日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

2017年10月8日(日) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PD11] 保育者志望者の親準備性

-保育への自信とアイデンティティステイタスからの検討-

杉山佳菜子 (鈴鹿大学)

キーワード:親準備性, 保育者志望者, アイデンティティステイタス

問題および目的
 親準備性とは「子どもが将来,家庭を築き経営していくために必要な,子どもの養育,家族の結合,結合,家事労働,介護を含む親としての資質,およびそれが備わった状態」と定義されている(岡本・古賀,2004)。
 女子大学生の親準備性にはアダルトチルドレン傾向との関連が指摘されており(諸井ら,2013),杉山・小原(2016)では男女ともに先行研究を指示する結果が得られた。また,自分の性の受容や子どもとの接触経験(八幡,2013)が親準備性の形成に及ぼすという指摘などがあり,杉山(2017)でも,文系大学生と子どもとの接触経験が多い保育者志望学生を比べると,親準備性のうち,自身の親をモデルとしてみる傾向と子どもへの肯定感に違いがみられた。
 そこで本研究では,保育者志望者の親準備性について,保育者になることへの自信とアイデンティティステイタスから違いを検討する。
方   法
 1.調査協力者:保育者養成校の短大生57名(男子 11名,女子 46名)。平均年齢は18.7歳(SD=1.05)であった。2.調査時期:2016 年10 月。3.質問紙の構成 ①フェイスシート:年齢,性別,「保育者にむいているかと思いますか」を「はい」か「いいえ」で尋ね,保育者になりたい気持ちを10点満点で答えてもらった。②アイデンティティステイタス:加藤(1983)の12項目を使用し,手順に従って地位を判定した。③親準備性傾向尺度:西田・諸井(2010)による親準備性傾向尺度の39項目を使用した。回答は「かなりあてはまる」から「ほとんどあてはまらない」の4件法で質問した。それぞれ4点から1点の得点を与え,先行研究に従い6因子に分類し,尺度得点を算出した(Table 1参照)。
結   果
1.保育者としての自信
 保育者になる自信がある学生は35名,ない学生は22名であった。また,なりたい気持ちの平均値は6.7点で平均点より評価点が低い学生を低群(22名),高い学生を高群(35名)の2群に分け,た。親準備性得点に対し,この2つの要因で2×2の分散分析を行った(Table 1)。この結果から保育者という仕事を志す気持ちとは親準備性に大きな影響を与える要因とは言えないことが示された。子どもを保育することと親になることへの自信は必ずしも比例するものではないと言える。
2.アイデンティティステイタスとの関連
 アイデンティティステイタスの人数分布をTable 2に示す。保育者養成校に進学している学生ではあるが,同一性達成している者は多くない。同一性達成している学生と拡散している学生の親準備性を比較した。その結果すべての因子で有意な差はみられなかった。したがって,アイデンティティが確立し,自分の将来についてしっかりとしたイメージを持っているかどうかは親準備性に直接的には関連していないと言える。
 本調査で扱った要因は保育者志望学生の親準備性に影響を与えている要因とは言えず,今後の検討課題である。