日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

2017年10月7日(土) 15:30 〜 17:30 白鳥ホールB (4号館1階)

15:30 〜 17:30

[PC06] 児童期の情動発達とその特異性に関する研究1

「気になる」児童の情動発達の特徴

本郷一夫1, 飯島典子2, 平川久美子3, 高橋千枝4, 相澤雅文5 (1.東北大学, 2.聖和学園短期大学, 3.石巻専修大学, 4.鳥取大学, 5.京都教育大学)

キーワード:情動発達, 児童, 「気になる」子

問題と目的
 本研究は,幼児期から児童期における情動発達のアセスメント・スケールを開発することを目的とした研究の一部である。本報告では,小学生の情動発達とその特異性に関する調査の結果に基づき,「気になる」児童の情動発達の特徴を明らかにすることを目的とした。
方   法
1.調査対象: 小学校の担任に,「気になる」児童(各クラス3名以内)と「気になる」児童と年齢・性が一致するその他の児童(典型発達児)について評定を求めた。本報告では,回収された59校577学級2401名のデータのうち,欠損値がなく,「気になる」児童と年齢・性が一致する典型発達児とのペアデータが揃っている2142名(男児1696名,女児446名)のデータを分析した。
2.調査時期: 2016年12月~2017年3月。
3.調査内容: (1) 情動発達:「喜んでいることを表情で表現する」「怒っている気持ちを抑える」「友だちの悲しい気持ちがわかる」などの情動に関する7領域(<表情による表現>,<言葉による表現>,<抑制>,<誇り・恥>,<理解>,<共感>,<過敏さ>)20項目について,「全くない」(1)~「よくある」(5)の5段階で評定しもらった。
(2) 行動特性:「自分が行った行動を認めようとせず,言い訳をする」(<対人的トラブル>),「他のことが気になって,教師の話を最後まで聞けない」(<落ち着きのなさ>)などの「気になる」行動22項目について,「全くない」(1)~「よくある」(5)の5段階で評定しもらった。
結果と考察
1.情動発達得点: 情動の領域ごとに,子どものタイプ(「気になる」児童・典型発達児)×学年(1~6年生)の2元配置の分散分析を行った。その結果,すべての領域において,「気になる」児童と典型発達児の間に統計的有意差が認められた。
とりわけ<共感><理解>の領域における得点差が大きく,典型発達児の方が「気になる」児童よりも得点が高かった。一方,<過敏さ>については,「気になる」児童の得点が高かった。
2.性差: <抑制><誇り・恥><理解><共感>の4領域において,性差が認められ,女児の得点が男児よりも高かった。また,<表情による表現>と<言葉による表現>において,子どものタイプ×性の交互作用が有意であった。この2つの領域では,「気になる」児童に関しては男児の得点が女児よりも高く,典型発達児では女児の得点が男児よりも高かった。
*なお,本研究は科学研究費補助金(基盤研究B)「幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用」(研究代表:本郷一夫)の助成を受けて行われた。