The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PH48] 高校生のインターネット依存傾向に社会的スキル およびスキルの遂行不安が与える影響

清水理奈1, 新川広樹2, 富家直明3 (1.北海道医療大学, 2.北海道医療大学, 3.北海道医療大学)

Keywords:インターネット依存, 社会的スキル, 高校生

目   的
 インターネットの依存的で過剰な利用は,孤独や抑うつ感を高めるなどの健康被害をもたらし(Kraut, 1998),日常生活の対人関係においても,自己表現スキルの欠如による直接的な対人関係の構築を回避する傾向を高めやすいことから,特に若年層において社会的スキルの欠如とインターネット依存傾向の関連が指摘される(橋本,2000;Caplan, 2005;鄭,2007)。また,社会的スキルの欠如と並び,対人関係上の不安の高さが電子メールをはじめとするインターネットを介したコミュニケーションへの依存を促進する可能性も示唆されている(仁尾・石田・内海,2009)。
 本研究では,インターネット依存傾向に及ぼす社会的スキルの影響について,スキルの獲得状況と遂行不安の交互作用効果に焦点を当てた分析を行うことにより,その影響を明らかにすることを目的とした。
方   法
調査対象者 北海道内の高等学校に在籍する1年生378名(男子280名,女子98名)を対象に集団形式で質問紙調査を実施した。
調査項目
1)インターネットに関する調査票(北海道教育委員会(2015)を一部改変)
2)社会的スキル尺度高校生版(新川・富家,2015)
3)社会的スキル遂行不安尺度(大石他,1996)
4)インターネット依存尺度(戸部他,2010)
結   果
 調査対象となった高校生の91.8%がインターネット利用時間を必要だと感じており,そのうち30.4%が1から2時間,15.9%が2から4時間,7.9%が4時間以上を必要としていた。LINEやカカオトークに代表されるコミュニケーションアプリでの交流については76.2%がその必要性を感じており,19.3%が交流ツールとして利用しているが,必要性は感じていなかった(未使用の4.5%を除く)。インターネットを利用していない時には,48.9%が「スポーツや部活」に時間を使っていた。携帯電話やスマートフォンでの通話やメールに4時間以上の時間を費やしている割合は,学校がある日で11.4%,ない日では23.8%であった。寝る直前には「通話やメール」をする割合が37.6%で最も多かった。

 インターネット依存傾向への影響を明らかにするために重回帰分析を行った結果,社会的スキル尺度の下位尺度「自己統制」「関係維持」と,社会的スキル遂行不安尺度の下位尺度「情緒統制不安」「自己表出不安」の回帰係数が有意であった(Table 1)。しかしながら,社会的スキルと社会的スキル遂行不安の交互作用はみられなかった。
考   察
 インターネット依存傾向に対して,社会的スキルおよび社会的スキル遂行不安はそれぞれ独自に影響を与えることが示唆された。社会的スキルの低さはインターネット依存傾向につながり(戸部・竹内・堀田,2010),対人関係において不安を感じている人ほどインターネットコミュニケーションへの依存が強い(仁尾他,2009)。本研究の結果はこれらの先行研究を支持する結果となったが,両者の交互作用がインターネット依存傾向の説明率を高めるという本研究の仮説は支持されなかった。下位尺度別の重回帰分析では社会的スキルの「関係維持」「自己統制」,社会的スキル遂行不安の「情緒統制不安」の回帰係数が有意であったことから,インターネット依存傾向に対して,相手と良好な関係を築くスキルや冷静な判断に基づいて行動するスキルが防御因子として,相手に合わせたコミュニケーションへの遂行不安がリスク因子となることが示唆された。今後,インターネットの分類を限定し,SNSやゲーム等,精緻な検討を行う必要がある。