15:30 〜 17:30
[PC38] 保育職を目指す大学生における実習の意味づけと学習意欲について
質問紙調査からの検討
キーワード:実習, 学習意欲, 意味づけ
問題意識
近年,大学での学びにおけるActive Learning(ACL)の重要性が指摘されている。保育職を目指す学生が学ぶ学科における最も重要な学びの場の1つは「実習」である。実習を通して学生たちは多くのリアルと直面し,多くの気づきを得るであろう。そして,その過程で職業として保育職を選択するか否かを考えていくはずである。保育職はいうまでもなく高い専門性が必要とされる職業である一方,その専門性に対する社会的な認識は高いとはいえない。また,その背景となる要因は様々であるが保育士・幼稚園教諭不足が言われて久しい。実習が学生たちの「学びの意欲」や「保育・幼児教育のイメージ」についてどのような変化をもたらしているのか,学生たちが実習をどのような経験として意味づけているのかという側面から検討した。
方 法
調査協力者:東海地区にある4年生大学の保育・幼児教育を専攻する1年生60名,3年生50名の計110名
調査期間:2016年6月,12月
手続き:質問紙調査(複数回に分けて実施)
【1】1・3年生共通の質問項目:園見学/実習に行って(1)あなたの大学での学びに対する意欲の変化,(2)保育や幼児教育に関する授業への興味・関心の変化,(3)(4)あなたが思う「なりたい・素敵だと思う/なりたくない先生(幼稚園教諭・保育士)」について,【2】1年生のみ実施した質問項目:(5)園見学に行く前と行った後のあなたの保育や幼児教育の現場に対するイメージの変化,(6)(5)で回答した内容についてそのように変化した(しなかった)理由,【3】3年生のみ実施した質問項目:幼稚園/保育所実習に行く前と行った後の,(7)(8)幼稚園/保育所のイメージ・評価の変化,(9)(10)幼稚園/保育所実習に行く前に持っていた幼稚園/保育所のイメージと行った後のイメージについて,(11)(12)幼稚園/保育所実習に行く前の幼稚園教諭/保育士へのイメージと行った後のイメージについて,(13)(14)幼稚園/保育所を一言で表すとどのような場所だと思うか。((1)(2)(5)(7)(8)は5件法,それ以外は自由記述で回答)。
結 果
全体的な結果から,実習に行く前より行った後の方が幼稚園/保育所へのイメージがポジティブな方向に変化した学生は「大学での学び,保育・幼児教育」への意欲や関心が,イメージがネガティブな方向に変化した学生よりも高かった。しかし,幼稚園教諭・保育士へのイメージについては必ずしもそうとは言い切れない部分があった。それ以外の項目がポジティブな方向に変化していても「先生」に対する項目についてはネガティブに変化している学生が少なからずいた。また,自由記述から「子どもに受け入れてもらえたこと」「子どもの年齢による遊びや活動の違い(発達の面白さ)」などを挙げている学生はポジティブな認知・評価へと変化していた。一方,「一人で多くの子どもを指導することへの不安」「一日のスケジュールが過密で子どもが楽しそうに見えなかった(自由時間が少ない)」といった記述をしている学生はネガティブな方向に変化している傾向がみられた。また,1年生は保育者や子どもの行動についての主観的な記述(自分がどう思ったか)が多かったのに比べ3年生になると保育者の意図や子どもの気持ちなどに踏み込んだ記述・考察へと変化している傾向がみられた。
考 察
実習という経験の中で何を学び,何に気づいていくかは学生個々人で違いがある。本人が持っている視点や関心,知識やスキルの程度がそもそも違うからである。今回の結果から実習や園見学という「現場」とかかわる経験が学びの明確化をもたらしていた。しかし,今回の調査では学生たちにとっての実習経験の表面的な側面しか捉えられていない。また,学年の違いによる学びや意識の深化についても多くの検討の余地を残している。今後は,学生たちの中にある「何が」学びや意欲の向上に関連しているのか,どのような要素や視点を持っていることが学びにポジティブな影響を及ぼすのかといった内的な要素を検討していく必要がある。そのような部分まで検討をすすめることにより大学として何を学びとして提供し,どこをどのように指導していくかということを深く考える材料になるはずである。
