13:00 〜 15:00
[PB68] 過去に出会った教師に対する大学生の見方
キーワード:対教師認知, 教師用RCRT, 大学生
目 的
本研究は,大学生が過去に出会った教師に対してどのような見方をしているか,教師用RCRTやエゴグラムなどの結果を手掛かりにして探ることを目的としている。
方 法
大学生5名に,小学校から高等学校までに出会った教師をエレメントとして教師用RCRTを実施した。同時にエゴグラム,自尊感情テスト,社会的スキル尺度(Kiss-18)を行い,後日教師用RCRTの結果をフィードバックするために約1時間の面接を行った。
結果と考察
教師用RCRTの実施後因子分析(主因子法,バリマックス回転)を行った。因子数は固有値1とスクリープロットを目安に複数の結果を提示し,各学生が納得できる因子数と因子名を決定した。
Aは1因子のみで「柔軟に対応できる⇔できない」,Bは2因子で「筋が通っている⇔理不尽」「熱心⇔適当」,Cは2因子で「熱い⇔冷たい」「誠実⇔不誠実」,Dは3因子で「メリハリがある⇔ない」「相談しやすい⇔しにくい」「笑顔がある⇔ない」,Eは2因子で「誰に対しても優しい⇔冷徹」「切り替えができる⇔まっすぐ」とそれぞれ命名した。
各学生のエゴグラムなどの結果はTable1 に示した。
第1因子と第2因子の因子得点をプロットした認知図を学生に提示しながら面接を行った。教師を見る視点として複数の因子が抽出された4名は,教師の好悪に関してはその中の一つの因子のみ決定に大きく関わっていた。
Figure1はBの認知図である。Bは自尊感情尺度得点がかなり低い。Bによれば高校時代は成績もよく自信もあったが,公務員試験に落ちたことや大学入学が1年遅れたことなどの経験がBの自尊感情に影響を与えたと思われる。在学中は嫌だと思っていたが卒業後に評価が変わった教師が少なくなかったことは,自尊感情の変化も影響していると考えられる。また,小学生の頃は優しい先生が好きだったが,自分にとってためになる先生を評価するようになり,優しいだけでは好きにならなくなったと振り返っていた。
Cは,高校までの教師の記憶はあまりないが,教師に対する見方は厳しい。教師のちょっとした苦労話や自慢話でも許せず,友人に対しても同様である。他の学生と比較しNPが比較的低いことが関係しているのではないだろうか。Cは,学校への不適応から通信高校に在籍していたため,交友関係がやや狭かったと推測される。他者に対する見方が厳しく,他者に対する寛容さが低いのはそのことも影響していると思われる。
Dのみ3因子が抽出された。Dは「理想の自分」と「現実の自分」の距離が他の学生よりも短い。自尊感情が比較的高いことや,CPやACが低いことから「自分はこうあらねば」というこだわりが少ないことが要因と考えられる。Dも優しいだけの教師よりも場合によっては厳しく指導する教師への評価が高かった。
Bのような様々な挫折を経験することによって自尊感情が低下した思われる学生は,教師に対する見方が大きく変化していた。逆に,CのようにNPが比較的低い学生は,教師への好悪がはっきり分かれており,多様な教師の個性を受け入れることが困難であったと思われる。DのようなエゴグラムがM型を示し比較的自尊感情が高い学生は,多様な視点で教師を見ているようであった。また,Aはすぐ感情的になる父親との葛藤を,Dは自分の思いを受け止めてくれない父親との葛藤を,それぞれ面接の中で吐露しており,それらが男性教師に対する見方に大きく影響したと思われる。
本研究は,大学生が過去に出会った教師に対してどのような見方をしているか,教師用RCRTやエゴグラムなどの結果を手掛かりにして探ることを目的としている。
方 法
大学生5名に,小学校から高等学校までに出会った教師をエレメントとして教師用RCRTを実施した。同時にエゴグラム,自尊感情テスト,社会的スキル尺度(Kiss-18)を行い,後日教師用RCRTの結果をフィードバックするために約1時間の面接を行った。
結果と考察
教師用RCRTの実施後因子分析(主因子法,バリマックス回転)を行った。因子数は固有値1とスクリープロットを目安に複数の結果を提示し,各学生が納得できる因子数と因子名を決定した。
Aは1因子のみで「柔軟に対応できる⇔できない」,Bは2因子で「筋が通っている⇔理不尽」「熱心⇔適当」,Cは2因子で「熱い⇔冷たい」「誠実⇔不誠実」,Dは3因子で「メリハリがある⇔ない」「相談しやすい⇔しにくい」「笑顔がある⇔ない」,Eは2因子で「誰に対しても優しい⇔冷徹」「切り替えができる⇔まっすぐ」とそれぞれ命名した。
各学生のエゴグラムなどの結果はTable1 に示した。
第1因子と第2因子の因子得点をプロットした認知図を学生に提示しながら面接を行った。教師を見る視点として複数の因子が抽出された4名は,教師の好悪に関してはその中の一つの因子のみ決定に大きく関わっていた。
Figure1はBの認知図である。Bは自尊感情尺度得点がかなり低い。Bによれば高校時代は成績もよく自信もあったが,公務員試験に落ちたことや大学入学が1年遅れたことなどの経験がBの自尊感情に影響を与えたと思われる。在学中は嫌だと思っていたが卒業後に評価が変わった教師が少なくなかったことは,自尊感情の変化も影響していると考えられる。また,小学生の頃は優しい先生が好きだったが,自分にとってためになる先生を評価するようになり,優しいだけでは好きにならなくなったと振り返っていた。
Cは,高校までの教師の記憶はあまりないが,教師に対する見方は厳しい。教師のちょっとした苦労話や自慢話でも許せず,友人に対しても同様である。他の学生と比較しNPが比較的低いことが関係しているのではないだろうか。Cは,学校への不適応から通信高校に在籍していたため,交友関係がやや狭かったと推測される。他者に対する見方が厳しく,他者に対する寛容さが低いのはそのことも影響していると思われる。
Dのみ3因子が抽出された。Dは「理想の自分」と「現実の自分」の距離が他の学生よりも短い。自尊感情が比較的高いことや,CPやACが低いことから「自分はこうあらねば」というこだわりが少ないことが要因と考えられる。Dも優しいだけの教師よりも場合によっては厳しく指導する教師への評価が高かった。
Bのような様々な挫折を経験することによって自尊感情が低下した思われる学生は,教師に対する見方が大きく変化していた。逆に,CのようにNPが比較的低い学生は,教師への好悪がはっきり分かれており,多様な教師の個性を受け入れることが困難であったと思われる。DのようなエゴグラムがM型を示し比較的自尊感情が高い学生は,多様な視点で教師を見ているようであった。また,Aはすぐ感情的になる父親との葛藤を,Dは自分の思いを受け止めてくれない父親との葛藤を,それぞれ面接の中で吐露しており,それらが男性教師に対する見方に大きく影響したと思われる。