The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(65-88)

ポスター発表 PH(65-88)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PH76] 児童の記述から学級の様相を読み解く

品田ゆき子1, 高橋知己2 (1.上越教育大学大学院, 2.上越教育大学)

Keywords:自由記述, 学級の様相, 学級アセスメント

問題と目的
 教師の大切な仕事のひとつに学級経営があるが,多様な子どもたちが集まる学級で経営に不安を感じる担任は少なくない。自分の学級の状態を担任が知りたいときにすぐに知ることができれば,改善や評価につながると考える。そこで,学級をどのような視点からとらえればよいか探ることにした。教師が望ましいと考える学級の様相から25問の質問紙を作成し,55名(大学院生27名,現役小学校教員28名)に調査を行った。回答を因子分析して(主因子法,プロマックス回転)5つの因子を抽出した。第1因子から順に「協働性α=.87」「信頼性α=.82」「自己表現α=.72」「活動意欲α=.65」 「一体感α=.66」と命名した。本稿では,これらの視点をもとに児童の記述から学級の様相をとらえることを目的とする。
方   法
 調査対象:A県公立B小学校4年生1クラス(男子15名,女子18名)と5年生1クラス(男子18名,女子17名)
 調査時期:2016年3月上旬
 調査手続き:「一体感」「信頼感」「自己表現」「活動意欲」「協働性」を問う文章完成法テスト(SCT)を援用した自由記述の質問を5問作成し,担任を通して児童に回答を求めた。なお,刺激文は短く設定し,記述の自由度が広がるようにした。また,担任にも同意の質問を児童とは別で行い,その後検証のためインタビューをした。
結果と考察
 松井(2009)の研究を参考に児童の記述内容を,A(肯定的表現),B(否定的表現),C(両価的表現:肯定も否定もどちらも含んでいる,またはその他)に分類し(Table1),Aを5点,Bを1点,Cを3点としてそれぞれの学級の出現率を計算した(Figure1,2,3)。
 すべての質問において4年生が5年生を回答の文字数で上回った。4年生の方が自分の素直な思いを長く書いている児童が多かった。Aの出現率に関しては,さほど大きな差は見られず,どちらも「自己表現」において苦手と感じていたり自信が持てなかったりする様子がうかがえた。4年生は「一体感」や「信頼感」に対し,否定的な回答は無かったが,両価的な回答が目立ち,自他に目を向け冷静に学級の様子をとらえていた。5年生は「活動意欲」で無回答が5名,「静かにする」と同意の回答が6名おり,担任も「よく怒っている」と答えていた。さらに,否定的な回答が多い児童と担任が「気になる」と感じている児童は一致していた。各学級の現状を写し出す結果となった。
 学級の様相だけでなく,学級の中の「個」に対するアセスメントとしても通常の活動として手軽に取り入れられるツールになりえるのではないだろうか。