日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

2016年10月10日(月) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PH60] 道徳的特徴の抽出と分類

道徳的理想自己測定尺度作成に向けて

中山伸一1, 櫻井茂男2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

キーワード:道徳, 理想自己, モラル・アイデンティティ

問題と目的
 人命救助,ボランティア,寄付などの道徳的行為や,汚職,不倫,薬物使用などの不道徳的行為が人々の注目を集めるのは,昨今に始まったことではない。このような道徳に関する行為に対して,「正義感の強い人になりたい」とか「優しい人になりたい」といった気持ちは影響を与えないのだろうか。
 「正義感の強い人になりたい」とか「優しい人になりたい」といった,個人が理想とする道徳的な自己概念のことを“道徳的理想自己(moral ideal self)”という(Hardy, Walker, Olsen, Woodbury, & Hickman, 2014)。道徳的理想自己は,道徳的特性を中心として形成される自己概念である“モラル・アイデンティティ(Aquino & Reed, 2002)”の一側面であるとされている。Self-Discrepancy理論(Higgins, 1987,1989)では,現在の自己概念(以下,現実自己)と理想の自己概念(以下,理想自己)との不一致が負の感情を生じさせる一方で,現実自己と理想自己が近づくことが快感情を生じさせるため,人は現実自己と理想自己が一致する方向に判断や行動をするとされている。つまり,道徳的理想自己と道徳的現実自己の不一致が,人を道徳的行為に動機づけると考えられる。
 本邦において,道徳的理想自己を測定する尺度は存在せず,道徳的理想自己の先行研究(Hardy, Walker, Olsen, Skalski, & Basinger, 2011)において抽出された道徳的特徴は調査協力者が欧米人中心であるため,異なった文化的背景をもつ調査協力者には適さない可能性がある。
 本研究の目的は,道徳的理想自己測定尺度を作成する前段階として,日本文化における道徳的特徴を抽出し,分類することである。
方   法
調査時期:2016年4月。
調査協力者:大学生51名(18.24±0.59歳)。
調査内容:“道徳性の高い人の特徴(性格,資質,能力)”について,自由記述方式で回答を求めた。
結   果
 合計352個の道徳的特徴を,心理学を専攻する大学院生3名でKJ法を援用し分類した。
 抽出された道徳的特徴の平均個数は6.86個(SD=2.90;range=1~12)であった。道徳的特徴は,まず34の小カテゴリーに分類され,さらに9つの中カテゴリーに分類された。最後に,主に行動として見られる特徴である“行動的側面”と,主に性格として見られる“性格的側面”の二つの大カテゴリーに分類された(Table 1)