[PF39] 不登校経験のある高校生の身体的表現活動による自己評価の変化について
通信制高校生へのインタビュー調査から
キーワード:身体的表現活動, 不登校経験, 通信制高校生
問題と目的
1980年後半から,高等学校では(以下,高校という)中途退学者(以下,中退という)が12万人を超え,新たな教育問題とし注目されるようになった。さらに,減少傾向にあった高校における,不登校は約56,000人と再び増加に転じている(文部科学省,2014)。その不登校や中退の受け皿として社会的認知が進む、通信制高校の不登校経験のある高校生に「自分を変えたい」や「現状を変えよう」とする自己概念の変容や,「学校は楽しい活動の場」となる行動の変容につながる身体的表現教育(表現活動)を行う事が,どのように自己の成長に繋がり,不登校状態の時に感じていた精神面の脆さ,自信のなさ,健康面の不安が解消されるのかインタビュー調査からの考察を行った。
方 法
調査対象 2012年4月入学で表現活動を行う登校を基本とする全日型通信制高校の生徒。1年次/25名,2年次前期/33名,2年次後期/6名,3年次/18名
調査期間 2012年~2014年の3年間
調査内容 半構造化面接法を用いたインタビュー調査
倫理的配慮 事前に調査目的,方法,内容を保護者・生徒に調査内容を伝え,同意が得られた生徒に研究者と臨床心理で
面接を行った。
結果と考察
<分析Ⅰ>1年次・2年次(前後期)のインタビュー調査で,表現活動を行う生徒の自己評価の変化に関連する要因の分類を行った。生徒の成長に繋がっていると推測される要因は,【先生との関わり】,【先輩との関わり】,【後輩との関わり】,【同期との関わり】,【表現活動】と大きく5つに分類できた。【先生との関わり】は,ダメ出しなどで叱られることが,怖かったり・悔しかったりしたが,そこには大きな愛情があり,その後の成長するための努力に繋がったとしている。【先輩とのかかわり】は先輩に憧れを抱いて接したことや,今後は先輩のように憧れられて後輩を育てたいという思いが語られた。特に後輩が誕生する2年次の進級時期には,先輩のようになれるのかという不安と,そうなりたいという決意が語られた。【後輩との関わり】では,表現教育の技術指導を通して,仲間意識の結束をはかりたいとしている。【同期との関わり】では,負けたくない良きライバルとして意識はしているが,互いの信頼関係はとても厚く,無くてはならない絶対的な存在として語られた。「表現活動」では,誰にも負けずにいい役をしたい,そのためにも新たなことに挑戦し逃げないと決意し,朝練も含めて稽古に励んでいることが浮き彫りになった。【自分自身の成長】では,進学までの不安や,対人関係への恐怖などが,表現活動を行っていく事で,責任感も芽生え学校や活動を休みたくないと感じるようになったと述べ,疲れていても幸せや充実感を持っていることがわかった。
<分析Ⅱ>全対象者のインタビュー結果をもとに1,2年次と3年次の語りを比較した。その結果,表現活動を通して生徒の自己評価に変化が生じていることが推測された。3年次は表現活動そのものに対する語りも増え,【達成感】,【課題に取り組む困難】,【新しい自分への変化】など成長に繋がる要因が増えたと考えられる。経験に裏付けられた【課題を越える経験】,【経験による自信】という新たな語りや,卒業後の進路や目標も明確になることから【考えの明確化】,【経験による現実的目標】という考え方ができるようになったことが確認できた。さらに,以前に比べ人間関係の広がりにおいては,【最高学年の責任感】,【先生への信頼】,【活動メンバーの存在】,【家族の支え】など自己成長に繋がったことが伺えた。表現に関しても【表現活動の良さ】という新たな思いが語りの中に現れた。1年次から3年次までに表現活動から得た力として,日常生活の中で自分を出せる【演じること】に意識が及んでいることや,【自尊感情】の高まりによって自信ができたこと,また逆境も乗り越えるレジリエンスの一つである,将来の進路や目標を明確に持つ【将来展望】が強化されたことが確認できた。このように,表現活動を通して,不登校経験をした時の精神面の脆さや,自信のなさを克服し,特に健康面では休まない思いが強くなっていることが伺えた。以上より不登校経験のある高校生が表現教育に取り組むことで強化される側面について考察することができた。
