[PG78] 学級経営における教師の信念に関する質的研究
キーワード:学級経営, 教師の信念, PDCAサイクル
問題と目的
教師と子ども達との相互作用によって実現される学級経営において,教師の信念は大きな影響力をもっていると考えられる。しかし,これまでの教師の信念の研究においては,どのような学級集団を形成したいのか(学級観),その学級でどのような子ども達を育みたいのか(児童観),そして,そのために教師自身がどのような教師でありたいのか(教師観)という「学級経営における教師の信念」についての研究は十分に進んでいない。そこで本研究では,教師の語りの分析から,それぞれの教師に特有の「学級経営における教師の信念」を抽出すること,またそのような信念が実践とどのように関連しているのかについて検討する。
方 法
調査協力者:公立小学校1学年及び5学年の担任教師(4名)と児童(102名)の協力を得た。
調査期間・調査方法:学習発表会の準備開始時期である9月下旬から,学習発表会終了後の12月上旬の間に担任教師への半構造化面接(全3回)を実施し,そこで「学級経営における教師の信念」を捉えるために,教師としての思いや考え,学級の様子や課題などを尋ねた。学級の様子についてはビデオカメラとICレコーダーによって記録した。また,Q-Uを活用した学級や児童のアセスメントをもとに相互のコンサルテーションをはかった。「学級経営における教師の信念」の抽出においては,学校心理学の専門家によるスーパーバイズと大学院で学校心理学を学ぶ現職教員5名との数回にわたる検討により信頼性と妥当性を確保した。
結 果
Rokeach(1968)は,関連する信念の数が多いほど,その人らしい行動傾向となって表出すると述べている。そこで,時期を変えても何度も表出した担任教師の言葉や内容を学級観,児童観,教師観の3つの観点で抽出した。その内容を象徴する言葉を一つずつにまとめ,教師信念キーワードとした。そして,各教師の教師信念キーワードを使用した語りが含まれている「学級経営における一連の思考(Figure 1)」を基に,「学級経営における教師の信念」を文章化した。
教師の信念は,実際の教育実践の中でも様々な場面で,時期を変えても何度も表出されていた。中でも,A教師の教師信念キーワード(学級観)「自分達で」という言葉は,全撮影日数25日間の内,11日間で表出している場面が見られた。特に,学習発表会に向けた授業や学級活動など,学級みんなで取り組む場面で多く表出していることがわかった。子ども達は,A教師の考え方を受け取り,自分達で活動している場面が多く見られた。Q-Uの学級満足度尺度の変化も,73.3%の児童が好ましい変化を示した。「学級経営における教師の信念」と実践が一貫していたために,教師と子ども達との相互作用が良好であったと考えられる。
考 察
一人の教師が,繰り返し表出する言葉や内容は,教育活動全般において,その人らしい行動傾向となって表出しており,学級集団づくりに影響を与えると考えられる。また,教師の信念と実践が一貫していれば,子ども達は,教師の思いを受け取り,好ましい行動へ変容すると考えられる。
教師の信念と実践を一貫させることや,教師の信念を実現させる手立てやはたらきかけを柔軟に見直していくことは,子ども達の成長を促す助けとなる。教師にとって必要なことは,この一貫性と柔軟性の調整力をもつことである。
そして,PDCAサイクルで,学級や子ども達の実態を振り返り,「学級経営における教師の信念」を見直し改善していくことは,教師の持ち味を活かしながら,子ども達との相互作用を豊かなものにするために大切なことである(Figure 2)。
教師と子ども達との相互作用によって実現される学級経営において,教師の信念は大きな影響力をもっていると考えられる。しかし,これまでの教師の信念の研究においては,どのような学級集団を形成したいのか(学級観),その学級でどのような子ども達を育みたいのか(児童観),そして,そのために教師自身がどのような教師でありたいのか(教師観)という「学級経営における教師の信念」についての研究は十分に進んでいない。そこで本研究では,教師の語りの分析から,それぞれの教師に特有の「学級経営における教師の信念」を抽出すること,またそのような信念が実践とどのように関連しているのかについて検討する。
方 法
調査協力者:公立小学校1学年及び5学年の担任教師(4名)と児童(102名)の協力を得た。
調査期間・調査方法:学習発表会の準備開始時期である9月下旬から,学習発表会終了後の12月上旬の間に担任教師への半構造化面接(全3回)を実施し,そこで「学級経営における教師の信念」を捉えるために,教師としての思いや考え,学級の様子や課題などを尋ねた。学級の様子についてはビデオカメラとICレコーダーによって記録した。また,Q-Uを活用した学級や児童のアセスメントをもとに相互のコンサルテーションをはかった。「学級経営における教師の信念」の抽出においては,学校心理学の専門家によるスーパーバイズと大学院で学校心理学を学ぶ現職教員5名との数回にわたる検討により信頼性と妥当性を確保した。
結 果
Rokeach(1968)は,関連する信念の数が多いほど,その人らしい行動傾向となって表出すると述べている。そこで,時期を変えても何度も表出した担任教師の言葉や内容を学級観,児童観,教師観の3つの観点で抽出した。その内容を象徴する言葉を一つずつにまとめ,教師信念キーワードとした。そして,各教師の教師信念キーワードを使用した語りが含まれている「学級経営における一連の思考(Figure 1)」を基に,「学級経営における教師の信念」を文章化した。
教師の信念は,実際の教育実践の中でも様々な場面で,時期を変えても何度も表出されていた。中でも,A教師の教師信念キーワード(学級観)「自分達で」という言葉は,全撮影日数25日間の内,11日間で表出している場面が見られた。特に,学習発表会に向けた授業や学級活動など,学級みんなで取り組む場面で多く表出していることがわかった。子ども達は,A教師の考え方を受け取り,自分達で活動している場面が多く見られた。Q-Uの学級満足度尺度の変化も,73.3%の児童が好ましい変化を示した。「学級経営における教師の信念」と実践が一貫していたために,教師と子ども達との相互作用が良好であったと考えられる。
考 察
一人の教師が,繰り返し表出する言葉や内容は,教育活動全般において,その人らしい行動傾向となって表出しており,学級集団づくりに影響を与えると考えられる。また,教師の信念と実践が一貫していれば,子ども達は,教師の思いを受け取り,好ましい行動へ変容すると考えられる。
教師の信念と実践を一貫させることや,教師の信念を実現させる手立てやはたらきかけを柔軟に見直していくことは,子ども達の成長を促す助けとなる。教師にとって必要なことは,この一貫性と柔軟性の調整力をもつことである。
そして,PDCAサイクルで,学級や子ども達の実態を振り返り,「学級経営における教師の信念」を見直し改善していくことは,教師の持ち味を活かしながら,子ども達との相互作用を豊かなものにするために大切なことである(Figure 2)。