日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

2017年10月7日(土) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PA23] 同一化的調整と内的調整の相違面

レジリエンスとソーシャルサポートに注目して

速水敏彦1, 久保勝利#2 (1.中部大学, 2.加古川北高等学校)

キーワード:同一化的調整, レジリエンス, ソーシャルサポート

問   題
 自己決定理論では外的調整から内的調整までが他律―自律, 自己決定性の程度で直線的に並んでいるとされるが, 別の側面については必ずしもそうではないだろう。本研究ではレジリエンスとソーシャルサポートに注目し, 同一化的調整のもつ動機づけとしての内容的豊かさを内的調整と比較することで明らかにしたい。自律性,内面化の中間段階にある同一化的調整では外からの影響力と内部の力が交差する段階ともいえる。従って,同一化的調整は外部からの影響力を受け入れるためのレジリエンスも,それをスムーズにするために他者に求めるソーシャルサポートも内的調整よりも高いと予想される。
方   法
調査対象 高校1年生109名,2年生104名,計 213名および中学1年生124名,2年生126名,3年生136名,計386名(久保が修論作成時に収集したもの)。
調査内容 1自己決定理論に基づく学習動機づけ尺度(安藤,2005),外的調整,取入れ的調整,同一化的調整,内的調整の下位尺度からなる。2レジリエンス尺度(平野,2010)を用い,久保(2015)による因子分析に基づき行動力,社交性,楽観性,問題解決志向の4つの下位尺度から成る。3ソーシャルサポート尺度(久田ら,1989)により作成された学生用ソーシャルサポート尺度を用いた。久保(2015)では因子分析の結果,理解的・協力的サポートと受容的・共感的サポートの2因子が抽出されたがその合計点を用いた。
結果と考察
 まず,各動機づけの高さを比較したものが下のFigure1である。中学生の場合も高校生の場合も,取入れ的調整と同一化的調整が相対的に高く,外的調整と内的調整が相対的に低いといえる。
 次にそれぞれの学習動機づけとレジリエンスおよびソーシャルサポートとの相関をみたものがTable1である。まず,レジリエンス(総点)との関係についてみると,中・高生とも同一化的調整との関係が最も高く,次に内的調整との関係であるが,両者の差は小さい。取入れ的調整とも正の相関がみられるが,外的調整とはむしろ負の関係がみられる。ジリエンスの下位尺度での傾向は一致しない。中学生の場合,同一化的調整とは行動力と問題解決志向で.3以上の相対的に高い相関がみられるが,高校生では問題解決志向および社交性との間に高い相関がみられる。楽観性とは中・高生とも相関はほとんどない。次に内的調整との関係については中・高生とも行動力と相対的に相関が高い。また,高校生では問題解決志向との相関が高い。中学生では社交性や楽観性とも正の関係がみられる。同一化調整も内的調整も共通しているのは,特にやり抜く力(grit)を意味するような行動力と嫌な出来事に遭遇した時の適切な対応を意味する問題解決志向との関係が強い点である。
 ソーシャルサポートとの関係に関しては同一化調整との関係が中・高生とも最も高い。そして,次に高いのは内的調整でなく,むしろ取入れ的調整とであった。自律しようとする過程において人は他者からのソーシャルサポートを強く求めるものと考えられる。そして自律が一応完成した段階である内的調整では外部からのソーシャルサポートをほとんど求めないものと思われる。