ポスター発表 PC(01-83)

[PC60] いじめの深刻化要因の検討

学級の荒れに注目して

^○加藤弘通¹, 太田正義², 水野君平³, 濤岡優＃⁴, 木下弘基＃⁵, 侯玥江＃⁶ (1.北海道大学, 2.常葉大学, 3.北海道大学, 4.北海道大学, 5.北海道大学, 6.北海道大学)

キーワード：いじめ, 学級の荒れ, 深刻化

問題と目的
本研究の目的は，どのような要因がある場合にいじめが深刻化するのか，リスクアセスメントをするための基礎資料を得ることである。具体的には，(1)新聞データベースを用い，深刻事例に共通する要因を抽出し，(2)量的調査によって，それらの要因がいじめの深刻化に影響しているかを検討した。
予備調査
新聞データベース（朝日・毎日・読売・北海道新聞）を用い，1980年代〜2010年代に新聞紙上で取り上げられ，深刻な事態に陥った33事例を検討した。その結果(1)教師との関係が良くないこと，(2)衆人環視の下での性的辱め，(3)学級崩壊や荒れといった学級の状態が多くの事例に共通していた。
本　調　査
上記の要因のうち「教師との関係」と「学級の状態」，またそれに「学級規模」を加え，いじめの深刻化にどのような要因が影響するのかを検討した。
方　　　法
(1)協力者：公立小学校18校・中学校7校の児童生徒4,059名（学級数は150学級）。
(2)調査内容：①過去3か月のいじめ被害・加害経験8種類に対し「全くない〜11回以上ある」の5件法で回答を求めた。②教師との関係（大久保・青柳, 2004），③学級の荒れ（深谷・三枝, 2000）(3)調査期間：2016年7月。

結果と考察
1．いじめの実態
ネットいじめをのぞき，全てのタイプのいじめにおいて小学生のほうが被害経験率が低かった。性被害に関しては，これまでの研究でほとんど明らかではなかったが，ネットいじめと同程度の被害が存在していることが分かった。

2.いじめの深刻化要因の検討
いじめの被害・加害頻度を深刻度と捉え，マルチレベル分析により，性別，校種，教師との関係という個人レベルの要因と，学級規模，学級の荒れ，（学級全体の）教師との関係という集団レベルの要因との関係を検討した(Table2)。なお，いじめ被害・加害のタイプに関しては，ともに内的一貫性が高かったため，全体で合計し各要因との関連を検討した。
　その結果，①女子よりも男子が加害・被害者である場合，いじめが深刻化する。②被害は小学校のほうが深刻化しやすい。③教師との関係については，個人レベルでは教師との関係が悪い者ほど，被害・加害が深刻化しやすい一方で，集団レベルでは関係は見られなかった。④学級規模に関しては中学校においてのみ，学級規模が大きいほど，加害頻度が増えていた。⑤学級の荒れに関しては，被害加害ともに関連していた。特に被害の深刻化に与える影響は他の要因に比べ大きく，学級の荒れは，いじめの深刻化のリスク要因の1つであることが分かる。校種との交互作用が見られなかったことから，個人レベルの教師との関係同様，校種に関わらず，いじめ一般に共通する要因である。