教育場面が念頭に置かれ,教師による課題価値の教授についての研究が蓄積されてきた (e.g., Harackiewicz et al., 2014)。しかし,それぞれの子どもと最も長い時間を共に過ごす大人である親は,子どもの動機づけに与える影響も大きい。こうした背景から,海外では親子間での課題価値の伝達過程に着目した研究も行われている (e.g., Simpkins, et al., 2012)。
しかし,わが国では上記のような親子間における課題価値の伝達過程について検討された研究は未だみられない。また,海外の先行研究においても,親の認知する課題価値について価値の質的な側面ごとに分けて独自の効果について検討された研究はみられない。以上より,本研究は親の認知する課題価値について複数の下位因子を想定し,それぞれが子どもの課題価値認知,および学習行動に及ぼす影響について検討を行う。
方 法
対象者
中学生の子どもをもつ母子220組を対象とし,調査会社に委託してFax調査を行った。母親の平均年齢は44.58歳 (SD = 4.41) であった。子どもの平均年齢は13.78 (SD = 0.93) であり,男女各110名ずつであった。なお,本研究では子どもの学習課題として理科の授業について尋ねた。
質問紙
親の認知する課題価値:解良・中谷 (2014) で作成された中学生用課題価値尺度の項目内容を参考に,「私の子どもにとって」という文言を追加する形で作成した。下位因子として,興味価値,制度的利用価値,実用的利用価値を想定した。10項目7件法 親の関与行動:伊藤 (2015) などを参考に作成した。下位因子として自律性支援的関与行動と統制的関与行動を想定した。16項目6件法 中学生の認知する課題価値:解良・中谷 (2014) で作成された尺度を用いた。13項目5件法 学習方略:梅本 (2013) で作成された尺度を用いた。15項目4件法
結果と考察
本研究で新たに作成された尺度についてはまず探索的因子分析を行い,尺度構成を確認した。次に,親の課題価値が親の関与行動,そして子どもの課題価値認知を媒介して子どもの学習行動に与える影響プロセスについてパス解析を行った。なお,欠測値処理として完全情報最尤法を用いた。パス解析の結果,親が理科学習について,子どもにとって興味深く,実用的な有用性があるものと認知しているとき,子どもの自律性を支援するような形態の関与行動を行うことで子どもに課題価値の伝達を行うことが示された。
Eccles & Wigfield (1985) によって提唱された課題価値理論では,学習者のもつ学習内容に対する価値づけの高さが,動機づけや学習行動の予測因として重要な機能をもつことが明らかにされてきた。これらの知見を踏まえ,近年親や教師が子どもに学びの価値を伝達し,価値の認識を高める学習動機づけの社会化の機能が重要視されている (Simpkins, et al., 2014)。従来は主に学校教育場面が念頭に置かれ,教師による課題価値の教授についての研究が蓄積されてきた (e.g., Harackiewicz et al., 2014)。しかし,それぞれの子どもと最も長い時間を共に過ごす大人である親は,子どもの動機づけに与える影響も大きい。こうした背景から,海外では親子間での課題価値の伝達過程に着目した研究も行われている (e.g., Simpkins, et al., 2012)。
しかし,わが国では上記のような親子間における課題価値の伝達過程について検討された研究は未だみられない。また,海外の先行研究においても,親の認知する課題価値について価値の質的な側面ごとに分けて独自の効果について検討された研究はみられない。以上より,本研究は親の認知する課題価値について複数の下位因子を想定し,それぞれが子どもの課題価値認知,および学習行動に及ぼす影響について検討を行う。
方 法
対象者
中学生の子どもをもつ母子220組を対象とし,調査会社に委託してFax調査を行った。母親の平均年齢は44.58歳 (SD = 4.41) であった。子どもの平均年齢は13.78 (SD = 0.93) であり,男女各110名ずつであった。なお,本研究では子どもの学習課題として理科の授業について尋ねた。
質問紙
親の認知する課題価値:解良・中谷 (2014) で作成された中学生用課題価値尺度の項目内容を参考に,「私の子どもにとって」という文言を追加する形で作成した。下位因子として,興味価値,制度的利用価値,実用的利用価値を想定した。10項目7件法 親の関与行動:伊藤 (2015) などを参考に作成した。下位因子として自律性支援的関与行動と統制的関与行動を想定した。16項目6件法 中学生の認知する課題価値:解良・中谷 (2014) で作成された尺度を用いた。13項目5件法 学習方略:梅本 (2013) で作成された尺度を用いた。15項目4件法
結果と考察
本研究で新たに作成された尺度についてはまず探索的因子分析を行い,尺度構成を確認した。次に,親の課題価値が親の関与行動,そして子どもの課題価値認知を媒介して子どもの学習行動に与える影響プロセスについてパス解析を行った。なお,欠測値処理として完全情報最尤法を用いた。パス解析の結果,親が理科学習について,子どもにとって興味深く,実用的な有用性があるものと認知しているとき,子どもの自律性を支援するような形態の関与行動を行うことで子どもに課題価値の伝達を行うことが示された。