13:00 〜 15:00
[PB26] 参勤交代に関する児童の認識の様相について
小学6年社会科の授業実践を通して
キーワード:児童の認識, 社会科, 参勤交代
問題と目的
既に,社会科領域の学習場面においても,学習者が授業前に有する不十分な認識に着目した研究が続けられてきている(例えば,麻柄・進藤,2008;前田,2014;吉國・前田,2016)。吉國・前田(2016,前研究と呼ぶ)では,江戸時代の参勤交代の学習を取り上げ,複数の大名行列図を使用した授業を行い,児童の認識を調べた。その結果,大名行列の特徴についての認識と,参勤交代のしくみの理解との関係性の解明が,課題として挙げられた。
本研究の目的は,1.大名行列の特徴と参勤交代のしくみに関する児童の認識の実態を明らかにすること,2.大名行列と江戸城周辺を表した絵図を組み合わせて使用する授業を行い,参勤交代のしくみの理解に及ぼす影響を検討することである。
方 法
実践は事前調査→研究授業→事後調査の順に行われた。両調査に参加した20名が結果の分析対象者である。実践時期は2017年2月であった。
事前調査は,大名行列課題,参勤交代課題,地元の行列予想課題の3つであった。大名行列課題は,有田(2006)の大名行列塗り絵を見ながら,時代や大名行列の特徴,参勤交代制度との関わりについての6つの問いに対して,前研究と同様,正誤判断を求めた。参勤交代課題は,新たに追加された課題であった。東京書籍DVD-ROM「新編 新しい社会6上 教師用指導書 研究編」から,江戸時代の大名配置図を示し,大名が行った参勤交代に関する6つの問いに対して,正誤判断を求めた。地元の行列予想課題は,前研究と同一であった。
研究授業は,前研究と同様,1)担任の協力を得ながら研究者が主導し2授業時数行われ,2)既習の江戸時代の参勤交代について,学びを発展させる位置づけで実施された。授業の目標として,「江戸時代の大名は,参勤交代で江戸にいる将軍にあいさつし,江戸で将軍のために仕事をしたこと」などの理解に加え,「参勤交代で領地を離れ,ほぼ1年の間,江戸にすんでいたこと」の理解が目指された。授業では,7つの発問と併せて, 教具として1. 津山郷土博物館所蔵の巨大巻物「津山藩松平家の大名行列図」,2.和歌山県立博物館所蔵の「徳川斉順帰国行列図」の複製,3. 津山郷土博物館所蔵の「江戸一目図屏風」を模造紙印刷したものを使用した。最後に事後調査では,大名行列課題と参勤交代課題,授業の感想を尋ねた。
結果と考察
事前調査の大名行列課題にて,行列が江戸時代の様子であることは9割の者が理解できていた。他方,行列の特徴として,多数の棒は武器であることの理解は1名(5%)に留まっていた。次に,行列内に大名は1人であることをふまえた正答は9名(45%)と正答率が十分とはいえなかった。さらに,参勤交代課題でも,大名達が一緒に行列したかについての正答が13名(65%),大名は挨拶後すぐ領地へ帰ったかは7名(35%),大名はほぼ1年江戸にいたことへの認識が3名(15%)だった結果と併せると,手がかりとなる絵や図が提示されたとしても,藩の家臣を従えた藩主(大名行列のリーダー)が,将軍にあいさつし江戸で仕事をしたこと(軍役として参勤交代を行ったこと)と関連づけて解釈することは,児童にとって必ずしも容易ではない実態が示された。
授業では,大名行列図と江戸一目図屏風を組み合わせて使用する工夫を行い,江戸で大名が仕事(例:「どこかの防衛」,「防御」,「城」)と遊び(例:「凧揚げ」「子ども(と一緒に)」の両方をしていただろうと推論した発言が,児童から出された。
事後調査の結果は表1と表2にまとめられた。大名が挨拶後すぐ領地へ帰ったかや,ほぼ1年江戸にいたことへの理解は全員ができており,本授業の工夫が,「軍役としての参勤交代」という認識の形成に一定の影響を及しうることが示唆された。
