[PF37] 小学校児童における検索型学習法の有効性の検証
精緻化学習法との比較
Keywords:検索型学習法, 精緻化学習法, 小学校児童
問題と目的
小学校児童を対象として,検索型学習法と精緻化学習法との比較実験パラダイム(Karpicke & Blunt, 2011)をもとに,検索型学習法の有効性を検証した実験の結果は一致していない。両学習法の課題成績間に差は検出されなかった(Karpicke, Blunt, Smith, & Karpicke, 2014, Experiment 1),あるいは精緻化学習法よりも,検索型学習法のほうが課題の成績が高かった(Ritchie, Della Sala, & McIntosh, 2013)という報告がなされている。したがって,児童においても,大学生と同様に,検索型学習法が,精緻化学習法よりも学習効果が高いのかどうかについては慎重な議論が必要である。
そこで本研究では,小学校児童を対象とした場合の,両学習法の効果比較のために実験を行った。
方 法
対象者
公立小学校に通う小学6年生48名であった。なお実験は2016年2月に行われた。
デザイン
学習法を1要因(検索型学習法と精緻化学習法)とする被験者内実験計画であった。検索型学習法は,読みと検索(手がかり再生課題)をくり返す方法であった。他方,精緻化学習法は,あとで友人に説明できるように,テキスト内容を図表や絵,記号などを用いてまとめる方法であった。
材料
テキストは,社会科に関するテキスト(「マラリアと防虫蚊帳[696字]」,「日本における高齢化[679字]」)であった。また問題は,逐語問題(9問)と応用問題(4問)の二種類を用意した。逐語問題とは,テキストに書かれてあるひとつの情報を用いることで解答可能な問題とし,応用問題は,テキストに書かれてある複数の情報を組み合わせることで解答可能な問題とした。なお,逐語問題の解答形式は,記述式と選択式があり,応用問題の形式は,選択式のみであった。
手続き
Figure 1に示されたように,実験は,通常授業のなかで,2クラスを対象に,学習セッション(1日目)とテストセッション(1週間後)にわたり行われた(各セッション2授業時間ずつ)。なお学習法の順番はクラスによってカウンターバランスがとられた。またテキストの呈示順番は共通とした。
結 果
主な結果をFigure 2に示した。問題合算(逐語問題と応用問題の正答数の合計)の正答率,および逐語問題と応用問題の正答率に対して,t検定を行ったところ,問題合算と逐語問題において,条件間に有意差が確認された(ps<.05)。他方,応用問題においては,条件間に有意差は確認されなかった(p=.24)。
考 察
検索型学習法は,精緻化学習法と比較して,児童を対象とした場合にも,その学習効果が高いことが示唆された。ただし応用問題では,大学生を対象とした場合と同様に,学習法のあいだに差がないという結果も得られている。このことから,テキストや問題の種類によっては,精緻化学習法のほうが有効に作用する場面がある可能性も示唆された。今後は,こういった材料特性に着目し,検索型学習法の特性の整理が必要となる。
引用文献
Karpicke, J. D., & Blunt, J. R. (2011). Science, 331.
Karpicke, J. D., Blunt, J. R., Smith, M. A., & Karpicke, S. S. (2014). Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 3.
Ritchie, S. J., Della Sala, S., & McIntosh, R. D. (2013). PloS one, e78976.
小学校児童を対象として,検索型学習法と精緻化学習法との比較実験パラダイム(Karpicke & Blunt, 2011)をもとに,検索型学習法の有効性を検証した実験の結果は一致していない。両学習法の課題成績間に差は検出されなかった(Karpicke, Blunt, Smith, & Karpicke, 2014, Experiment 1),あるいは精緻化学習法よりも,検索型学習法のほうが課題の成績が高かった(Ritchie, Della Sala, & McIntosh, 2013)という報告がなされている。したがって,児童においても,大学生と同様に,検索型学習法が,精緻化学習法よりも学習効果が高いのかどうかについては慎重な議論が必要である。
そこで本研究では,小学校児童を対象とした場合の,両学習法の効果比較のために実験を行った。
方 法
対象者
公立小学校に通う小学6年生48名であった。なお実験は2016年2月に行われた。
デザイン
学習法を1要因(検索型学習法と精緻化学習法)とする被験者内実験計画であった。検索型学習法は,読みと検索(手がかり再生課題)をくり返す方法であった。他方,精緻化学習法は,あとで友人に説明できるように,テキスト内容を図表や絵,記号などを用いてまとめる方法であった。
材料
テキストは,社会科に関するテキスト(「マラリアと防虫蚊帳[696字]」,「日本における高齢化[679字]」)であった。また問題は,逐語問題(9問)と応用問題(4問)の二種類を用意した。逐語問題とは,テキストに書かれてあるひとつの情報を用いることで解答可能な問題とし,応用問題は,テキストに書かれてある複数の情報を組み合わせることで解答可能な問題とした。なお,逐語問題の解答形式は,記述式と選択式があり,応用問題の形式は,選択式のみであった。
手続き
Figure 1に示されたように,実験は,通常授業のなかで,2クラスを対象に,学習セッション(1日目)とテストセッション(1週間後)にわたり行われた(各セッション2授業時間ずつ)。なお学習法の順番はクラスによってカウンターバランスがとられた。またテキストの呈示順番は共通とした。
結 果
主な結果をFigure 2に示した。問題合算(逐語問題と応用問題の正答数の合計)の正答率,および逐語問題と応用問題の正答率に対して,t検定を行ったところ,問題合算と逐語問題において,条件間に有意差が確認された(ps<.05)。他方,応用問題においては,条件間に有意差は確認されなかった(p=.24)。
考 察
検索型学習法は,精緻化学習法と比較して,児童を対象とした場合にも,その学習効果が高いことが示唆された。ただし応用問題では,大学生を対象とした場合と同様に,学習法のあいだに差がないという結果も得られている。このことから,テキストや問題の種類によっては,精緻化学習法のほうが有効に作用する場面がある可能性も示唆された。今後は,こういった材料特性に着目し,検索型学習法の特性の整理が必要となる。
引用文献
Karpicke, J. D., & Blunt, J. R. (2011). Science, 331.
Karpicke, J. D., Blunt, J. R., Smith, M. A., & Karpicke, S. S. (2014). Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 3.
Ritchie, S. J., Della Sala, S., & McIntosh, R. D. (2013). PloS one, e78976.