日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PH(65-88)

ポスター発表 PH(65-88)

2016年10月10日(月) 13:00 〜 15:00 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PH82] 児童の葛藤場面の認知と対友人行動との関連

四之宮真弓1, 関山徹2 (1.鹿児島大学, 2.鹿児島大学)

キーワード:友人関係, 児童

問題と目的
 近年,児童が好ましい人間関係を築けないといった問題が指摘されている(文部科学省,2007)。本研究では,特に友達との葛藤場面に焦点を絞り,葛藤場面に対する認知のしかたと友人に対する行動との間にどのような関連があるのかを明らかにすることを目的とする。
方   法
 被調査者 公立3小学校在籍の5年生197名(男子96名,女子101名),6年生198名(男子102名,女子96名)。
 調査内容 葛藤場面における認知・対友人行動尺度;四之宮(2016)の葛藤場面における対友人行動尺度を改良したものを使用。32項目(4件法)。認知面の尺度は,認知的評価測定尺度(三浦,2000)から,『コントロール可能性』,『影響性』において因子負荷量の高かった1項目ずつを使用。葛藤場面としては,心理的ストレス尺度(長根,1991)の『友達との関係』から,内緒話の場面,気にしていることを言われた場面を設定。相手は,「休み時間に一緒にいることの多い友達(仲良し)」,「グループの友達(級友)」と設定した。
結果と考察
1.葛藤場面と影響性及びコントロール可能性との関連
 葛藤場面を独立変数,影響性及びコントロール可能性を従属変数として一元配置分散分析を行ったところ,影響性,コントロール可能性共に有意差が認められた(影響性;F(3,1580)= 5.36,p<.05,コントロール可能性;F(3,1579)=4.00,p<0.05)。多重比較の結果,影響性は,級友から気になることを言われる場面が他の場面より大きく,コントロール可能性は,仲良しの友達の方が級友よりも高まる傾向が認められた。つまり,児童間の関係性が深いほど,葛藤場面の受けとめ方が楽観的になりやすいと考えられる。
2.影響性とコントロール可能性の組み合わせ4群と葛藤場面における対友人行動の関連
 影響性とコントロール可能性の組み合わせにより設定した4群を独立変数,対友人行動を従属変数として一元配置分散分析を行った。気にしていることを言われる場面での非表出を除いては有意差が認められたため,多重比較を行った(Table 1)。全体的な傾向としては,『単身積極』は,その場面におけるコントロール可能性が高いときに用いられやすいと考えられる。一方で,『友達仲介』は,その場面に対して影響性の認知が高い時に用いられやすいと考えられる。すなわち,一人で対処できないほどに困った状況と受け止めたのだともいえる。影響性の認知は級友から気になることを言われる場面で高まるという『1』の結果を踏まえると,その際,仲介を依頼するのは仲良しの友達である可能性が高いことから,児童間の関係性を深める取組が重要であると考えられる。