The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PH01] 養育者の内的作業モデルが幸福感に与える影響

ソーシャル・サポートによる違いに着目して

加藤孝士 (四国大学)

Keywords:内的作業モデル, 幸福感, ソーシャル・サポート

問題と目的
 幼少期に形成される愛着は,成人後も内的作業モデル(以下:IWM)と呼ばれる認知的枠組みとして保持される(Bowlby,1978)。IWMは,様々な行動や情緒的側面に影響を与えることが示されており,ネガティブなIWMは不適応行動を導くことが示されている。また,高い幸福感は,IWMが日常行動に与える影響も緩衝される可能性も指摘されており(加藤,2009),幸福感を高めるためのサポートの在り方を検討していく必要がある。ただし,IWMは認知的枠組みであり,そのタイプにより幸せを感じるサポートは異なる。そこで,IWMとサポートの関係を含め,幸福感を高める要因を明らかにするため,本研究を行った。
方   法
対象者:保育所,幼稚園に在籍している養育者278名を対象に,質問紙調査を実施した。手続き:保育者に依頼し,質問紙の配布・回収した。質問項目は,事前に園長・所長に確認の上,論文化の承諾を得た。調査内容:「ECR(中尾・加藤,2004)の修正版(加藤,2007)」,「主観的幸福感尺度(伊藤ら,2003)」,「ソーシャル・サポート尺度(加藤,2008)」を使用した。
結   果
 IWMとサポートが幸福感に与える影響を検討するため,「幸福感」を目的変数とし,説明変数としてstep1にIWMの下位因子である「不安(自己観)」と「回避(他者観)」,「ソーシャル・サポート」の各因子の得点を,step2に「不安」と「回避」,「サポート」の交互作用項を,step3にすべての交互作用項を投入した階層的重回帰分析を行った。
その結果,「情緒的サポート(ΔR2=.19,p <.001)」,「情報的サポート(ΔR2=.20,p <.001)」,「評価的サポート(ΔR2=.28,p <.001)」を説明変数とした場合,step1に有意な影響が示された。また「評価的」の高さが幸福感を高めることも示された。step2,step3に有意な増分は確認されなかった。
 「道具的サポート」を説明変数とした場合,Step2に有意な増分が確認され(ΔR2=.04,p<.001),「不安」と「道具的」の交互作用項が有意であったため(β=‐.10,p <.01),単純傾斜検定を行った(Fig 1)。「不安」を調整変数とみなした場合,「不安(-1SD)」において,「道具的」から「幸福感」に正の影響が確認され(β=.13,p <.001),「不安(+1SD)」においては有意な影響は示されなかった。step3には有意な増分は確認されなかった。
 「コンパニオンシップ(以下;コンパ)」を説明変数とした場合,Step3に有意な増分が確認され(ΔR2=.02,p <.05),「不安」と「回避」,「コンパ」の交互作用項が有意だったため(β=‐.10,p <.05),単純傾斜検定を行った(Fig 2,3)。「回避」,「不安」を調整変数とみなした場合,「回避(+1SD)」「不安(-1SD)」において,「コンパ」から「幸福感」に負の影響が確認され(β=-.11,p <.05),「回避(+1SD)」「不安(+1SD)」において,「コンパ」から「幸福感」に正の影響が確認された(β=.09,p <.05)。その他は,有意な影響は示されなかった。
考   察
 先行研究同様,ポジティブなIWMは幸福感を高めることが示された。また,自己観がポジティブな養育者は,高い道具的サポートが幸福感を高めることが示された。自分への信頼が高い場合,他者からのサポートを素直に受け入れることができやすく,幸せを強く感じたと考えられる。そして,自己観がポジティブかつ他者観がネガティブな養育者(Dismissing)は,何気ない関わりが得られることで,幸福感が低くなることが示された。これらの養育者は他者に対してネガティブなイメージが強いため,何気ない関わりが苦痛になる可能性ある。さらに自己観・他者観ともにネガティブな養育者(Fearful)は,何気ない関わりが幸福感を高めていた。これは,自己・他者へのネガティブさから,何気ない関わりといった浅い関係がより心地よく,幸福感を高めたと考えられる。