[PF59] 大学生の共感経験と親和動機との関連
Keywords:大学生, 共感経験, 親和動機
問題と目的
近年,個人のウェルビーイングの検討において,「他者指向的な共感性」の重要性が指摘されている(鈴木・木野,2015)。また,共感性の得点を高く有する者の中には,自己中心的な観点からその体験を捉えている者がおり,共感と同情が混在しているという問題点があるため,識別のための尺度改良が検討されている(角田,1994)。以上より,共感性には対自的な感情と対他的な感情とがあり,これらの区別された認識が重要であるといえよう。
さらに,個人の共感性の背景には,それまでの価値観や学習歴が影響する(Davis,1999)と考えられている。感情の共有体験の捉え方が対自的か対他的かという問題は,過去の個人的・集団的体験から学習された人間関係への動機によって質的に異なってくるのではないかと推測され,これを検討することには意義があると考えられる。
そこで本研究では,個人の共感性と対人欲求との関連を,自他の区別に注目した共感経験の類型化により検討することを目的とする。
方 法
調査対象 私立A大学の大学2~4年生106名(男子60名,女子46名)。
調査時期 2016年1月中旬
使用尺度
1)角田(1994)の「共感経験尺度改定版」20項目。評定は,「1.全くあてはまらない」~「7.とてもあてはまる」の7件法である。
2)岡島(1988)の「親和動機尺度」26項目。評定は「1.まったく違う」~「5.まったくそのとおりだと思う」の5件法である。
結 果
共感経験尺度改定版(角田,1994)の因子分析の結果,「共有経験尺度(Scale of Sharing Experience:SSE)」および「共有不全経験尺度(Scale of Insufficient Sharing Experience:SISE)」の2尺度に分かれた。先行研究と同様に,全体の中央値を基準に高得点群と低得点群に分け,2尺度の組み合わせ(両向型,共有型,不全型,両貧型)から,共感性の類型化をおこなった。
この共感経験4タイプごとに,SSE得点およびSISE得点と親和動機の下位尺度得点との相関分析を行ったところ,それぞれの様相に違いが見られた。具体的には,両向型において「社会的比較」とSSE得点に有意な負の相関,共有型において「注目」とSSE得点に有意な正の相関,両貧型において「情緒的支持」とSSE得点に有意な正の相関が見られた。不全型は有意な相関が見られなかった。
考 察
結果より,共感経験4タイプにおける親和動機との相関には違いが見られた。「両向型」は自他を独立した存在として捉えることができ,自己の感情体験を内省する力をもつという(角田,1994)。ゆえに,自分をより良く見せるために他人と比較したいという動機(岡島,1988)ではなく,客観的な自己評価を有していると考えられる。また「共有型」は,自他を独立した存在とは見ることができない未分化な状態にあるという(角田,1994)。ゆえに,自分を認めて注目してほしいという対自的な動機(岡島,1988)を有していると考えられる。さらに「不全型」は,他者との共有体験を得にくく,孤独感をもち,対人世界への信頼感が低いという(角田,1994)。ゆえに,親和動機のどの項目とも関連が無かったと考えられる。最後に「両貧型」は,自意識の低さ,自己の形成の弱さといった傾向があるという(角田,1994)。ゆえに,自分が逆境にあるとき,つらい時に支えてほしいといった,対人依存的な動機(岡島,1988)を有していると考えられる。
近年,個人のウェルビーイングの検討において,「他者指向的な共感性」の重要性が指摘されている(鈴木・木野,2015)。また,共感性の得点を高く有する者の中には,自己中心的な観点からその体験を捉えている者がおり,共感と同情が混在しているという問題点があるため,識別のための尺度改良が検討されている(角田,1994)。以上より,共感性には対自的な感情と対他的な感情とがあり,これらの区別された認識が重要であるといえよう。
さらに,個人の共感性の背景には,それまでの価値観や学習歴が影響する(Davis,1999)と考えられている。感情の共有体験の捉え方が対自的か対他的かという問題は,過去の個人的・集団的体験から学習された人間関係への動機によって質的に異なってくるのではないかと推測され,これを検討することには意義があると考えられる。
そこで本研究では,個人の共感性と対人欲求との関連を,自他の区別に注目した共感経験の類型化により検討することを目的とする。
方 法
調査対象 私立A大学の大学2~4年生106名(男子60名,女子46名)。
調査時期 2016年1月中旬
使用尺度
1)角田(1994)の「共感経験尺度改定版」20項目。評定は,「1.全くあてはまらない」~「7.とてもあてはまる」の7件法である。
2)岡島(1988)の「親和動機尺度」26項目。評定は「1.まったく違う」~「5.まったくそのとおりだと思う」の5件法である。
結 果
共感経験尺度改定版(角田,1994)の因子分析の結果,「共有経験尺度(Scale of Sharing Experience:SSE)」および「共有不全経験尺度(Scale of Insufficient Sharing Experience:SISE)」の2尺度に分かれた。先行研究と同様に,全体の中央値を基準に高得点群と低得点群に分け,2尺度の組み合わせ(両向型,共有型,不全型,両貧型)から,共感性の類型化をおこなった。
この共感経験4タイプごとに,SSE得点およびSISE得点と親和動機の下位尺度得点との相関分析を行ったところ,それぞれの様相に違いが見られた。具体的には,両向型において「社会的比較」とSSE得点に有意な負の相関,共有型において「注目」とSSE得点に有意な正の相関,両貧型において「情緒的支持」とSSE得点に有意な正の相関が見られた。不全型は有意な相関が見られなかった。
考 察
結果より,共感経験4タイプにおける親和動機との相関には違いが見られた。「両向型」は自他を独立した存在として捉えることができ,自己の感情体験を内省する力をもつという(角田,1994)。ゆえに,自分をより良く見せるために他人と比較したいという動機(岡島,1988)ではなく,客観的な自己評価を有していると考えられる。また「共有型」は,自他を独立した存在とは見ることができない未分化な状態にあるという(角田,1994)。ゆえに,自分を認めて注目してほしいという対自的な動機(岡島,1988)を有していると考えられる。さらに「不全型」は,他者との共有体験を得にくく,孤独感をもち,対人世界への信頼感が低いという(角田,1994)。ゆえに,親和動機のどの項目とも関連が無かったと考えられる。最後に「両貧型」は,自意識の低さ,自己の形成の弱さといった傾向があるという(角田,1994)。ゆえに,自分が逆境にあるとき,つらい時に支えてほしいといった,対人依存的な動機(岡島,1988)を有していると考えられる。