10:00 〜 12:00
[PA70] 教師のダブルスタンダード化した指導が小学生に受容される要因に関する研究(2)
キーワード:小学校, 教師のダブルスタンダード化した指導, 受容
目 的
下村・小林(2013)は,教師と問題行動を起こす子ども(対象児童)とクラスにいるその他子ども(周辺児童)との関係性に着目し,ダブルスタンダード化した指導が受容される要因を検討している。その結果,学校生活で周辺児童の立場に立つ子どもは,教師の指導場面によって対象児童や教師に対する受け入れが異なることが示された。しかしながら,周辺児童が対象児童の立場に立つ場合の検討は行われていない。そこで本研究では,周辺児童が他者の立場(対象児童)に立つ時,ダブルスタンダ―ド化した指導に対する受容に差異がみられるか検討することを目的とする。
方 法
対象:A・B県の公立小学校5校(8学級)の6年生児童218名(男子106名,女子112名)。調査内容:古市・玉木(1994)の学校生活享受感測定尺度10項目,加藤・大久保(2004)のダブルスタンダード化した指導のうち2場面(本研究では場面ア:『クラスの子どもたちは教室で授業を受けている時に,Aさんは遅刻して学校にやってきて,保健室で休んでいました。それに対して,先生はAさんだけを「えらいぞ,ちゃんと学校に来たんだな」とほめました。』,場面イ:『そうじ当番で,教室のそうじをしている場面を思いうかべて下さい。いつもはそうじ当番をさぼって来ないBさんが,その日はそうじにやってきました。すると先生は,「よくがんばって来たな,えらいぞ」とBさんだけをほめました。』)に対するダブルスタンダード化した指導の受容に関する4項目(対象児童及び周辺児童の立場に立った対象児童と教師への受容),大久保・青柳(2004)の友人との関係尺度7項目(一部改変),大久保・青柳(2004)の教師との関係尺度7項目(一部改変)を用い,4段階での回答を求めた。さらに場面ア・イでの回答者自身の立場(対象児童・周辺児童)の選択を求めた。手続き:本調査は自由意思によること等の倫理的配慮を行い,HRに配布・回収した。実施期間:2013年1月~3月。
結 果
回答者自身の立場を整理し,両場面ともに周辺児童を選択した203人を分析対象とした。
1.ダブルスタンダード化した指導場面におけるそれぞれの受容得点の平均(M)と標準偏差(S.D.) (Table 1)
2.対象児童の立場に立つ時の対象児童及び教師に対する捉え方の場面比較 受容得点について場面(ア・イ)×受容対象者(対象児童・教師)の二要因分散分析の結果,場面の主効果(F(1,202)=24.08,p<.001),受容対象者の主効果(F(1,202)=8.8,p<.01),場面×受容対象者の交互作用(F(1,202)=9.8,p<.01)が有意であった。場面アでは教師に対する受容得点が対象児童に対する受容得点よりも有意に高かったが,場面イでは有意な差は見られなかった。
3.周辺児童及び対象児童の立場に立つ時の対象児童に対する捉え方の場面比較 対象児童に対する受容得点について場面(2)×立場(2)の二要因分散分析の結果,受容対象者の主効果(F(1,202)=90.63,p<.001),場面×受容対象者の交互作用(F(1,202)=133.04,p<.001)が有意であった。場面アでは有意な差は見られなかったが,場面イでは対象児童の立場に立った場合が周辺児童の立場に立った場合よりも有意に高かった。
4.周辺児童及び対象児童の立場に立つ時の教師に対する捉え方の場面比較 教師に対する受容得点について場面(2)×立場(2)の二要因分散分析の結果,場面の主効果(F(1,202)=4.39,p<.05),受容対象者の主効果(F(1,202)=131.92,p<.001),場面×受容対象者の交互作用(F(1,202)=43.88,p<.001)が有意であった。場面アでは対象児童の立場に立った場合が,周辺児童の立場に立った場合よりも有意に高く,場面イでも同様の結果であった。
考 察
下村・小林(2013)の結果と同様に,ダブルスタンダード化した指導は場面によって捉え方が異なることが示された。しかし,本研究の結果は下村・小林(2013)とは全く逆の結果であった。これは,下村・小林(2013)では周辺児童が周辺児童の立場に立ったものであり,本研究では周辺児童が対象児童の立場に立ったものであることが原因として考えられる。同一人物が解答しているにもかかわらず,他者の立場に立つことによってダブルスタンダ―ド化した指導に対する捉え方が異なることが示唆された。
