10:00 〜 12:00
[PA48] 大学生の運動系部活動における動機づけに心理的欲求が及ぼす影響
キーワード:自己決定理論, 大学生, 内発的動機付け
問 題
自己決定理論(Deci & Ryan, 1970)では,動機づけを内発的なものに促進するものとして,自律性への欲求,有能さへの欲求,関係性への欲求という3つの心理的欲求の充足が関連していると考えられている。本研究は,自己決定理論に基づき,大学生の運動部活動における動機づけに,以上の3つの心理的欲求の充足がどのように関連しているのかを明らかにすることを目的とする。また,動機づけと心理的欲求の充足との関係が,学年によって異なるのかどうかを検討することも目的とする。
方 法
調査対象者
運動部に所属している島根大学生1~4年生74名を対象とした(1年生29名,2年生21名,3年生16名,4年生8名; 男性58名,女性16名)。
質問項目
質問項目は,部活動への動機づけ(12項目),自律性への欲求の充足(8項目),有能さへの欲求の充足(10項目),関係性への欲求の充足(11項目)から構成され,6件法で回答を求めた。
結 果
部活動への動機づけ
動機づけに関する質問項目を因子分析した結果,内発的・同一化動機づけ因子,外的調整動機付け因子,取り入れ動機付け因子の3因子が抽出された。
心理的欲求の充足
自律性への欲求の充足,有能さへの欲求の充足,関係性への欲求の充足について,それぞれ因子分析を行った。その結果,自律性については,1因子構造であった。有能さについては,身体的有能感と統制的有能感の2因子が抽出された。関係性については,被信頼感と安心感の2因子が抽出された。
動機づけと心理的欲求の充足との関係
動機づけの各因子に対応する尺度得点を目的変数,3つの心理的欲求の充足の各因子に対応する尺度得点を説明変数として重回帰分析を行った結果,内発的・同一化動機づけ得点へは,統制的有能感得点と身体的有能感得点から有意な正の標準偏回帰係数が見られた。外的調整動機づけ得点へは,自律性得点から有意な負の標準偏回帰係数が見られた。
学年による違い
1年生29人,3・4年生24人それぞれについて,動機づけ各得点を目的変数,心理的欲求の充足各得点を説明変数として重回帰分析を行った。その結果,内発的・同一化得点へは,1年生では信頼感と統制的有能感から有意な正の標準偏回帰係数が見られ,3・4年生では統制的有能感と身体的有能感から有意な正の標準偏回帰係数が見られた。また,外的調整得点へは,1年生も3・4年生も,自律性から有意な負の標準偏回帰係数が見られた。
考 察
自己決定理論では,自律性を最も重視しているが,本研究の結果では,内発的な動機付けを最も説明していたのは,統制的有能感であった。これには,文化的な要因,すなわち,日本人の「努力」を重視する傾向が働いている可能性がある。ただし,自律性への欲求の充足も,それが満たされないことが動機づけを外的調整的なものにしているという点で働いている。
学年による違いでは,内発的・同一化動機づけに対して,統制的有能感がいずれの学年でも正の関連性を示していたが,1年生では関係性についての1つの因子である信頼感への欲求の充足が正の関連性を示していたのに対して,3・4年生では身体的有能感が正の関連性を示すというように,他者との関係性から部活動を行う上での身体的能力へと動機づけと関連する欲求が変化している。
自己決定理論(Deci & Ryan, 1970)では,動機づけを内発的なものに促進するものとして,自律性への欲求,有能さへの欲求,関係性への欲求という3つの心理的欲求の充足が関連していると考えられている。本研究は,自己決定理論に基づき,大学生の運動部活動における動機づけに,以上の3つの心理的欲求の充足がどのように関連しているのかを明らかにすることを目的とする。また,動機づけと心理的欲求の充足との関係が,学年によって異なるのかどうかを検討することも目的とする。
方 法
調査対象者
運動部に所属している島根大学生1~4年生74名を対象とした(1年生29名,2年生21名,3年生16名,4年生8名; 男性58名,女性16名)。
質問項目
質問項目は,部活動への動機づけ(12項目),自律性への欲求の充足(8項目),有能さへの欲求の充足(10項目),関係性への欲求の充足(11項目)から構成され,6件法で回答を求めた。
結 果
部活動への動機づけ
動機づけに関する質問項目を因子分析した結果,内発的・同一化動機づけ因子,外的調整動機付け因子,取り入れ動機付け因子の3因子が抽出された。
心理的欲求の充足
自律性への欲求の充足,有能さへの欲求の充足,関係性への欲求の充足について,それぞれ因子分析を行った。その結果,自律性については,1因子構造であった。有能さについては,身体的有能感と統制的有能感の2因子が抽出された。関係性については,被信頼感と安心感の2因子が抽出された。
動機づけと心理的欲求の充足との関係
動機づけの各因子に対応する尺度得点を目的変数,3つの心理的欲求の充足の各因子に対応する尺度得点を説明変数として重回帰分析を行った結果,内発的・同一化動機づけ得点へは,統制的有能感得点と身体的有能感得点から有意な正の標準偏回帰係数が見られた。外的調整動機づけ得点へは,自律性得点から有意な負の標準偏回帰係数が見られた。
学年による違い
1年生29人,3・4年生24人それぞれについて,動機づけ各得点を目的変数,心理的欲求の充足各得点を説明変数として重回帰分析を行った。その結果,内発的・同一化得点へは,1年生では信頼感と統制的有能感から有意な正の標準偏回帰係数が見られ,3・4年生では統制的有能感と身体的有能感から有意な正の標準偏回帰係数が見られた。また,外的調整得点へは,1年生も3・4年生も,自律性から有意な負の標準偏回帰係数が見られた。
考 察
自己決定理論では,自律性を最も重視しているが,本研究の結果では,内発的な動機付けを最も説明していたのは,統制的有能感であった。これには,文化的な要因,すなわち,日本人の「努力」を重視する傾向が働いている可能性がある。ただし,自律性への欲求の充足も,それが満たされないことが動機づけを外的調整的なものにしているという点で働いている。
学年による違いでは,内発的・同一化動機づけに対して,統制的有能感がいずれの学年でも正の関連性を示していたが,1年生では関係性についての1つの因子である信頼感への欲求の充足が正の関連性を示していたのに対して,3・4年生では身体的有能感が正の関連性を示すというように,他者との関係性から部活動を行う上での身体的能力へと動機づけと関連する欲求が変化している。