日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PF(01-64)

ポスター発表 PF(01-64)

2016年10月9日(日) 16:00 〜 18:00 展示場 (1階展示場)

[PF54] 大学受験の捉え方,キャリア選択の重要度とキャリア選択自己効力感,結果期待,職業決定の関係

秋山史子 (学習院大学)

キーワード:大学受験, キャリア選択の重要度, キャリア選択自己効力感

問題と目的
 キャリア選択自己効力感と職業決定の関係を検討した研究において,キャリア選択自己効力感が職業決定を予測していることを示した研究は数多い(例:安達,2001)。しかし,キャリア選択自己効力感がどのような要因によって影響されているのか検討した研究は未だ少ない。
 そもそもBandura(1977)は自己効力感が達成経験など4つの情報源によって規定されるとしている。従って,キャリア選択自己効力感に関しても当該行動の達成経験が基になっていると考えられるが,大学生にとってキャリア選択行動は未経験であるため,それまでに経験した類似する課題の達成経験など当該行動以外の経験を考える必要があるだろう。
 一方,達成経験以外にも課題の重要度が自己効力感に影響するという知見も見られ(蓑内,1993),キャリア選択の重要度もキャリア選択自己効力感や職業決定に影響することが考えられる。しかし,これらの影響を検討した研究は見当たらない。
 したがって本研究の目的は,大学生が就職活動開始までの経験をどのように捉えているのか,そして職業選択や就職活動をどの程度重要であると感じているのかがキャリア選択自己効力感,結果期待,職業決定に与える影響を検討することである。本研究では大学生の就職活動前までの経験として,職業選択と同様に進路選択行動である大学受験の経験を取り上げ,検討する。
方   法
調査時期と手続き 2014年10~11月,関東圏内の私立大学2校において授業時間内に質問紙の一斉配布により調査を行った。
参加者 大学生231名(男性112名,女性119名;1年生91名,2年生61名,3年生79名)。
使用測度 1.大学受験の捉え方:Akiyama(2016)で作成された,大学受験とその受験勉強期間に関して現在どのように感じているかを測定する22項目を使用した。5件法。2.キャリア選択の重要度:就きたい職業を決めること,就職活動を行うことをどの程度重要であると感じているかを問う8項目を作成した。6件法。4.キャリア選択に対する自己効力感:花井(2008)のキャリア選択自己効力感尺度(Career Choice Self-Efficacy Scale: CCSE)25項目を使用。4件法。4.キャリア選択に対する結果期待:Betz,& Voyten(1997)を邦訳した安達(2001)のキャリア選択に対する結果期待尺度4項目,5件法。5.職業決定:下山(1986)の職業未決定尺度のうち「決定」因子4項目を用いた。
結果と考察
 初めに大学受験の捉え方尺度を因子分析(主因子法Promax回転)したところ,「努力成功経験」5項目(α=.820),「受験時不安経験」4項目(α=.841),「失敗経験」3項目(α=.848)の3因子12項目が得られた。次に大学受験の捉え方3因子,キャリア選択の重要度,CCSE,結果期待,職業決定の関係を共分散構造分析によって検討した。その結果をFigure 1に示す。
 Figure 1より,大学に合格する為に一生懸命頑張ったと現在認識しており,就職に必要な行動を遂行する自信が高いと就きたい職業の決定に繋がることが示された。また,受験で粘り強く努力したと感じており,就きたい職業を決めることや就職活動を大事なことであると認識していることは,必要な行動を完遂できるという自信があるときのみ,職業の決定に至ることも示された。よって,これから職業選択,就職活動を行う大学生にとって,大学受験という時間的に近い進路選択行動を粘り強く成し遂げたと認識していることが,キャリア選択自己効力感に影響を及ぼしていること,職業決定や就職活動の重要性は自己効力感の形成には有用であるが,重要性の認識だけでは職業決定には至らないことが示唆された。