下村・小林(2013)は,教師と問題行動を起こす子ども(対象児童)とクラスにいるその他子ども(周辺児童)との関係性に着目し,ダブルスタンダード化した指導が受容される要因を検討している。その結果,学校生活で周辺児童の立場に立つ子どもは,教師の指導場面によって対象児童や教師に対する受け入れが異なることが示された。しかしながら,周辺児童が対象児童の立場に立つ場合の検討は行われていない。そこで本研究では,周辺児童が他者の立場(対象児童)に立つ時,ダブルスタンダ―ド化した指導に対する受容に差異がみられるか検討することを目的とする。
方 法
対象:A・B県の公立小学校5校(8学級)の6年生児童218名(男子106名,女子112名)。調査内容:古市・玉木(1994)の学校生活享受感測定尺度10項目,加藤・大久保(2004)のダブルスタンダード化した指導のうち2場面(本研究では場面ア:『クラスの子どもたちは教室で授業を受けている時に,Aさんは遅刻して学校にやってきて,保健室で休んでいました。それに対して,先生はAさんだけを「えらいぞ,ちゃんと学校に来たんだな」とほめました。』,場面イ:『そうじ当番で,教室のそうじをしている場面を思いうかべて下さい。いつもはそうじ当番をさぼって来ないBさんが,その日はそうじにやってきました。すると先生は,「よくがんばって来たな,えらいぞ」とBさんだけをほめました。』)に対するダブルスタンダード化した指導の受容に関する4項目(対象児童及び周辺児童の立場に立った対象児童と教師への受容),大久保・青柳(2004)の友人との関係尺度7項目(一部改変),大久保・青柳(2004)の教師との関係尺度7項目(一部改変)を用い,4段階での回答を求めた。さらに場面ア・イでの回答者自身の立場(対象児童・周辺児童)の選択を求めた。手続き:本調査は自由意思によること等の倫理的配慮を行い,HRに配布・回収した。実施期間:2013年1月~3月。
結 果
回答者自身の立場を整理し,両場面ともに周辺児童を選択した203人を分析対象とした。
1.ダブルスタンダード化した指導場面におけるそれぞれの受容得点の平均(M)と標準偏差(S.D.) (Table 1)
2.対象児童の立場に立つ時の対象児童及び教師に対する捉え方の場面比較 受容得点について場面(ア・イ)×受容対象者(対象児童・教師)の二要因分散分析の結果,場面の主効果(F(1,202)=24.08,p<.001),受容対象者の主効果(F(1,202)=8.8,p<.01),場面×受容対象者の交互作用(F(1,202)=9.8,p<.01)が有意であった。場面アでは教師に対する受容得点が対象児童に対する受容得点よりも有意に高かったが,場面イでは有意な差は見られなかった。
3.周辺児童及び対象児童の立場に立つ時の対象児童に対する捉え方の場面比較 対象児童に対する受容得点について場面(2)×立場(2)の二要因分散分析の結果,受容対象者の主効果(F(1,202)=90.63,p<.001),場面×受容対象者の交互作用(F(1,202)=133.04,p<.001)が有意であった。場面アでは有意な差は見られなかったが,場面イでは対象児童の立場に立った場合が周辺児童の立場に立った場合よりも有意に高かった。
4.周辺児童及び対象児童の立場に立つ時の教師に対する捉え方の場面比較 教師に対する受容得点について場面(2)×立場(2)の二要因分散分析の結果,場面の主効果(F(1,202)=4.39,p<.05),受容対象者の主効果(F(1,202)=131.92,p<.001),場面×受容対象者の交互作用(F(1,202)=43.88,p<.001)が有意であった。場面アでは対象児童の立場に立った場合が,周辺児童の立場に立った場合よりも有意に高く,場面イでも同様の結果であった。
考 察
下村・小林(2013)の結果と同様に,ダブルスタンダード化した指導は場面によって捉え方が異なることが示された。しかし,本研究の結果は下村・小林(2013)とは全く逆の結果であった。これは,下村・小林(2013)では周辺児童が周辺児童の立場に立ったものであり,本研究では周辺児童が対象児童の立場に立ったものであることが原因として考えられる。同一人物が解答しているにもかかわらず,他者の立場に立つことによってダブルスタンダ―ド化した指導に対する捉え方が異なることが示唆された。