1980年後半から,高等学校では(以下,高校という)中途退学者(以下,中退という)が12万人を超え,新たな教育問題とし注目されるようになった。さらに,減少傾向にあった高校における,不登校は約56,000人と再び増加に転じている(文部科学省,2014)。その不登校や中退の受け皿として社会的認知が進む、通信制高校の不登校経験のある高校生に「自分を変えたい」や「現状を変えよう」とする自己概念の変容や,「学校は楽しい活動の場」となる行動の変容につながる身体的表現教育(表現活動)を行う事が,どのように自己の成長に繋がり,不登校状態の時に感じていた精神面の脆さ,自信のなさ,健康面の不安が解消されるのかインタビュー調査からの考察を行った。
方 法
調査対象 2012年4月入学で表現活動を行う登校を基本とする全日型通信制高校の生徒。1年次/25名,2年次前期/33名,2年次後期/6名,3年次/18名
調査期間 2012年~2014年の3年間
調査内容 半構造化面接法を用いたインタビュー調査
倫理的配慮 事前に調査目的,方法,内容を保護者・生徒に調査内容を伝え,同意が得られた生徒に研究者と臨床心理で
面接を行った。
結果と考察
<分析Ⅰ>1年次・2年次(前後期)のインタビュー調査で,表現活動を行う生徒の自己評価の変化に関連する要因の分類を行った。生徒の成長に繋がっていると推測される要因は,【先生との関わり】,【先輩との関わり】,【後輩との関わり】,【同期との関わり】,【表現活動】と大きく5つに分類できた。【先生との関わり】は,ダメ出しなどで叱られることが,怖かったり・悔しかったりしたが,そこには大きな愛情があり,その後の成長するための努力に繋がったとしている。【先輩とのかかわり】は先輩に憧れを抱いて接したことや,今後は先輩のように憧れられて後輩を育てたいという思いが語られた。特に後輩が誕生する2年次の進級時期には,先輩のようになれるのかという不安と,そうなりたいという決意が語られた。【後輩との関わり】では,表現教育の技術指導を通して,仲間意識の結束をはかりたいとしている。【同期との関わり】では,負けたくない良きライバルとして意識はしているが,互いの信頼関係はとても厚く,無くてはならない絶対的な存在として語られた。「表現活動」では,誰にも負けずにいい役をしたい,そのためにも新たなことに挑戦し逃げないと決意し,朝練も含めて稽古に励んでいることが浮き彫りになった。【自分自身の成長】では,進学までの不安や,対人関係への恐怖などが,表現活動を行っていく事で,責任感も芽生え学校や活動を休みたくないと感じるようになったと述べ,疲れていても幸せや充実感を持っていることがわかった。
<分析Ⅱ>全対象者のインタビュー結果をもとに1,2年次と3年次の語りを比較した。その結果,表現活動を通して生徒の自己評価に変化が生じていることが推測された。3年次は表現活動そのものに対する語りも増え,【達成感】,【課題に取り組む困難】,【新しい自分への変化】など成長に繋がる要因が増えたと考えられる。経験に裏付けられた【課題を越える経験】,【経験による自信】という新たな語りや,卒業後の進路や目標も明確になることから【考えの明確化】,【経験による現実的目標】という考え方ができるようになったことが確認できた。さらに,以前に比べ人間関係の広がりにおいては,【最高学年の責任感】,【先生への信頼】,【活動メンバーの存在】,【家族の支え】など自己成長に繋がったことが伺えた。表現に関しても【表現活動の良さ】という新たな思いが語りの中に現れた。1年次から3年次までに表現活動から得た力として,日常生活の中で自分を出せる【演じること】に意識が及んでいることや,【自尊感情】の高まりによって自信ができたこと,また逆境も乗り越えるレジリエンスの一つである,将来の進路や目標を明確に持つ【将来展望】が強化されたことが確認できた。このように,表現活動を通して,不登校経験をした時の精神面の脆さや,自信のなさを克服し,特に健康面では休まない思いが強くなっていることが伺えた。以上より不登校経験のある高校生が表現教育に取り組むことで強化される側面について考察することができた。