[PG52] 大学生のLINE利用に関する基礎的研究
現実の人間関係とLINE上での行動特性の関連に着目して
キーワード:LINE, 攻撃性, 社会性
問題と目的
コミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」(以下「LINE」)の利用が10代・20代の間で広がっている。LINEの普及に伴い,小中高生の間でLINE上でのトラブルやいじめが報告されている。こういったLINE上の行動はしばしば現実の人間関係との差異が指摘されている。本研究は現実の人間関係における行動特性とLINE上における行動特性の関係を検討するために,大学生を対象として調査を行った。
方 法
東京都や埼玉県,神奈川県の大学生に質問紙調査を行った。調査内容は以下のとおりである。①学年・性別,②LINE利用の有無,③LINE上での行動特性を調べるため,「インターネット行動尺度」(藤・吉田,2009)の「自己開示」「所属感獲得」「攻撃的言動」をLINE に適用,④現実の人間関係における行動特性を調べるため,③の内容を現実の人間関係に置き換えて使用。調査協力者240名のうち,回答に不備のあった者と,「LINEに登録しているだけ」と回答した者を除く210名(88%)が本研究の最終的な分析対象となった。
結 果
① 現実の人間関係での行動特性による群分け
現実の人間関係における「自己開示」得点,「所属感獲得」得点,「攻撃的言動」得点を用いて,Ward法によるクラスタ分析を行い,3つのクラスタを得た(第1クラスタ:94名,第2クラスタ:88名,第3クラスタ:28名)。次に,得られた3つのクラスタを独立変数,「自己開示」「所属感獲得」「攻撃的言動」を従属変数とした分散分析を行った。その結果,すべてにおいて有意な群間差がみられた(自己開示:F(2,207)=.134,所属感獲得:F(2,207)=.70,攻撃的言動:F(2,207)=.75,すべてp<.001)。多重比較の結果から,「攻撃的言動」が他のクラスタより有意に高い第1クラスタを「対人攻撃優位群」,「自己開示」や「所属感獲得」が有意に高い第2クラスタを「対人関係積極群」,「自己開示」や「所属感獲得」が有意に低い第3クラスタを「対人関係消極群」と名付けた(Figure 1)。
② LINE上の行動特性に関する検討
①で得られた3つのクラスタを独立変数,LINE上での「自己開示」「所属感獲得」「攻撃的言動」を従属変数とした分散分析を行った(Table 1)。その結果,すべてにおいて有意な群間差がみられた(自己開示:F(2,207)=.14,所属感獲得:F(2,207)=.20,攻撃的言動:F(32,207)=.11,すべてp<.001)。
多重比較の結果,LINE上での「自己開示」「所属感獲得」は対人関係積極群,対人攻撃優位群が対人関係消極群より有意に高かった。またLINE上での「攻撃的言動」は対人攻撃優位群が対人関係積極群,対人関係消極群より有意に高かった。
考 察
結果より,現実の人間関係において攻撃的言動をとりやすい対人攻撃優位群は,LINE上でも攻撃的言動をとりやすいことが示された。また現実の人間関係において自己開示や所属感獲得をする傾向にある対人関係積極群はLINE上でも同様であり,対人関係消極群はLINE上でも自己開示や所属感を獲得しない傾向が示された。したがって,現実の人間関係での行動特性とLINE上での行動特性は類似する可能性が示唆された。これは,現実世界での社会とのかかわり方が,ネット上での行動を媒介しながら,ネット利用の影響(社会性・攻撃性への影響)を方向づけるという3段階の流れを想定した藤・吉田(2009)の研究とも一致する。
コミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」(以下「LINE」)の利用が10代・20代の間で広がっている。LINEの普及に伴い,小中高生の間でLINE上でのトラブルやいじめが報告されている。こういったLINE上の行動はしばしば現実の人間関係との差異が指摘されている。本研究は現実の人間関係における行動特性とLINE上における行動特性の関係を検討するために,大学生を対象として調査を行った。
方 法
東京都や埼玉県,神奈川県の大学生に質問紙調査を行った。調査内容は以下のとおりである。①学年・性別,②LINE利用の有無,③LINE上での行動特性を調べるため,「インターネット行動尺度」(藤・吉田,2009)の「自己開示」「所属感獲得」「攻撃的言動」をLINE に適用,④現実の人間関係における行動特性を調べるため,③の内容を現実の人間関係に置き換えて使用。調査協力者240名のうち,回答に不備のあった者と,「LINEに登録しているだけ」と回答した者を除く210名(88%)が本研究の最終的な分析対象となった。
結 果
① 現実の人間関係での行動特性による群分け
現実の人間関係における「自己開示」得点,「所属感獲得」得点,「攻撃的言動」得点を用いて,Ward法によるクラスタ分析を行い,3つのクラスタを得た(第1クラスタ:94名,第2クラスタ:88名,第3クラスタ:28名)。次に,得られた3つのクラスタを独立変数,「自己開示」「所属感獲得」「攻撃的言動」を従属変数とした分散分析を行った。その結果,すべてにおいて有意な群間差がみられた(自己開示:F(2,207)=.134,所属感獲得:F(2,207)=.70,攻撃的言動:F(2,207)=.75,すべてp<.001)。多重比較の結果から,「攻撃的言動」が他のクラスタより有意に高い第1クラスタを「対人攻撃優位群」,「自己開示」や「所属感獲得」が有意に高い第2クラスタを「対人関係積極群」,「自己開示」や「所属感獲得」が有意に低い第3クラスタを「対人関係消極群」と名付けた(Figure 1)。
② LINE上の行動特性に関する検討
①で得られた3つのクラスタを独立変数,LINE上での「自己開示」「所属感獲得」「攻撃的言動」を従属変数とした分散分析を行った(Table 1)。その結果,すべてにおいて有意な群間差がみられた(自己開示:F(2,207)=.14,所属感獲得:F(2,207)=.20,攻撃的言動:F(32,207)=.11,すべてp<.001)。
多重比較の結果,LINE上での「自己開示」「所属感獲得」は対人関係積極群,対人攻撃優位群が対人関係消極群より有意に高かった。またLINE上での「攻撃的言動」は対人攻撃優位群が対人関係積極群,対人関係消極群より有意に高かった。
考 察
結果より,現実の人間関係において攻撃的言動をとりやすい対人攻撃優位群は,LINE上でも攻撃的言動をとりやすいことが示された。また現実の人間関係において自己開示や所属感獲得をする傾向にある対人関係積極群はLINE上でも同様であり,対人関係消極群はLINE上でも自己開示や所属感を獲得しない傾向が示された。したがって,現実の人間関係での行動特性とLINE上での行動特性は類似する可能性が示唆された。これは,現実世界での社会とのかかわり方が,ネット上での行動を媒介しながら,ネット利用の影響(社会性・攻撃性への影響)を方向づけるという3段階の流れを想定した藤・吉田(2009)の研究とも一致する。