[PG85] からかい・からかわれ経験とからかいに対する態度がからかい場面の感情推測に及ぼす影響
小学校高学年を対象として
Keywords:からかい・からかわれ経験, からかいに対する態度, からかいの感情推測
問題と目的
学級内での「からかい」は小中学校において多く見られる行為である。からかいには,親密さの表現であったり,その場を和ませるといった人間関係の潤滑油的な側面をもつため,深刻に扱われることは少ない。しかし,からかわれる側はからかう側にくらべて攻撃意図を強く感じ,不快感情を抱いていることが明らかにされている(遠藤,2007)。ただし,からかいを見ている第三者がどのように捉えているかについては検討されていない。
本研究では,からかいが多く見られる小学生高学年を対象として,2つのからかい場面を提示する。そして,からかい・からかわれ経験の頻度やからかいに対する態度が,からかいの加害者,被害者,第三者の感情推測に及ぼす影響について検討する。
方 法
調査対象者と調査時期:A県下の公立小学校4~6年生1046名(男子513名,女子533名)。調査は2015年9月~10月に集団場面で実施した。
調査内容
1.からかい場面における,からかう側,から分かれる側,第三者の立場の感情推測
予備調査から「勉強場面」「運動場面」の2つのからかい場面を設定した。それぞれの場面での「からかう側の攻撃意図」,「からかわれる側の不快感情」,「第三者の立場の不快感情」を,予備調査で収集された項目(それぞれ3~4項目)を用いて「全くそう思わない」~「とてもそう思う」の4件法で回答を求めた。
2.からかい・からかわれ経験の頻度:「私は誰かをからかうことが多い」,「私は誰かにからかわれることが多い」の2項目で測定した。「全くそう思わない」~「とてもそう思う」の4件法で回答させた。
3.からかいに対する肯定的態度:遠藤(2007)の「人をからかうことはみんなを楽しませるものだ」,「人をからかうことは時には必要だ」の2項目を使用した。「全くそう思わない」~「とてもそう思う」の4件法で回答を求めた。
結果と考察
1.からかい経験,からかわれ経験,からかいに対する肯定的態度の男女差
からかい経験,からかわれ経験,からかいに対する公的低態度について,男女別に平均値を算出した(表1)。からかい経験,からかわれ経験はそれほど高くなかったが,相対的に,いずれの経験も男子の方が女子にくらべて有意に高いことが示された。また,からかいに対する肯定的態度も男子の方が女子よりも有意に高いことが示された。
2.からかい・からかわれ経験とからかいに対する態度がからかい場面の感情推測に及ぼす影響
からかい経験,からかわれ経験がからかいに対する態度を媒介として,からかいの認知に及ぼす影響を,男女の他母集団同時分析を用いて検討した(図1)。その結果,からかい経験が多い児童ほど,からかいに対して肯定的な態度を持ちやすく,また,からかいに対して肯定的な態度を持つ児童ほど第三者の不快感情を低く推測することが示された。ただし,からかいに対する態度は,からかう側の攻撃意図の推測やからかわれる側の不快感情の推測に有意な影響は及ぼしていなかった。このことは,からかいに対して肯定的な態度を持つ児童は,第三者の立場としては不快に感じるが,からかう側が攻撃意図を持っているか,からかわれる側が不快に感じているかどうかは,当事者の関係性のあり方によると判断しているためだと考えられた。
学級内での「からかい」は小中学校において多く見られる行為である。からかいには,親密さの表現であったり,その場を和ませるといった人間関係の潤滑油的な側面をもつため,深刻に扱われることは少ない。しかし,からかわれる側はからかう側にくらべて攻撃意図を強く感じ,不快感情を抱いていることが明らかにされている(遠藤,2007)。ただし,からかいを見ている第三者がどのように捉えているかについては検討されていない。
本研究では,からかいが多く見られる小学生高学年を対象として,2つのからかい場面を提示する。そして,からかい・からかわれ経験の頻度やからかいに対する態度が,からかいの加害者,被害者,第三者の感情推測に及ぼす影響について検討する。
方 法
調査対象者と調査時期:A県下の公立小学校4~6年生1046名(男子513名,女子533名)。調査は2015年9月~10月に集団場面で実施した。
調査内容
1.からかい場面における,からかう側,から分かれる側,第三者の立場の感情推測
予備調査から「勉強場面」「運動場面」の2つのからかい場面を設定した。それぞれの場面での「からかう側の攻撃意図」,「からかわれる側の不快感情」,「第三者の立場の不快感情」を,予備調査で収集された項目(それぞれ3~4項目)を用いて「全くそう思わない」~「とてもそう思う」の4件法で回答を求めた。
2.からかい・からかわれ経験の頻度:「私は誰かをからかうことが多い」,「私は誰かにからかわれることが多い」の2項目で測定した。「全くそう思わない」~「とてもそう思う」の4件法で回答させた。
3.からかいに対する肯定的態度:遠藤(2007)の「人をからかうことはみんなを楽しませるものだ」,「人をからかうことは時には必要だ」の2項目を使用した。「全くそう思わない」~「とてもそう思う」の4件法で回答を求めた。
結果と考察
1.からかい経験,からかわれ経験,からかいに対する肯定的態度の男女差
からかい経験,からかわれ経験,からかいに対する公的低態度について,男女別に平均値を算出した(表1)。からかい経験,からかわれ経験はそれほど高くなかったが,相対的に,いずれの経験も男子の方が女子にくらべて有意に高いことが示された。また,からかいに対する肯定的態度も男子の方が女子よりも有意に高いことが示された。
2.からかい・からかわれ経験とからかいに対する態度がからかい場面の感情推測に及ぼす影響
からかい経験,からかわれ経験がからかいに対する態度を媒介として,からかいの認知に及ぼす影響を,男女の他母集団同時分析を用いて検討した(図1)。その結果,からかい経験が多い児童ほど,からかいに対して肯定的な態度を持ちやすく,また,からかいに対して肯定的な態度を持つ児童ほど第三者の不快感情を低く推測することが示された。ただし,からかいに対する態度は,からかう側の攻撃意図の推測やからかわれる側の不快感情の推測に有意な影響は及ぼしていなかった。このことは,からかいに対して肯定的な態度を持つ児童は,第三者の立場としては不快に感じるが,からかう側が攻撃意図を持っているか,からかわれる側が不快に感じているかどうかは,当事者の関係性のあり方によると判断しているためだと考えられた。