The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PH02] ASD児の認知特性と日常場面の適応状態の関連

宇田美和子 (神戸大学大学院)

Keywords:自閉, 適応

問題と目的
 ASD(自閉症スペクトラム)は,社会的コミュニケーション及び対人的相互作用における障害,限定された反復的行動・興味・活動によって特徴づけられる発達障害である。ASDのある子どもは,認知の偏りなどにより日常生活場面で様々な不適応を示す。
 Wechsler Intelligence Scale for Children (WISC)は,Wechsler式個別知能検査の第4版の知能検査で,5歳から16歳11か月の子供を対象とし認知特性を明らかにする目的で実施する。
 Vineland-Ⅱは2015年に日本版が公刊された。0歳から92歳を対象とした,対象者をよく知る養育者等に半構造化面接を実施しながら評定する検査である。Vineland-Ⅱの「自閉症プロフィール」は,「運動スキル」「日常生活」領域の得点が高く,「社会性」領域の得点が最も低く「コミュニケーション」領域はその中間であるとされる。現時点で,国内におけるVineland-Ⅱに関する研究は少ない。
 本研究はASD児のWISC-ⅣとVineland-Ⅱの結果の関係性の分析をする。それによりASD児の認知特性と適応状態の関連について明らかし,結果をASDの子供の支援に活かすことが目的である。
方   法
(1) 研究協力者
 10歳から15歳までの医師からASDの診断を受けた,IQ≧70の子供7名(男児5名,女児2名)
(2) 研究方法
 研究協力者にWISC-Ⅳを実施し,研究協力者の保護者にVineland-Ⅱを実施する。
結   果
 WISC-Ⅳの結果とVineland-Ⅱの結果について相関分析を行った。相関分析の結果,WISC-ⅣのFSIQとVineland-Ⅱの標準得点,「コミュニケーション」領域は正の相関が示された(r=0.784,p<.05; r=0.957,p<.01)。WISC-ⅣのVCI(言語理解指標)とVineland-Ⅱの「コミュニケーション」領域には正の相関が示された(r=0.937,p<.01)。
 WISC-Ⅳの下位検査評価点とVineland-Ⅱの領域の下位項目の評価点についての相関分析において,WISC-Ⅳの下位検査「単語」評価点は,Vineland-Ⅱの「コミュニケーション」領域の下位項目「受容言語」「表出言語」「読み書き」の各評価点との正の相関が示された(r=0.819,p<.05;r=0.791,p<.05; r=0.791,p<.05)。WISC-Ⅳの下位検査「語音整列」評価点とVineland-Ⅱの「コミュニケーション」領域の下位項目「読み書き」評価点は正の相関があり(r=0.769,p<.05),WISC-Ⅳの下位検査「理解」評価点とVineland-Ⅱの「コミュニケーション」領域の下位項目「受容言語」評価点も正の相関が示された(r=0.809,p<.05)
考   察
 相関分析の結果から,ASD児においてはWISC-Ⅳにより評定される認知特性とそれに関連する,Vineland-Ⅱにより評定される適応状態が何か示された。日常場面の適応状態が,知能検査場面にも反映されると考えられる。