[PF34] 視点取得への介入教示が他者の言動に対する認知に与える影響
キーワード:コミュニケーション, 視点取得, 他者の言動の認知
問題と目的
人と人とが良い関係を構築し,それを維持するためには,お互いの意図や感情を適切に伝え,理解し合うことが必要である。そのためには,コミュニケーションの過程において,相手の視点に立って物事をとらえようとすること,すなわち視点取得 (perspective-taking) を行うことが必要である。筆者らは,大学生を対象としたコミュニケーション教育の設計を行うにあたり,視点取得を促す教示が他者の言動に対する認知や発話産出に与える影響について検討している。
本研究では,大学生間で日常的に行われるコミュニケーションの場面のうち「グループワーク」の場面を取り上げ,視点取得を促す教示が,聞き手の言動に対する話し手の認知に与える影響について検討した。
方 法
実験参加者:京阪地区の女子大学生66名(中央値:19歳,幅:19~20歳)
手続き:集団配布の質問紙実験の形式で,2015年7月に実施した。所要時間はおよそ20分であった。
場面設定:大学生同士のグループワークで,勝手に物事を進めてしまう友人Aに対して,Aの視点に立って,その思いや考えを推測するよう促した場合(他者視点群)と,自分自身の視点でAの言動を評価させた場合(自己視点群)では,Aの言動に対する認知が異なるかを検討した。
提示方法:会話形式のシナリオを提示した。詳細については発表当日に報告する。
教示と質問内容:
Q1.<他者視点群>
Aさんはどのような思いをもっていると思いますか?思いつくままに書いて下さい。
Q1.<自己視点群>
Aさんの言動をあなたはどう評価しますか?(良い,悪いなど)あなたの考えを書いて下さい。
※この後にQ2として,Aさんへのアドバイスを産出するよう求めた。(2016.7,ICPで発表予定)
個人特性,経験等に関する質問
1)視点取得能力に関する質問
多次元共感性尺度(MES)(鈴木・木野,2008)の下位尺度のうち視点取得に関する5項目を用い,5件法で回答を求めた。
2)経験 シナリオのような状況を経験したことがありますか。(はい,いいえ,わからない)
結果と考察
個人特性(視点取得能力)
視点取得能力に関する5項目の得点を平均して視点取得得点とし,他者視点群と自己視点群の視点取得得点についてt検定を行った結果,差は認められなかった(t(64)=-2.01, n.s.)。
Aさんの言動に対する認知の分類と教示による差
Q1についての回答は66件であった。Aさんの思いやその言動に対する実験参加者の考えに該当しない回答を除外した結果,64件の回答が分析対象となった。これらを分類した結果,「Aさんは自分の考えに自信をもっている」「Aさんは自分勝手である」「Aさんはグループ活動に貢献しようとしている」の3カテゴリーが得られた。そこで,全体の約50%にあたる33件を第一筆者と大学院生の計2名でダブルコーディングを行った。一致率を産出後(k=.63~1.00),一致しなかった回答について協議の上,再分類を行った。各カテゴリーに該当する表現を含む記述の数をTable 1に示す。各カテゴリー毎に群×記述数のχ2検定を行った結果,他者視点群では,Aさんは「自分の考えに自信をもっている」に該当する記述数が自己視点群に比べて有意に多く,「自分勝手である」の記述数が有意に少なかった。「グループ活動に貢献しようとしている」については差がなかった。
以上の結果より,視点取得への介入教示によって,Aさんが自分の考えを信じ,良かれと思ってそれを通そうとしているととらえるか,ただ自分勝手であるととらえるか,その言動に対する認知が異なることが明らかになった。なお,今回のシナリオのような状況を経験したことのある者は35名,ない者が15名,不明が16名であった。
人と人とが良い関係を構築し,それを維持するためには,お互いの意図や感情を適切に伝え,理解し合うことが必要である。そのためには,コミュニケーションの過程において,相手の視点に立って物事をとらえようとすること,すなわち視点取得 (perspective-taking) を行うことが必要である。筆者らは,大学生を対象としたコミュニケーション教育の設計を行うにあたり,視点取得を促す教示が他者の言動に対する認知や発話産出に与える影響について検討している。
本研究では,大学生間で日常的に行われるコミュニケーションの場面のうち「グループワーク」の場面を取り上げ,視点取得を促す教示が,聞き手の言動に対する話し手の認知に与える影響について検討した。
方 法
実験参加者:京阪地区の女子大学生66名(中央値:19歳,幅:19~20歳)
手続き:集団配布の質問紙実験の形式で,2015年7月に実施した。所要時間はおよそ20分であった。
場面設定:大学生同士のグループワークで,勝手に物事を進めてしまう友人Aに対して,Aの視点に立って,その思いや考えを推測するよう促した場合(他者視点群)と,自分自身の視点でAの言動を評価させた場合(自己視点群)では,Aの言動に対する認知が異なるかを検討した。
提示方法:会話形式のシナリオを提示した。詳細については発表当日に報告する。
教示と質問内容:
Q1.<他者視点群>
Aさんはどのような思いをもっていると思いますか?思いつくままに書いて下さい。
Q1.<自己視点群>
Aさんの言動をあなたはどう評価しますか?(良い,悪いなど)あなたの考えを書いて下さい。
※この後にQ2として,Aさんへのアドバイスを産出するよう求めた。(2016.7,ICPで発表予定)
個人特性,経験等に関する質問
1)視点取得能力に関する質問
多次元共感性尺度(MES)(鈴木・木野,2008)の下位尺度のうち視点取得に関する5項目を用い,5件法で回答を求めた。
2)経験 シナリオのような状況を経験したことがありますか。(はい,いいえ,わからない)
結果と考察
個人特性(視点取得能力)
視点取得能力に関する5項目の得点を平均して視点取得得点とし,他者視点群と自己視点群の視点取得得点についてt検定を行った結果,差は認められなかった(t(64)=-2.01, n.s.)。
Aさんの言動に対する認知の分類と教示による差
Q1についての回答は66件であった。Aさんの思いやその言動に対する実験参加者の考えに該当しない回答を除外した結果,64件の回答が分析対象となった。これらを分類した結果,「Aさんは自分の考えに自信をもっている」「Aさんは自分勝手である」「Aさんはグループ活動に貢献しようとしている」の3カテゴリーが得られた。そこで,全体の約50%にあたる33件を第一筆者と大学院生の計2名でダブルコーディングを行った。一致率を産出後(k=.63~1.00),一致しなかった回答について協議の上,再分類を行った。各カテゴリーに該当する表現を含む記述の数をTable 1に示す。各カテゴリー毎に群×記述数のχ2検定を行った結果,他者視点群では,Aさんは「自分の考えに自信をもっている」に該当する記述数が自己視点群に比べて有意に多く,「自分勝手である」の記述数が有意に少なかった。「グループ活動に貢献しようとしている」については差がなかった。
以上の結果より,視点取得への介入教示によって,Aさんが自分の考えを信じ,良かれと思ってそれを通そうとしているととらえるか,ただ自分勝手であるととらえるか,その言動に対する認知が異なることが明らかになった。なお,今回のシナリオのような状況を経験したことのある者は35名,ない者が15名,不明が16名であった。