[PH23] BIS/BASおよびレジリエンスが就業動機に与える影響
Keywords:就業動機, レジリエンス, BIS/BAS
近年,学生から社会人のキャリア移行に困難を抱える者の増加や,不安定で流動的な雇用環境によるキャリア不適応の増加が指摘されている。こうした就業に伴う危機の克服に関わる要因と,それらが就業動機にどのような影響を与えるか検討することは,キャリア構築の問題を捉える際に重要だといえる。
近年注目されている心理特性であるレジリエンス(resilience)は,危機の克服に関連する特性であり,ストレスやトラウマとなる出来事に対処し適応的に生きる力とされる。レジリエンスの高さがキャリア適応(Bimrose & Hearne, 2012)やキャリアの満足度を高めることが指摘されている(Lounsbury.et al., 2003)。
また就業動機やレジリエンスに関連する要因として行動賦活系(Behavioral Activation System:BAS)と,行動抑制系(Behavioral Inhibition System:BIS)が挙げられる。Yang & Gysbers(2007)は,就職活動中の自己効力感の減少やストレスの増加はBISと正,BASと負の関係があることを示した。また,Genet & Siemer(2011)はレジリエンス特性がBASと正の関係があることを示している。
本研究ではBIS, BASと,レジリエンスが就業動機にどのように影響するかを明らかにし,また,学生と社会人とでこれらの要因の影響が異なるかを比較検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 大学生:工業系大学の学生201名を対象に調査を行い,回答に不備のない185名分のデータについて分析を行った(Mage = 19.7,SDage = 1.38 男性174名,女性11名)。社会人:クラウドソーシングシステム(Crowd Works: https://crowdworks.jp/dashboard)を通して参加者募集を行った。回答者は298名であり,回答に不備がなく,現在就労中の184名を分析対象とした(Mage = 37.2, SDage = 9.56 男性77名,女性107名)。
調査方法 質問の提示,および回答の収集は調査サイト利用し,Web上で行った(Survey Monkey: https://jp.surveymonkey.com/)。
調査項目
レジリエンス:平野(2010)による二次元レジリエンス要因尺度(21項目,5件法)を用いた。
BIS/BAS: 安田・佐藤(2002)のBIS/BAS 尺度(30 項目,4件法)を用いた。
就業動機:安達(1998)の就業動機尺度(38項目,5件法)を使用した。社会人を対象に実施する際は,現在の仕事に対する動機を反映できるよう項目の内容を改変した。
結果と考察
BIS/BAS, レジリエンスが就業動機に与える影響を検討するため,学生・社会人それぞれにおいて多母集団同時分析を行った(Figure 1, χ2(12) = 31.9, p < .001, GFI = .98, AGFI - .88, CFI = .97, RMSEA = .07)。社会人は大学生よりも,BISから資質的レジリエンスへの負の影響が有意に大きかった。
結果から,大学生・社会人ともにレジリエンスの高さが就業動機を高めること,BASはポジティブ要因,BISはネガティブな要因として直接・間接的に就業動機に影響を与えることが明らかとなった。資質的レジリエンスはすべての就業動機に正の影響を示した一方で,獲得的レジリエンスは対人志向にのみ影響が有意であった。よって,就業動機の高さは個人の資質による影響が大きいことが考えられる。ただし,資質的レジリエンスと獲得的レジリエンス間には有意な相関が見られるため,レジリエンスの獲得的な側面(問題解決,自己理解,他者心理の理解)を高めることで,資質的レジリエンスも高まり,就業動機にポジティブな影響を与えられると考えられる。
近年注目されている心理特性であるレジリエンス(resilience)は,危機の克服に関連する特性であり,ストレスやトラウマとなる出来事に対処し適応的に生きる力とされる。レジリエンスの高さがキャリア適応(Bimrose & Hearne, 2012)やキャリアの満足度を高めることが指摘されている(Lounsbury.et al., 2003)。
また就業動機やレジリエンスに関連する要因として行動賦活系(Behavioral Activation System:BAS)と,行動抑制系(Behavioral Inhibition System:BIS)が挙げられる。Yang & Gysbers(2007)は,就職活動中の自己効力感の減少やストレスの増加はBISと正,BASと負の関係があることを示した。また,Genet & Siemer(2011)はレジリエンス特性がBASと正の関係があることを示している。
本研究ではBIS, BASと,レジリエンスが就業動機にどのように影響するかを明らかにし,また,学生と社会人とでこれらの要因の影響が異なるかを比較検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 大学生:工業系大学の学生201名を対象に調査を行い,回答に不備のない185名分のデータについて分析を行った(Mage = 19.7,SDage = 1.38 男性174名,女性11名)。社会人:クラウドソーシングシステム(Crowd Works: https://crowdworks.jp/dashboard)を通して参加者募集を行った。回答者は298名であり,回答に不備がなく,現在就労中の184名を分析対象とした(Mage = 37.2, SDage = 9.56 男性77名,女性107名)。
調査方法 質問の提示,および回答の収集は調査サイト利用し,Web上で行った(Survey Monkey: https://jp.surveymonkey.com/)。
調査項目
レジリエンス:平野(2010)による二次元レジリエンス要因尺度(21項目,5件法)を用いた。
BIS/BAS: 安田・佐藤(2002)のBIS/BAS 尺度(30 項目,4件法)を用いた。
就業動機:安達(1998)の就業動機尺度(38項目,5件法)を使用した。社会人を対象に実施する際は,現在の仕事に対する動機を反映できるよう項目の内容を改変した。
結果と考察
BIS/BAS, レジリエンスが就業動機に与える影響を検討するため,学生・社会人それぞれにおいて多母集団同時分析を行った(Figure 1, χ2(12) = 31.9, p < .001, GFI = .98, AGFI - .88, CFI = .97, RMSEA = .07)。社会人は大学生よりも,BISから資質的レジリエンスへの負の影響が有意に大きかった。
結果から,大学生・社会人ともにレジリエンスの高さが就業動機を高めること,BASはポジティブ要因,BISはネガティブな要因として直接・間接的に就業動機に影響を与えることが明らかとなった。資質的レジリエンスはすべての就業動機に正の影響を示した一方で,獲得的レジリエンスは対人志向にのみ影響が有意であった。よって,就業動機の高さは個人の資質による影響が大きいことが考えられる。ただし,資質的レジリエンスと獲得的レジリエンス間には有意な相関が見られるため,レジリエンスの獲得的な側面(問題解決,自己理解,他者心理の理解)を高めることで,資質的レジリエンスも高まり,就業動機にポジティブな影響を与えられると考えられる。