15:30 〜 17:30
[PC58] 児童生徒理解のための多次元尺度の開発(2)
教師の視点を加えた妥当性の検討
キーワード:児童生徒理解, 多次元尺度, 教師視点
問題と目的
不登校やいじめなど学校での子どもの問題を早期発見・対応するのは教師の役目である。そこで重要となるのが教師のアセスメント力である。小学校高学年から中学・高校といった時期の児童・生徒は,自分の悩みや問題を隠そうとする。また,彼らの悩みや問題は,学校・家庭・本人の特性・友人関係などが複雑に絡み合い,簡単に説明できるほど単純ではない。教師の経験や観察力に頼った情報収集ばかりでなく,アンケートや個人面談による多角的にアセスメントが必要となる。
本研究の発表(1)では,担任教師によるアセスメントの補助手段となる児童生徒理解のための多次元尺度の項目収集をおこなった。これをもとに発表(2)では, 担任教師が「気になる生徒」として抽出した児童・生徒のプロフィールを児童生徒理解のための多次元尺度結果をもとに作成し,担任教師の視点から本尺度の妥当性を検討する。
方 法
調査時期:2016年10月~12月
調査対象:X県,小学生5・6年生1140人,中学生1847人 高校生5190人。
調査方法:X県教育委員会をとおして各校で実施。その際,「回答は任意」「個人情報は守られる」「中断も可能」等の説明がなされた。
調査内容:児童生徒理解のための多次元尺度を用い,全65項目に対して4件法で回答を求めた。担任教師には「クラスの中で気になる生徒についてのチェックリスト」10項目(「不登校傾向」「友人関係の問題」「いじめられ経験あり」「学業成績心配」「反抗・暴力行為・校則違反」「自信のなさ・極度の内気」「発達障害の傾向」「身体の病気や弱さ」「親子関係の歪みや悩み」「家庭と学校の関係が良くない」)該当する生徒の抽出を求めた(複数回答可)。
結果と考察
児童生徒理解のための多次元尺度を用いた調査結果から担任教師が「気になる生徒」として抽出した児童生徒のプロフィールを作成した。<不登校傾向>の児童生徒のプロフィール(Figure.1)は,自己肯定感3得点と「生きる意欲」「友人関係」「レジリエンス」「コミュニケーション」が低く,「不登校」「抑うつ感」が高かった。<友人関係が苦手・孤立>の児童生徒は「自己評価・受容」と「友人関係」「レジリエンス」「コミュニケーション」得点が低く,不適応3得点「不登校」「いじめ」「抑うつ感」の全て高かった。担任が「気になる生徒」として抽出した児童・生徒は,自己肯定感の低さ,学校や家庭における不適応など,それぞれのチェックリスト項目の内容と合致するような特徴が得られた。
このような結果は,本研究で作成した児童生徒理解のための多次元尺度を用いたアセスメントが
担任教師の評価と重なるものであることを示し,
本尺度の65項目13因子の妥当性を裏付けものと考えられる。
付 記
本研究は奈良県教育振興課・教育委員会と奈良女子大学との共同研究の一部である。
不登校やいじめなど学校での子どもの問題を早期発見・対応するのは教師の役目である。そこで重要となるのが教師のアセスメント力である。小学校高学年から中学・高校といった時期の児童・生徒は,自分の悩みや問題を隠そうとする。また,彼らの悩みや問題は,学校・家庭・本人の特性・友人関係などが複雑に絡み合い,簡単に説明できるほど単純ではない。教師の経験や観察力に頼った情報収集ばかりでなく,アンケートや個人面談による多角的にアセスメントが必要となる。
本研究の発表(1)では,担任教師によるアセスメントの補助手段となる児童生徒理解のための多次元尺度の項目収集をおこなった。これをもとに発表(2)では, 担任教師が「気になる生徒」として抽出した児童・生徒のプロフィールを児童生徒理解のための多次元尺度結果をもとに作成し,担任教師の視点から本尺度の妥当性を検討する。
方 法
調査時期:2016年10月~12月
調査対象:X県,小学生5・6年生1140人,中学生1847人 高校生5190人。
調査方法:X県教育委員会をとおして各校で実施。その際,「回答は任意」「個人情報は守られる」「中断も可能」等の説明がなされた。
調査内容:児童生徒理解のための多次元尺度を用い,全65項目に対して4件法で回答を求めた。担任教師には「クラスの中で気になる生徒についてのチェックリスト」10項目(「不登校傾向」「友人関係の問題」「いじめられ経験あり」「学業成績心配」「反抗・暴力行為・校則違反」「自信のなさ・極度の内気」「発達障害の傾向」「身体の病気や弱さ」「親子関係の歪みや悩み」「家庭と学校の関係が良くない」)該当する生徒の抽出を求めた(複数回答可)。
結果と考察
児童生徒理解のための多次元尺度を用いた調査結果から担任教師が「気になる生徒」として抽出した児童生徒のプロフィールを作成した。<不登校傾向>の児童生徒のプロフィール(Figure.1)は,自己肯定感3得点と「生きる意欲」「友人関係」「レジリエンス」「コミュニケーション」が低く,「不登校」「抑うつ感」が高かった。<友人関係が苦手・孤立>の児童生徒は「自己評価・受容」と「友人関係」「レジリエンス」「コミュニケーション」得点が低く,不適応3得点「不登校」「いじめ」「抑うつ感」の全て高かった。担任が「気になる生徒」として抽出した児童・生徒は,自己肯定感の低さ,学校や家庭における不適応など,それぞれのチェックリスト項目の内容と合致するような特徴が得られた。
このような結果は,本研究で作成した児童生徒理解のための多次元尺度を用いたアセスメントが
担任教師の評価と重なるものであることを示し,
本尺度の65項目13因子の妥当性を裏付けものと考えられる。
付 記
本研究は奈良県教育振興課・教育委員会と奈良女子大学との共同研究の一部である。