10:00 〜 12:00
[PD29] 親による子どもの動機づけの質の認知の正確さについて
キーワード:動機づけ, 親の認知
問題と目的
自己決定理論(Deci & Ryan, 2002)では,親の動機づけと子どもの動機づけの間には,一定の関係性が見られることが明らかにされている(伊藤, 2015)。一方,Murayama et al.(2016)は,親による子ども能力への高すぎる期待が学業成績にマイナスの影響を与えるなど,親が子どもの状況を正しく認知していない場合,子どもの学習に一定の悪影響を与えることを明らかにしている。これを動機づけに当てはめれば,親が子どもの動機づけの状況をどのくらい正しく認知をできているかどうかが,子どもの学習に影響を与えると考えられる。
また,動機づけの種類は1つではないため,動機づけの強さに焦点を当てるだけでなく,個人によってどの動機づけを重視するかについて検討する必要がある(e.g., Ratelle et al., 2007)。
そこで本研究では,親が子どもの持つ動機づけの状況をどのくらい正しい認知をできているかについて,動機づけの質や種類も含めて検討することを目的とする。
方 法
調査対象と手続き 調査会社に登録している30歳以上の親181名(父41名,母140名)とその子ども181名(男子84名,女子97名; Mage=14.02歳,SD=0.87)のダイアドデータを対象とした。調査会社に調査を委託し,郵送法による質問紙調査が実施された。
調査内容
動機づけ Hayamizu(1997)のStepping Motivation Scale(SMS)を用いた。SMSは,自己決定理論に基づき,勉強の理由の内在化の程度によって,内発的,同一化的,取り入れ的,外的の4つの動機づけの下位尺度(各7項目)で構成される。バックトランスレーション法を用いて,項目の内容的妥当性を確認した。回答方法は5件法で親と子どもに尋ねた。親には子どもの動機づけ認知について尋ねた。
統制変数 属性として,親には回答者の子どもとの続柄,父母の年齢,父母の学歴と世帯収入を尋ねた。子どもには,性別と年齢を尋ねた。学業成績は,田中・山内(2000)を参考に5教科(国語, 社会, 数学, 理科, 英語)の成績を7件法で子どもに尋ねた。5教科の加算平均を学業成績の得点として用いた。
結果と考察
統制変数と子どもの動機づけを独立変数,親の動機づけ認知を従属変数とした階層的重回帰分析を行った(Table 1)。その結果,親の動機づけ認知は,Step 2のモデルにおいて,有意な決定係数の増加が確認された。親の動機づけ認知と同じ動機づけから正の影響が確認された。
本研究により,親による子どもの動機づけの質の認知について,親は子どもの動機づけの質や種類を比較的正しく認知していることが明らかになった。また,親は子どもの学業成績が高いと内発的動機づけが高いと判断している可能性が示唆された。今後は,親の動機づけの認知の正確さが子どもの動機づけの質を高めることに結びつくのかについて検討することが課題である。
(本研究はJSPS科研費JP16H06406の助成を受けた。)
自己決定理論(Deci & Ryan, 2002)では,親の動機づけと子どもの動機づけの間には,一定の関係性が見られることが明らかにされている(伊藤, 2015)。一方,Murayama et al.(2016)は,親による子ども能力への高すぎる期待が学業成績にマイナスの影響を与えるなど,親が子どもの状況を正しく認知していない場合,子どもの学習に一定の悪影響を与えることを明らかにしている。これを動機づけに当てはめれば,親が子どもの動機づけの状況をどのくらい正しく認知をできているかどうかが,子どもの学習に影響を与えると考えられる。
また,動機づけの種類は1つではないため,動機づけの強さに焦点を当てるだけでなく,個人によってどの動機づけを重視するかについて検討する必要がある(e.g., Ratelle et al., 2007)。
そこで本研究では,親が子どもの持つ動機づけの状況をどのくらい正しい認知をできているかについて,動機づけの質や種類も含めて検討することを目的とする。
方 法
調査対象と手続き 調査会社に登録している30歳以上の親181名(父41名,母140名)とその子ども181名(男子84名,女子97名; Mage=14.02歳,SD=0.87)のダイアドデータを対象とした。調査会社に調査を委託し,郵送法による質問紙調査が実施された。
調査内容
動機づけ Hayamizu(1997)のStepping Motivation Scale(SMS)を用いた。SMSは,自己決定理論に基づき,勉強の理由の内在化の程度によって,内発的,同一化的,取り入れ的,外的の4つの動機づけの下位尺度(各7項目)で構成される。バックトランスレーション法を用いて,項目の内容的妥当性を確認した。回答方法は5件法で親と子どもに尋ねた。親には子どもの動機づけ認知について尋ねた。
統制変数 属性として,親には回答者の子どもとの続柄,父母の年齢,父母の学歴と世帯収入を尋ねた。子どもには,性別と年齢を尋ねた。学業成績は,田中・山内(2000)を参考に5教科(国語, 社会, 数学, 理科, 英語)の成績を7件法で子どもに尋ねた。5教科の加算平均を学業成績の得点として用いた。
結果と考察
統制変数と子どもの動機づけを独立変数,親の動機づけ認知を従属変数とした階層的重回帰分析を行った(Table 1)。その結果,親の動機づけ認知は,Step 2のモデルにおいて,有意な決定係数の増加が確認された。親の動機づけ認知と同じ動機づけから正の影響が確認された。
本研究により,親による子どもの動機づけの質の認知について,親は子どもの動機づけの質や種類を比較的正しく認知していることが明らかになった。また,親は子どもの学業成績が高いと内発的動機づけが高いと判断している可能性が示唆された。今後は,親の動機づけの認知の正確さが子どもの動機づけの質を高めることに結びつくのかについて検討することが課題である。
(本研究はJSPS科研費JP16H06406の助成を受けた。)