15:30 〜 17:30
[PC46] 規範逸脱行動に関する規範意識および行動基準における母子間の関連
キーワード:規範逸脱行動, 規範意識, 行動基準
問題と目的
教室や公園等,公の場での規範逸脱行動に関する規範意識や行動基準(e.g., Deguchi, 2014)について,母子間の関連に着目して検討した。
方 法
調査対象者および手続き
小学生5年生・中学生2年生・高校生2年生,およびその母親,計596名(298組)。調査会社に委託して質問紙調査を実施した。
測定した変数
1.規範意識 私語,遊び(授業や打ち合わせ中に紙に落書きをしたり,自分の好きな本を読んだりする),ゴミのポイ捨て,大声,という4つの逸脱行動について,「5.良いと思う」から「1.まずいと思う」で回答を求めた(以下,「母親の規範意識」「子どもの規範意識」と記す)。
さらに,自分の母親(子ども)が,これらの行動をどのように考えていると思うのかについて,「5.良いと考えている」から「1.まずいと考えている」で回答を求めた(「母親の規範意識(推測)」「子どもの規範意識(推測)」)。
2.逸脱頻度 上の4つの行動について,「5.たくさんした」から「1.ぜんぜんしなかった」で回答を求めた。
3.逸脱行動に対する態度 同様の4つの行動について,「自分もまわりの人も遵守」(M11),「自分は遵守,まわりの人は逸脱」(M12),「自分は逸脱,まわりの人は遵守」(M21),「自分もまわりの人も逸脱」(M22)という架空の4場面をそれぞれ提示した。そして,「7.とても満足」から「1.ぜんぜん満足ではない」で回答を求めた。
結果と考察
指標の算出
規範意識,逸脱頻度,逸脱行動に対する態度共に,4つの逸脱行動への回答を合計し,項目数で除したものを指標とした。
行動基準については,「逸脱行動に対する態度」への回答を基に,「遵守」(M11 > M21 and M12 > M 22),「逸脱」(M11 < M21 and M12 < M 22),「同調」(M11 > M21 and M12 < M 22),「反対」(M11 < M21 and M12 > M 22),「中立」(M11 = M21 and M12 = M 22)の5つに分類した。なお,「M11 = M21 and M12 > M 22など,一方のみに「=」が含まれる場合は,もう一方の不等号を基に,「遵守」か「逸脱」に分類した(Deguchi(2013)を基にした)。
母子間の関連
1.規範意識 校種ごとに母子間の相関係数を算出した(以下も同様)。高校生のみに,母子間に正の相関が示された(Table 1)。また,子どもの規範意識については,中学生と高校生において,実際の規範意識と母親に推測された規範意識の間に,正の相関が見られた。一方,母親の規範意識については,高校生のみに正の相関が示された。
すなわち,小学生においては,子どもも母親も,互いの規範意識を精確に推測できているとは言いがたく,母親は子どもが中学生になってから,子どもは自らが高校生になってから,他者の規範意識を比較的精確に推測しうることが示唆された。
2.逸脱頻度 全ての校種において正の相関が示された。つまり,逸脱頻度については小学生という早い時期から母子間で関連しているが,前述の規範意識については中学生以降になってから関連しはじめる可能性が示唆された。なお,子どもの規範意識と母親の逸脱頻度の間には,高校生のみに.28の相関が示された(p < .05)。母子の変数を逆にした場合,有意な相関は見られなかった。
3.逸脱行動に対する態度および行動基準 小学生はM21のみ,中学生はM12, M21, M22,高校生はM11とM22に正の相関が示された。小学生の時点では母子間にはさほど関連は示されなかったが,中学生になると比較的多くの関連が示された。その後,高校生になると,M11とM22のみ,つまり,「自分」も「まわりの人」も同様の行動をしている場面に対する態度のみに関連が見られた。
なお,「子どもの行動基準」を独立変数,「母親の逸脱頻度」を従属変数とした分散分析を行った。その結果,高校生においては,有意傾向ではあるが主効果(逸脱>同調)が示された。母子の変数を逆にした場合,有意な主効果は見られなかった。
