[PG13] 子どもの情緒的サポートに効果的な養育の検討
養育者へのサポートにも注目して
Keywords:養育スキル, ソーシャル・サポート
目 的
近年,発達障害への支援として,ペアレント・トレーニングへの関心が高まっており,様々な研究が行われている(免田,2011)。しかし,これら研究の多くは,養育者を評価者としたものがほとんどあり,子どもを評価者とした研究は少ない。ペアレント・トレーニングが社会的意義を持つには,そこで訓練される養育スキルが子どもにとっても有益であることが望ましい。そこで本研究では,子どもが情緒的サポートを受けていると感じる養育スキル,つまり子どもにとって大切にされていると感じる養育スキルとはどのようなものなのかについて検討する。また,そのような養育スキルを促進には周囲のどのようなサポートが必要なのかについても同時に検討する。
方 法
対象 小学校4~6年生の児童およびその保護者238組(児童:男児115名,女児123名/養育者:男性3名,女性235名)
質問紙 ①情緒的サポート:小学生用ソーシャル・サポート尺度(児童用;嶋田,1993)②養育行動:養育スキル尺度(保護者用;三鈷,2008)③ソーシャル・サポート:ソーシャル・サポート尺度(保護者用;森下・木村,2004; 園田,2012の尺度を組み合わせて使用)
結 果
1.各尺度の因子分析
各尺度に因子分析を実施したところ,「小学生用ソーシャル・サポート尺度」で1因子(情緒的サポート),養育スキル尺度で5因子(言語的援助,物的報酬,関わり・関心,感情的叱責の抑制,誘導的しつけ),ソーシャル・サポート尺度で2因子(情緒的サポート,物理的サポート)が抽出された。
2.子どもの情緒的サポートと関連する養育
児童の情緒的サポートの因子得点と養育スキルの各因子得点の相関係数を求めた。その結果,児童の情緒的サポートと“誘導的しつけ”がr=.146,“言語的援助”がr=.159で両者ともに5%水準で有意な相関であった。
3.養育スキルへ影響するソーシャル・サポート
養育者のソーシャル・サポート尺度の各因子を独立変数,養育スキル尺度の各因子を従属変数として重回帰分析を行った。その結果,養育者への“情緒的サポート”が“誘導的しつけ”へβ=.21(p<.001),“物的報酬”へβ=.14(p<.05),“感情的叱責の抑制”へβ=.11(p<0.1),”“言語的援助”へβ=.11(p<.001)と有意であった。
考 察
「誘導的しつけ」とは子どもに自身の行動について考えるよう促す養育スキルであり,「言語的援助」とは良いことを褒めたり,励ますスキルのことを指す。どちらも子どもの行動を認知し,フィードバックすることが基本となる養育である。そのため,子どもは自分を見てもらっていて,愛され大切にされているという感覚を持てるのかもしれない。また,こうした養育を促進するには情緒的サポートが重要であることが示された。子どもの様子を落ち着いて見る必要のある養育には,まず養育者の心のゆとりが必要であることがうかがえる。
近年,発達障害への支援として,ペアレント・トレーニングへの関心が高まっており,様々な研究が行われている(免田,2011)。しかし,これら研究の多くは,養育者を評価者としたものがほとんどあり,子どもを評価者とした研究は少ない。ペアレント・トレーニングが社会的意義を持つには,そこで訓練される養育スキルが子どもにとっても有益であることが望ましい。そこで本研究では,子どもが情緒的サポートを受けていると感じる養育スキル,つまり子どもにとって大切にされていると感じる養育スキルとはどのようなものなのかについて検討する。また,そのような養育スキルを促進には周囲のどのようなサポートが必要なのかについても同時に検討する。
方 法
対象 小学校4~6年生の児童およびその保護者238組(児童:男児115名,女児123名/養育者:男性3名,女性235名)
質問紙 ①情緒的サポート:小学生用ソーシャル・サポート尺度(児童用;嶋田,1993)②養育行動:養育スキル尺度(保護者用;三鈷,2008)③ソーシャル・サポート:ソーシャル・サポート尺度(保護者用;森下・木村,2004; 園田,2012の尺度を組み合わせて使用)
結 果
1.各尺度の因子分析
各尺度に因子分析を実施したところ,「小学生用ソーシャル・サポート尺度」で1因子(情緒的サポート),養育スキル尺度で5因子(言語的援助,物的報酬,関わり・関心,感情的叱責の抑制,誘導的しつけ),ソーシャル・サポート尺度で2因子(情緒的サポート,物理的サポート)が抽出された。
2.子どもの情緒的サポートと関連する養育
児童の情緒的サポートの因子得点と養育スキルの各因子得点の相関係数を求めた。その結果,児童の情緒的サポートと“誘導的しつけ”がr=.146,“言語的援助”がr=.159で両者ともに5%水準で有意な相関であった。
3.養育スキルへ影響するソーシャル・サポート
養育者のソーシャル・サポート尺度の各因子を独立変数,養育スキル尺度の各因子を従属変数として重回帰分析を行った。その結果,養育者への“情緒的サポート”が“誘導的しつけ”へβ=.21(p<.001),“物的報酬”へβ=.14(p<.05),“感情的叱責の抑制”へβ=.11(p<0.1),”“言語的援助”へβ=.11(p<.001)と有意であった。
考 察
「誘導的しつけ」とは子どもに自身の行動について考えるよう促す養育スキルであり,「言語的援助」とは良いことを褒めたり,励ますスキルのことを指す。どちらも子どもの行動を認知し,フィードバックすることが基本となる養育である。そのため,子どもは自分を見てもらっていて,愛され大切にされているという感覚を持てるのかもしれない。また,こうした養育を促進するには情緒的サポートが重要であることが示された。子どもの様子を落ち着いて見る必要のある養育には,まず養育者の心のゆとりが必要であることがうかがえる。