[PG74] 小学生の居場所の実態と学校適応感の関連
心理学的観点から
Keywords:居場所, 学校適応感, 特性不安
問題と目的
近年,教育の分野をはじめ,様々なところで「居場所」という言葉を耳にするようになっている。不登校の未然防止として,すべての児童生徒によって居場所となる学校を目指すことなどが挙げられている(文部科学省,2010)。
こうした背景から心理学の分野においても居場所についての議論が多くなされているが,居場所の定義が研究者ごとに異なっている。例えば石本(2010)では,家族・友人等といる時に「自己有用感」,「本来感」を感じていること,杉本・庄司(2006)では,「自分ひとりの居場所」「家族のいる場所」等で,「被受容感」,「自己肯定感」等を感じていることを居場所として捉えている。このように,居場所とは「場所」か「人」か,また居場所で「どのような」感情を抱くか,ということが研究者により異なる。さらに,これらは研究者が思い描く居場所であり,実際に児童が認知する居場所とは異なる可能性もある。
そこで本研究では,従来の研究を包括的に捉えて居場所を考え,児童が認知する具体的な居場所を探っていく。合わせて,その居場所が学校適応感に与える影響についても検討する。
方 法
調査対象者 広島県内の小学5,6年生46名(男子19名,女子25名,不明2名)。
調査内容 居場所感1:石本(2010),大久保(2005)などを参考に「安心感」,「充実感」,「被受容感」,「自己有用感」の4因子を想定し,(場所):自分の部屋,家,クラス,学校(にいる時),(人)一人,家族,友人(でいる時)の居場所について尋ねた(計35項目,4件法)。居場所感2:居場所感1の7か所について,そこを「居場所」と感じるかどうか尋ねた(計7項目,4件法)。特性不安:曽我(1983)の児童用状態-特性不安尺度のうち,特性不安の2因子各々において因子負荷量の高かった3項目を採用し,回答を求めた(計6項目,4件法)。学校適応感:栗原・井上(2012)によって作成された学校環境適応感尺度(ASSESS)のうち,因子ごとに因子負荷量の高かった4項目を採用し,回答を求めた(計24項目,5件法)。
結果と考察
居場所感1の35項目について階層的クラスター分析(ユークリッド平方距離・Ward法)を行い,3クラスターを抽出した。その後,各クラスターを独立変数,居場所感1の35項目それぞれについて1要因分散分析を行った(Figure 1)。
クラスター3はクラスター2に比べ,家,家族の安心感を除く33項目で居場所感を有意に高く抱いていた。また,クラスター3はクラスター1に比べ,自分の部屋,家,学校,一人の4か所における「被受容感」,「自己有用感」を有意に高く抱いていた。さらに,居場所感2の7項目についての分析から,クラスター3はクラスター2に比べ,一人を除く6か所でその状況を「有意に高く居場所だと感じ,」クラスター1はクラスター2に比べ,家,一人,家族を除く4か所でその状況を有意に高く居場所だと感じていた。クラスター3とクラスター1の間に有意な差はみられなかった。
以上の結果から,まず,児童が認知する具体的な居場所のイメージは従来の研究と同様の4因子であることが考えられる。また,居場所が「ない」から「ある」に変わるには,先に「安心感」,「充実感」を感じられるような環境を作ることの必要性が示唆された。
近年,教育の分野をはじめ,様々なところで「居場所」という言葉を耳にするようになっている。不登校の未然防止として,すべての児童生徒によって居場所となる学校を目指すことなどが挙げられている(文部科学省,2010)。
こうした背景から心理学の分野においても居場所についての議論が多くなされているが,居場所の定義が研究者ごとに異なっている。例えば石本(2010)では,家族・友人等といる時に「自己有用感」,「本来感」を感じていること,杉本・庄司(2006)では,「自分ひとりの居場所」「家族のいる場所」等で,「被受容感」,「自己肯定感」等を感じていることを居場所として捉えている。このように,居場所とは「場所」か「人」か,また居場所で「どのような」感情を抱くか,ということが研究者により異なる。さらに,これらは研究者が思い描く居場所であり,実際に児童が認知する居場所とは異なる可能性もある。
そこで本研究では,従来の研究を包括的に捉えて居場所を考え,児童が認知する具体的な居場所を探っていく。合わせて,その居場所が学校適応感に与える影響についても検討する。
方 法
調査対象者 広島県内の小学5,6年生46名(男子19名,女子25名,不明2名)。
調査内容 居場所感1:石本(2010),大久保(2005)などを参考に「安心感」,「充実感」,「被受容感」,「自己有用感」の4因子を想定し,(場所):自分の部屋,家,クラス,学校(にいる時),(人)一人,家族,友人(でいる時)の居場所について尋ねた(計35項目,4件法)。居場所感2:居場所感1の7か所について,そこを「居場所」と感じるかどうか尋ねた(計7項目,4件法)。特性不安:曽我(1983)の児童用状態-特性不安尺度のうち,特性不安の2因子各々において因子負荷量の高かった3項目を採用し,回答を求めた(計6項目,4件法)。学校適応感:栗原・井上(2012)によって作成された学校環境適応感尺度(ASSESS)のうち,因子ごとに因子負荷量の高かった4項目を採用し,回答を求めた(計24項目,5件法)。
結果と考察
居場所感1の35項目について階層的クラスター分析(ユークリッド平方距離・Ward法)を行い,3クラスターを抽出した。その後,各クラスターを独立変数,居場所感1の35項目それぞれについて1要因分散分析を行った(Figure 1)。
クラスター3はクラスター2に比べ,家,家族の安心感を除く33項目で居場所感を有意に高く抱いていた。また,クラスター3はクラスター1に比べ,自分の部屋,家,学校,一人の4か所における「被受容感」,「自己有用感」を有意に高く抱いていた。さらに,居場所感2の7項目についての分析から,クラスター3はクラスター2に比べ,一人を除く6か所でその状況を「有意に高く居場所だと感じ,」クラスター1はクラスター2に比べ,家,一人,家族を除く4か所でその状況を有意に高く居場所だと感じていた。クラスター3とクラスター1の間に有意な差はみられなかった。
以上の結果から,まず,児童が認知する具体的な居場所のイメージは従来の研究と同様の4因子であることが考えられる。また,居場所が「ない」から「ある」に変わるには,先に「安心感」,「充実感」を感じられるような環境を作ることの必要性が示唆された。