近年,大学での学びにおけるActive Learning(ACL)の重要性が指摘されている。保育職を目指す学生が学ぶ学科における最も重要な学びの場の1つは「実習」である。実習を通して学生たちは多くのリアルと直面し,多くの気づきを得るであろう。そして,その過程で職業として保育職を選択するか否かを考えていくはずである。保育職はいうまでもなく高い専門性が必要とされる職業である一方,その専門性に対する社会的な認識は高いとはいえない。また,その背景となる要因は様々であるが保育士・幼稚園教諭不足が言われて久しい。実習が学生たちの「学びの意欲」や「保育・幼児教育のイメージ」についてどのような変化をもたらしているのか,学生たちが実習をどのような経験として意味づけているのかという側面から検討した。
方 法
調査協力者:東海地区にある4年生大学の保育・幼児教育を専攻する1年生60名,3年生50名の計110名
調査期間:2016年6月,12月
手続き:質問紙調査(複数回に分けて実施)
【1】1・3年生共通の質問項目:園見学/実習に行って(1)あなたの大学での学びに対する意欲の変化,(2)保育や幼児教育に関する授業への興味・関心の変化,(3)(4)あなたが思う「なりたい・素敵だと思う/なりたくない先生(幼稚園教諭・保育士)」について,【2】1年生のみ実施した質問項目:(5)園見学に行く前と行った後のあなたの保育や幼児教育の現場に対するイメージの変化,(6)(5)で回答した内容についてそのように変化した(しなかった)理由,【3】3年生のみ実施した質問項目:幼稚園/保育所実習に行く前と行った後の,(7)(8)幼稚園/保育所のイメージ・評価の変化,(9)(10)幼稚園/保育所実習に行く前に持っていた幼稚園/保育所のイメージと行った後のイメージについて,(11)(12)幼稚園/保育所実習に行く前の幼稚園教諭/保育士へのイメージと行った後のイメージについて,(13)(14)幼稚園/保育所を一言で表すとどのような場所だと思うか。((1)(2)(5)(7)(8)は5件法,それ以外は自由記述で回答)。
結 果
全体的な結果から,実習に行く前より行った後の方が幼稚園/保育所へのイメージがポジティブな方向に変化した学生は「大学での学び,保育・幼児教育」への意欲や関心が,イメージがネガティブな方向に変化した学生よりも高かった。しかし,幼稚園教諭・保育士へのイメージについては必ずしもそうとは言い切れない部分があった。それ以外の項目がポジティブな方向に変化していても「先生」に対する項目についてはネガティブに変化している学生が少なからずいた。また,自由記述から「子どもに受け入れてもらえたこと」「子どもの年齢による遊びや活動の違い(発達の面白さ)」などを挙げている学生はポジティブな認知・評価へと変化していた。一方,「一人で多くの子どもを指導することへの不安」「一日のスケジュールが過密で子どもが楽しそうに見えなかった(自由時間が少ない)」といった記述をしている学生はネガティブな方向に変化している傾向がみられた。また,1年生は保育者や子どもの行動についての主観的な記述(自分がどう思ったか)が多かったのに比べ3年生になると保育者の意図や子どもの気持ちなどに踏み込んだ記述・考察へと変化している傾向がみられた。
考 察
実習という経験の中で何を学び,何に気づいていくかは学生個々人で違いがある。本人が持っている視点や関心,知識やスキルの程度がそもそも違うからである。今回の結果から実習や園見学という「現場」とかかわる経験が学びの明確化をもたらしていた。しかし,今回の調査では学生たちにとっての実習経験の表面的な側面しか捉えられていない。また,学年の違いによる学びや意識の深化についても多くの検討の余地を残している。今後は,学生たちの中にある「何が」学びや意欲の向上に関連しているのか,どのような要素や視点を持っていることが学びにポジティブな影響を及ぼすのかといった内的な要素を検討していく必要がある。そのような部分まで検討をすすめることにより大学として何を学びとして提供し,どこをどのように指導していくかということを深く考える材料になるはずである。