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[PC77] 教員による自律的貢献を促す学校組織特性Ⅰ
キーワード:学校組織風土, 組織市民行動, 分散型リーダーシップ
学校組織は,官僚的な垂直型の組織的特徴と専門職集団としての自治的な組織的特徴の双方の特徴を色濃く有している(淵上,2005)。教員は,法や政策,規則や規範によって,活動内容や資源を強く規定される一方で,教育活動の中核となる子どもたちとの関わりについてのかなりの裁量を有し説明責任を負っている(鎌田,2017)。
学校組織研究は,暗黙に有能な単一のトップリーダーが組織を活性化し先導する『英雄的な』リーダーを理想像として知見を蓄積してきた一方で,必ずしも校長に限らない複数の教員たちによる自律的な組織貢献による,ボトムアップ的な組織の活性化の在り方については十分に蓄積されてこなかった(Spillane, 2006)。
教員個々の自律性に焦点化するためには,上意下達的な指示・命令・監督に基づく組織マネイジメントの有効性は疑問視され,学校組織として成員による自律的なリーダーシップを導引するための,新たなアプローチが求められる。
Organ, Podsakoff, & MacKenzie,(2006)は,公式的な報酬体系では直接的ないし明示的には認識されないものの,蓄積することで組織の有効性や生産性の促進が期待される行動群を組織市民行動と称し,有効性や意義を体系的に示してきた。
Organらに基づけば(2006),組織市民行動は成員の動機・能力・機会の関数として定義される。組織マネイジメントの視点から,これらの教員の認知的な側面を促進,支持し得る文脈を形成することができれば,教員の自律的な学校貢献が促進される可能性が伺えるが,この点に関しては,将来的に実証的な検証が必要である。
従って本研究では,教員の組織市民行動を導引する可能性のある項目を明確化し,簡易的な測定項目を作成することである。本研究においては,以下の項目について項目を作成し,因子分析や信頼性分析に基づく検証を行った。
機会に関する認知変数 校長によるエンパワーメントリーダーシップ(教員の尊重,情報提供,意思決定への招致,支援的態度の表明など)
動機に関する認知変数 同僚集団の自律的な組織貢献の程度(チームOCB) 組織コミットメント 専門職コミットメント 制御焦点
能力(行動が可能な文脈か否か)に関する認知変数 協同的組織風土 同調的組織風土
方 法
2017年12月に,調査会社(楽天リサーチ)が提供するウェブ調査にて,現職教員300名(男性223名,女性67名)を対象とするアンケート調査を実施した。アンケートに含まれる項目群については,鎌田(2017)を基に適宜修正を加えたものである。
結果と考察
回答を基に,最尤法(プロマックス回転)に基づく,探索的因子分析を行い5つの測定項目を抽出した(①エンパワーメントリーダーシップ,②チームOCB,③コミットメント,④制御焦点,⑤学校組織風土)。これらの項目はすべて解釈可能な因子構造を示し,下位尺度において十分な信頼係数を示し(クロンバックのαs=.98-.72),将来的調査に耐える測定学的特徴を有していると判断された。
引用・参考文献
淵上克義 2005 学校組織の心理学 本文化科学社
鎌田雅史 2017 学校組織開発と教員の組織市民行動との相互的関連 についての組織心理学的研究(課題番号 26870804)研究成果報告書 http://researchmap.jp/?action=cv_download_main&upload_id=131155
Organ, D. W., Podsakoff, P. M., & MacKenzie, S. B. (2006). Organizational Citizenship Behavior, London:Sage Publications (上⽥ 泰(訳) (2007). 組織市⺠⾏動 ⽩桃書房)
Spillane, J.P. (2006) Distributed leadership. San Francisco: Jossey-Bass.
学校組織研究は,暗黙に有能な単一のトップリーダーが組織を活性化し先導する『英雄的な』リーダーを理想像として知見を蓄積してきた一方で,必ずしも校長に限らない複数の教員たちによる自律的な組織貢献による,ボトムアップ的な組織の活性化の在り方については十分に蓄積されてこなかった(Spillane, 2006)。
教員個々の自律性に焦点化するためには,上意下達的な指示・命令・監督に基づく組織マネイジメントの有効性は疑問視され,学校組織として成員による自律的なリーダーシップを導引するための,新たなアプローチが求められる。
Organ, Podsakoff, & MacKenzie,(2006)は,公式的な報酬体系では直接的ないし明示的には認識されないものの,蓄積することで組織の有効性や生産性の促進が期待される行動群を組織市民行動と称し,有効性や意義を体系的に示してきた。
Organらに基づけば(2006),組織市民行動は成員の動機・能力・機会の関数として定義される。組織マネイジメントの視点から,これらの教員の認知的な側面を促進,支持し得る文脈を形成することができれば,教員の自律的な学校貢献が促進される可能性が伺えるが,この点に関しては,将来的に実証的な検証が必要である。
従って本研究では,教員の組織市民行動を導引する可能性のある項目を明確化し,簡易的な測定項目を作成することである。本研究においては,以下の項目について項目を作成し,因子分析や信頼性分析に基づく検証を行った。
機会に関する認知変数 校長によるエンパワーメントリーダーシップ(教員の尊重,情報提供,意思決定への招致,支援的態度の表明など)
動機に関する認知変数 同僚集団の自律的な組織貢献の程度(チームOCB) 組織コミットメント 専門職コミットメント 制御焦点
能力(行動が可能な文脈か否か)に関する認知変数 協同的組織風土 同調的組織風土
方 法
2017年12月に,調査会社(楽天リサーチ)が提供するウェブ調査にて,現職教員300名(男性223名,女性67名)を対象とするアンケート調査を実施した。アンケートに含まれる項目群については,鎌田(2017)を基に適宜修正を加えたものである。
結果と考察
回答を基に,最尤法(プロマックス回転)に基づく,探索的因子分析を行い5つの測定項目を抽出した(①エンパワーメントリーダーシップ,②チームOCB,③コミットメント,④制御焦点,⑤学校組織風土)。これらの項目はすべて解釈可能な因子構造を示し,下位尺度において十分な信頼係数を示し(クロンバックのαs=.98-.72),将来的調査に耐える測定学的特徴を有していると判断された。
引用・参考文献
淵上克義 2005 学校組織の心理学 本文化科学社
鎌田雅史 2017 学校組織開発と教員の組織市民行動との相互的関連 についての組織心理学的研究(課題番号 26870804)研究成果報告書 http://researchmap.jp/?action=cv_download_main&upload_id=131155
Organ, D. W., Podsakoff, P. M., & MacKenzie, S. B. (2006). Organizational Citizenship Behavior, London:Sage Publications (上⽥ 泰(訳) (2007). 組織市⺠⾏動 ⽩桃書房)
Spillane, J.P. (2006) Distributed leadership. San Francisco: Jossey-Bass.