[PG76] 小学校3年生における感情調整プログラムの効果
カンジョウレンジャーを用いての実践
キーワード:小学生, 感情調整, 学級単位
背景と目的
近年,子どもの学校適応にかかわる問題への予防的効果を期待し,学級単位の社会的スキル訓練(以下,SSTとする)が実施されている(大対・松見,2014など)。しかし,SSTにおいて獲得した適切なスキルを発揮したとしても,児童同士の対人関係では,相手が期待通りの対応をしてくれない場合もある。そのような場合には,対人関係のスキルだけでなく,自分の気持ちの理解や感情の調整を行えるようになることも重要である(井口・石川,2015)。本研究では,小学校3年生に実施された感情調整プログラムの効果を検討する。感情調整プログラムに参加したのは,プログラム実施前年度に言い争いなどの問題行動が多いと懸念されていた学年の児童であった。前年度の様子を受け,実施校より要望があったためプログラムを実施することとなった。
方 法
参加者 小学3年生3クラス109名の児童。
プログラム実施者 臨床心理学専攻の大学教員,当該校のSC,及び大学院生で構成された。
実施期間 201X年10月15日〜201X年11月29日の期間中,45分間のセッションを5回実施した。
プログラムの内容 第1〜2回『イライラってどんな気持ち?』,第3〜4回『イライラしたらどうする?』,第5回『全体の振り返り』であった。
1セッションの構成 セッションは,授業での約束事の確認,教示,ワーク,フィードバックから構成した。第3回と第4回では宿題を提示し,宿題を行った児童に対してはプログラムで使用したキャラクターのカードを配布した。
アセスメント(1)イライラチェックシートの実施(武藏,2015を参考に作成)。児童がどのような場面でどの程度イライラするかについての15項目に6件法で回答する自己記述式の質問紙を作成した。15項目の合計得点を算出して指標とした。イライラチェックシートは「イライラ」という感情についての授業を行った第2回と,プログラムが終了した第5回の授業で実施した。調査実施の際は,プログラム実施者の1人が質問項目を読み上げ,1項目ずつ記入を行った。質問項目の文言で児童に理解できないものがあれば,適宜周囲のプログラム実施者が質問を受け付けた。(2)担任教師による観察。プログラム実施前後2週間において,担任教師の感じた問題行動(言い争いなど)を記録した。記録用紙には日付,問題の内容,問題に関わった児童を記入する欄を設けた。
結果と考察
分析では,全ての授業に参加し,イライラチェックシートにおいて全ての質問項目に有効回答の得られた84名の児童のデータを対象とした。学年全体とクラス毎にイライラチェックシートの訓練前後の平均得点に関してt検定を行った結果,学年全体,クラスB,クラスCにおいて,有意な得点減少がみられた(p<.05,Table1参照)。このことから,プログラム実施が,多くの児童のイライラ感減少に寄与した可能性が示唆された。児童の全体の振り返りの感想には「授業で習った技を使ってイライラをやっつけたい」というものが多くみられた。
次に,プログラム実施前の担任教師よる観察で問題行動が2回以上見られた児童について,プログラム実施前後の問題行動数の変化をTable2に示した。プログラム実施前の担任教師による行動観察で,6名の児童の問題行動の多さが目立った。プログラム実施後では6名中5名の問題行動が減少した。このことから,本プログラムの実施が,特定の児童の問題行動の減少にも寄与した可能性が示唆された。
参考文献
武藏博文(編著)(2015).楽しく学べる怒りと不安のマネジメント カンジョウレンジャー&カイケツロボ エンパワメント研究所
近年,子どもの学校適応にかかわる問題への予防的効果を期待し,学級単位の社会的スキル訓練(以下,SSTとする)が実施されている(大対・松見,2014など)。しかし,SSTにおいて獲得した適切なスキルを発揮したとしても,児童同士の対人関係では,相手が期待通りの対応をしてくれない場合もある。そのような場合には,対人関係のスキルだけでなく,自分の気持ちの理解や感情の調整を行えるようになることも重要である(井口・石川,2015)。本研究では,小学校3年生に実施された感情調整プログラムの効果を検討する。感情調整プログラムに参加したのは,プログラム実施前年度に言い争いなどの問題行動が多いと懸念されていた学年の児童であった。前年度の様子を受け,実施校より要望があったためプログラムを実施することとなった。
方 法
参加者 小学3年生3クラス109名の児童。
プログラム実施者 臨床心理学専攻の大学教員,当該校のSC,及び大学院生で構成された。
実施期間 201X年10月15日〜201X年11月29日の期間中,45分間のセッションを5回実施した。
プログラムの内容 第1〜2回『イライラってどんな気持ち?』,第3〜4回『イライラしたらどうする?』,第5回『全体の振り返り』であった。
1セッションの構成 セッションは,授業での約束事の確認,教示,ワーク,フィードバックから構成した。第3回と第4回では宿題を提示し,宿題を行った児童に対してはプログラムで使用したキャラクターのカードを配布した。
アセスメント(1)イライラチェックシートの実施(武藏,2015を参考に作成)。児童がどのような場面でどの程度イライラするかについての15項目に6件法で回答する自己記述式の質問紙を作成した。15項目の合計得点を算出して指標とした。イライラチェックシートは「イライラ」という感情についての授業を行った第2回と,プログラムが終了した第5回の授業で実施した。調査実施の際は,プログラム実施者の1人が質問項目を読み上げ,1項目ずつ記入を行った。質問項目の文言で児童に理解できないものがあれば,適宜周囲のプログラム実施者が質問を受け付けた。(2)担任教師による観察。プログラム実施前後2週間において,担任教師の感じた問題行動(言い争いなど)を記録した。記録用紙には日付,問題の内容,問題に関わった児童を記入する欄を設けた。
結果と考察
分析では,全ての授業に参加し,イライラチェックシートにおいて全ての質問項目に有効回答の得られた84名の児童のデータを対象とした。学年全体とクラス毎にイライラチェックシートの訓練前後の平均得点に関してt検定を行った結果,学年全体,クラスB,クラスCにおいて,有意な得点減少がみられた(p<.05,Table1参照)。このことから,プログラム実施が,多くの児童のイライラ感減少に寄与した可能性が示唆された。児童の全体の振り返りの感想には「授業で習った技を使ってイライラをやっつけたい」というものが多くみられた。
次に,プログラム実施前の担任教師よる観察で問題行動が2回以上見られた児童について,プログラム実施前後の問題行動数の変化をTable2に示した。プログラム実施前の担任教師による行動観察で,6名の児童の問題行動の多さが目立った。プログラム実施後では6名中5名の問題行動が減少した。このことから,本プログラムの実施が,特定の児童の問題行動の減少にも寄与した可能性が示唆された。
参考文献
武藏博文(編著)(2015).楽しく学べる怒りと不安のマネジメント カンジョウレンジャー&カイケツロボ エンパワメント研究所