日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

2017年10月8日(日) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PD36] 他者との学習における動機づけ調整方略と行動的エンゲージメントの関連

Relative Weight Analysisによる検討

梅本貴豊1, 田中健史朗#2, 矢田尚也#3 (1.九州女子大学, 2.山梨大学, 3.大阪市立大学大学院)

キーワード:動機づけ調整方略, 行動的エンゲージメント, Relative Weight Analysis

問題と目的
 近年,わが国ではアクティブラーニングの推奨などによって(中央教育審議会, 2012),他者と学習する機会が増えている。個人での学習と同様に,他者との学習においても,動機づけを調整することは重要である。梅本他(2017)は,他者との学習場面における動機づけ調整方略を測定する尺度を作成し,5つの方略を見いだしている。しかし,それぞれが学習プロセスに対してどの程度相対的に重要なのかについては検討されていない。自律的な学習を効率的に促進させるためにも,どのような動機づけ調整方略が積極的な学習により寄与しうるのかを明らかにすることが必要である。
 本研究では,縦断的な調査を通して,動機づけ調整方略と行動的エンゲージメントとの関連を検討する。その際に,それぞれの動機づけ調整方略の相対的な重要性を検討するためRelative Weight Analysisを用いることとする。
方   法
調査手続き 2つの大学の学生63名に対して,それぞれの授業において調査を行った。1回目の調査のあと,協同学習を含む授業をそれぞれ複数回行い,2回目の調査を行った。分析には,2回の調査に参加した57名(男性13名,女性44名; 平均年齢19.39, 標準偏差1.91)のデータを用いた。
調査内容 Time 1:他者との学習における動機づけ調整方略(46項目; 梅本他, 2017),行動的エンゲージメント(5項目; 梅本・田中, 2012の表現を修正)が測定された。Time 2:Time 1と同様に行動的エンゲージメントが測定された。当該の授業を含む現在の他者との学習での取り組みについて,いずれの尺度にも5件法で回答を求めた。
結果と考察
 まず,下位尺度ごとにα係数を算出したところ.66から.83であった。次に,動機づけ調整方略を独立変数,Time 1の行動的エンゲージメントを統制変数,Time 2の行動的エンゲージメントを従属変数とした重回帰分析およびRelative Weight Analysisを行った。
 Relative Weight Analysis(Tonidandel & LeBreton, 2011, 2015)とは,それぞれの独立変数が従属変数の分散を相対的にどれだけ説明しているのかを示す分析であり,動機づけ調整方略のように独立変数間に関連がある場合に特に有効である(Schwinger & Otterpohl, 2017)。独立変数ごとにRelative Weight(RW)という相対的な効果量が算出され,すべてのRWを足したものが重回帰分析におけるモデルの決定係数と一致する。
 分析の結果,動機づけ調整方略のなかでも,積極的交流が行動的エンゲージメントに対して相対的に重要であることが示された。グループメンバーと励ましあったり協力したりしてやる気を高めることが,他者との学習において努力などの積極的な学習行動を促進しうる可能性が示された。また,学習活動の構造化の相対的な重要性も示された。グループメンバーの役割分担を行ったり計画を立てたりして学習活動を構造化してやる気を高めることは,積極的に学習を進めるために重要である可能性が示された。
 今後は,他の学習行動の指標を用いた分析や,異なるサンプルに対する分析などを通して,動機づけ調整方略の学習プロセスに対する相対的な重要性をより精緻に検討する必要がある。