既に,社会科領域の学習場面においても,学習者が授業前に有する不十分な認識に着目した研究が続けられてきている(例えば,麻柄・進藤,2008;前田,2014;吉國・前田,2016)。吉國・前田(2016,前研究と呼ぶ)では,江戸時代の参勤交代の学習を取り上げ,複数の大名行列図を使用した授業を行い,児童の認識を調べた。その結果,大名行列の特徴についての認識と,参勤交代のしくみの理解との関係性の解明が,課題として挙げられた。
本研究の目的は,1.大名行列の特徴と参勤交代のしくみに関する児童の認識の実態を明らかにすること,2.大名行列と江戸城周辺を表した絵図を組み合わせて使用する授業を行い,参勤交代のしくみの理解に及ぼす影響を検討することである。
方 法
実践は事前調査→研究授業→事後調査の順に行われた。両調査に参加した20名が結果の分析対象者である。実践時期は2017年2月であった。
事前調査は,大名行列課題,参勤交代課題,地元の行列予想課題の3つであった。大名行列課題は,有田(2006)の大名行列塗り絵を見ながら,時代や大名行列の特徴,参勤交代制度との関わりについての6つの問いに対して,前研究と同様,正誤判断を求めた。参勤交代課題は,新たに追加された課題であった。東京書籍DVD-ROM「新編 新しい社会6上 教師用指導書 研究編」から,江戸時代の大名配置図を示し,大名が行った参勤交代に関する6つの問いに対して,正誤判断を求めた。地元の行列予想課題は,前研究と同一であった。
研究授業は,前研究と同様,1)担任の協力を得ながら研究者が主導し2授業時数行われ,2)既習の江戸時代の参勤交代について,学びを発展させる位置づけで実施された。授業の目標として,「江戸時代の大名は,参勤交代で江戸にいる将軍にあいさつし,江戸で将軍のために仕事をしたこと」などの理解に加え,「参勤交代で領地を離れ,ほぼ1年の間,江戸にすんでいたこと」の理解が目指された。授業では,7つの発問と併せて, 教具として1. 津山郷土博物館所蔵の巨大巻物「津山藩松平家の大名行列図」,2.和歌山県立博物館所蔵の「徳川斉順帰国行列図」の複製,3. 津山郷土博物館所蔵の「江戸一目図屏風」を模造紙印刷したものを使用した。最後に事後調査では,大名行列課題と参勤交代課題,授業の感想を尋ねた。
結果と考察
事前調査の大名行列課題にて,行列が江戸時代の様子であることは9割の者が理解できていた。他方,行列の特徴として,多数の棒は武器であることの理解は1名(5%)に留まっていた。次に,行列内に大名は1人であることをふまえた正答は9名(45%)と正答率が十分とはいえなかった。さらに,参勤交代課題でも,大名達が一緒に行列したかについての正答が13名(65%),大名は挨拶後すぐ領地へ帰ったかは7名(35%),大名はほぼ1年江戸にいたことへの認識が3名(15%)だった結果と併せると,手がかりとなる絵や図が提示されたとしても,藩の家臣を従えた藩主(大名行列のリーダー)が,将軍にあいさつし江戸で仕事をしたこと(軍役として参勤交代を行ったこと)と関連づけて解釈することは,児童にとって必ずしも容易ではない実態が示された。
授業では,大名行列図と江戸一目図屏風を組み合わせて使用する工夫を行い,江戸で大名が仕事(例:「どこかの防衛」,「防御」,「城」)と遊び(例:「凧揚げ」「子ども(と一緒に)」の両方をしていただろうと推論した発言が,児童から出された。
事後調査の結果は表1と表2にまとめられた。大名が挨拶後すぐ領地へ帰ったかや,ほぼ1年江戸にいたことへの理解は全員ができており,本授業の工夫が,「軍役としての参勤交代」という認識の形成に一定の影響を及しうることが示唆された。