謝 辞
本研究はJSPS科研費(JP26380885)の援助を受けた。
教室や公園等,公の場での規範逸脱行動に関する規範意識や行動基準(e.g., Deguchi, 2014)について,母子間の関連に着目して検討した。
方 法
調査対象者および手続き
小学生5年生・中学生2年生・高校生2年生,およびその母親,計596名(298組)。調査会社に委託して質問紙調査を実施した。
測定した変数
1.規範意識 私語,遊び(授業や打ち合わせ中に紙に落書きをしたり,自分の好きな本を読んだりする),ゴミのポイ捨て,大声,という4つの逸脱行動について,「5.良いと思う」から「1.まずいと思う」で回答を求めた(以下,「母親の規範意識」「子どもの規範意識」と記す)。
さらに,自分の母親(子ども)が,これらの行動をどのように考えていると思うのかについて,「5.良いと考えている」から「1.まずいと考えている」で回答を求めた(「母親の規範意識(推測)」「子どもの規範意識(推測)」)。
2.逸脱頻度 上の4つの行動について,「5.たくさんした」から「1.ぜんぜんしなかった」で回答を求めた。
3.逸脱行動に対する態度 同様の4つの行動について,「自分もまわりの人も遵守」(M11),「自分は遵守,まわりの人は逸脱」(M12),「自分は逸脱,まわりの人は遵守」(M21),「自分もまわりの人も逸脱」(M22)という架空の4場面をそれぞれ提示した。そして,「7.とても満足」から「1.ぜんぜん満足ではない」で回答を求めた。
結果と考察
指標の算出
規範意識,逸脱頻度,逸脱行動に対する態度共に,4つの逸脱行動への回答を合計し,項目数で除したものを指標とした。
行動基準については,「逸脱行動に対する態度」への回答を基に,「遵守」(M11 > M21 and M12 > M 22),「逸脱」(M11 < M21 and M12 < M 22),「同調」(M11 > M21 and M12 < M 22),「反対」(M11 < M21 and M12 > M 22),「中立」(M11 = M21 and M12 = M 22)の5つに分類した。なお,「M11 = M21 and M12 > M 22など,一方のみに「=」が含まれる場合は,もう一方の不等号を基に,「遵守」か「逸脱」に分類した(Deguchi(2013)を基にした)。
母子間の関連
1.規範意識 校種ごとに母子間の相関係数を算出した(以下も同様)。高校生のみに,母子間に正の相関が示された(Table 1)。また,子どもの規範意識については,中学生と高校生において,実際の規範意識と母親に推測された規範意識の間に,正の相関が見られた。一方,母親の規範意識については,高校生のみに正の相関が示された。
すなわち,小学生においては,子どもも母親も,互いの規範意識を精確に推測できているとは言いがたく,母親は子どもが中学生になってから,子どもは自らが高校生になってから,他者の規範意識を比較的精確に推測しうることが示唆された。
2.逸脱頻度 全ての校種において正の相関が示された。つまり,逸脱頻度については小学生という早い時期から母子間で関連しているが,前述の規範意識については中学生以降になってから関連しはじめる可能性が示唆された。なお,子どもの規範意識と母親の逸脱頻度の間には,高校生のみに.28の相関が示された(p < .05)。母子の変数を逆にした場合,有意な相関は見られなかった。
3.逸脱行動に対する態度および行動基準 小学生はM21のみ,中学生はM12, M21, M22,高校生はM11とM22に正の相関が示された。小学生の時点では母子間にはさほど関連は示されなかったが,中学生になると比較的多くの関連が示された。その後,高校生になると,M11とM22のみ,つまり,「自分」も「まわりの人」も同様の行動をしている場面に対する態度のみに関連が見られた。
なお,「子どもの行動基準」を独立変数,「母親の逸脱頻度」を従属変数とした分散分析を行った。その結果,高校生においては,有意傾向ではあるが主効果(逸脱>同調)が示された。母子の変数を逆にした場合,有意な主効果は見られなかった。
謝 辞
本研究はJSPS科研費(JP26380885)の援助を受けた。