The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG(01-64)

ポスター発表 PG(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PG57] 死のイメージおよび死の意識・死別経験と孤独感

増田公男 (金城学院大学)

Keywords:孤独感, 死のイメージ, 死の意識

目   的
 死別はライフイベントのなかでも重大な出来事のひとつであり,老年期の発達課題として「配偶者との死別への適応」(Havighurst)があげられている。最近では,死生観との関係を取り上げ,「いのちの教育」の一環として教育現場で実践される例も少なくない。
 本研究は孤独感に着目し,死への意識や死別経験との関係を検討するために計画した。死別後の孤独感については代表的な特徴的反応とされており,それが何年も持続する可能性が指摘されている。したがって,その克服は,適応への重要な要因と考えられる。また,死の不安が高いほど,孤独感が強いとされている(隅谷,2003)。このように,重要な他者,ペットと死別する経験や死について意識することは,孤独感と関係している可能性があるというのが本調査での仮説である。
方  法
調査時期および対象
 本調査は,無記名式で2015年7月に女子大学生1から4年生206名を対象に実施し,未記入箇所があったものを除き分析対象は,184名で平均年齢は19.0歳であった。
調査内容
 今回分析の対象とした質問項目としては,最初に「死」から思い浮かべる3つの連想語を記入させ,その後15項目からなる「死の不安尺度(DAS)」(Templer,1970; 4件法),16項目からなる「孤独感尺度(LSO)」(落合,1983; 5件法)に関するものであった。孤独感尺度は,2軸からなる人間観に基づき「理解・共感可能性」(9項目)と「個別性への,気づき」の下位尺度から成立している。死別経験については,その有無を「強い悲しみや不安を感じた」場合に特定して,「家族・身内等」,「友人・知人等」,「ペット」別に「幼児期以前」から「大学生」までの6段階ごとに記入させた。ペットについては,種類も併せて記入を求めた。
結果と考察
死からの連想語
 調査対象からの各3語の連想語は,全部で517語が収集され,記入率は93.7%であった。同様の言葉や品詞の違いをまとめて頻度を調べたところ,全部で115種類の語になった。そのうち上位10位迄を表1に掲載した。「悲しみ」が最も高く,記入率は43.5%と4割を超えるものが記入していた。その後,「怖い」(24.5%),「天国」(19.6%)が続いた。連想語の数を限定しないで調査した上園(1997)の男女大学生対象の結果と比較すると,上位の「悲しみ」と「怖い」の2項目は順位は反対であったが同様で,さらに10位までのうち8つは共通していた。
 別途行った出現した語を肯定的,中間,否定的の観点から,評価した結果(28名)と対照すると,10位までに出現した語の否定的な語としての評定は,「天国」と「涙」を除いてすべて85%以上であった。「天国」の肯定的な語としての認定率は79%で,「涙」は中間的な語としての認定率が75%であった。
死の意識と孤独感
 死への意識の高い高群(40%)と意識の低い低群(40%)に分け,孤独感に関する各尺度について比較した。その結果,表2に示したように下位尺度の「理解・共感可能性」で有意差が確認された(p<.05)。また,「親身な相談相手はいない」(r-逆転項目),「他人の喜びや悩みを共有できる」など8項目で有意ないしは有意な傾向が認められ,「人間は一人ぼっちである」と「一人で生きるよう運命づけられている」以外では,死への意識が高い方が孤独感が高かった。このように全体としては,死への意識が高い方が孤独感も高いという結果になり,日頃から死への意識が高いことは,孤独感と関係している可能性を示唆した。
死別経験と孤独感
 死別経験を重要な他者およびペットに分け,2要因の分散分析を孤独感の各項目と下位2尺度,全体スコアについて実施した。その結果,身内との死別で「理解・共感可能性」の下位尺度と3項目とペットとの死別で4項目で,有意または傾向が認められたが,一貫した結果ではなかった。また,交互作用は4項目で認められた。
 また,重要な他者との死別経験の時期と孤独感の各尺度について相関は,認められなかった。
 このように,死別経験については,仮説の孤独感を高めるということが確認できなかった。
ペットでの死別対象と孤独感
 ペットの種類によっても差異があるのではないかと推測し,ほ乳類かそれ以外かに分け検討した。「同じ考えの人がいる」(r)と「互いにわかり合える」,「理解・共感可能性」と「全体スコア」で有意ないし有意な傾向が認められ,いずれもほ乳類の方が低くなっていた。
 全体として,死別経験よりも死への意識の方が孤独感と関係していることが推察させる結果となった。