10:00 〜 12:00
[PD41] 聴き手意識が情報検索と情報提示に与える影響
キーワード:聴き手意識, 情報検索, 情報提示
問題と目的
口頭での発表や説明(e.g., 田島・森田,2009),文章による説明(e,g., 岸,2009)や説得(e.g., 小野田,2014)など,あらゆる情報発信活動において,「誰に向けて情報を発信するか」という宛名に関する認知(聴き手意識・読み手意識)は,情報発信の質に影響を与える重要な要因となる。本研究では,特に聴き手意識に着目し,情報発信活動を「どの情報を提示するか」に関する情報検索と,「どのように情報を提示するか」に関する情報提示の2つの活動に分節化して捉えた上で,聴き手意識がそれらの活動にどのような影響を与えるかを検討する。以上の検討を通し,聴き手意識が情報発信活動に与える影響と,その範囲を同定することが本研究の主たる目的となる。
方 法
参加者 中学校1年生の2学級80名(男子48名,女子32名)が参加した。
情報発信活動 本の魅力についてプレゼンする活動を行った。文献内容を統制するため,プレゼン対象の図書はミヒャエル・エンデ著の『モモ』に限定した。
条件 聴き手意識を操作するため,参加者を学級ごとに(1)本の内容を知らない保護者にプレゼンすると想定する「未知条件」と,(2)本の内容を十分に知っているクラスメイトにプレゼンすると想定する「既知条件」とに分けた。
情報検索ツール マインドマップを用いて『モモ』の魅力について自由に書き出すように求めた。
情報提示ツール A4縦長の用紙を用い,プレゼンのアウトラインを作成するように求めた。
手続き 実験授業は4時限から構成された。1限目にマインドマップを作成し,2限目ではマインドマップを基にアウトラインを作成した。ここでは,マインドマップのキーワードのうち「自分が興味深い,面白いと思う情報」について青で丸をつけ,「聴き手にとって重要,必要な情報」について赤で丸をつけるように求め,青丸と赤丸が重なる意見は提示すべき優先順位が高い情報であり,青丸だけの情報はそれに比べて優先順位が低い情報となることを伝えた。これは,「提示したい情報」と「提示すべき情報」とを区別するための指導として行われた。3限目はプレゼン練習であり,ペアでプレゼン練習を行った。4限目は最終版のプレゼンをペアで行った。
結果と考察
カテゴリ分類 マインドマップとアウトラインに記されたキーワードについて,1単語,および1文を単位として抽出し,ボトムアップでキーワードの分類を行った結果,(a)「内容情報」:あらすじや結末,登場人物など本の内容に関する情報,(b)「個人関連情報」:本との出会いや,読後感など,参加者自身の意見や感想に関する情報,(c)「書誌情報」:後続作品や受賞歴など文献や著者に関する情報,の3カテゴリが見出された(κ = .78)。
聴き手意識が情報検索に与える影響 マインドマップに記されたキーワードの産出数について,条件間の平均値差を検討した。その結果,「内容情報」に関しては既知条件に比べ,未知条件においてより多く産出されているのに対し,「書誌情報」に関しては未知条件に比べ,既知条件においてより多く産出されていることが示された。一方,「個人関連情報」については条件間で有意な平均値差は確認されなかった(Table 1)。
聴き手意識が情報提示に与える影響 アウトラインに記されたキーワードの産出数について,条件間の平均値差を検討した。その結果,「内容情報」に関しては既知条件に比べ,未知条件においてより多く産出されていることが示された。一方,「個人関連情報」と「書誌情報」については,未知条件に比べ,既知条件においてより多く産出される傾向にある(p < .10)ことが示された(Table 1)。
以上より,未知条件では本の内容に関する情報が,既知条件では本の内容以外の情報がより積極的に検索,提示される傾向にあることが示された。この結果は,聴き手意識がどのように情報を伝えるかという情報提示の段階だけでなく,その前段階である情報検索の段階にも影響を与えていた可能性を示唆するものといえるだろう。
口頭での発表や説明(e.g., 田島・森田,2009),文章による説明(e,g., 岸,2009)や説得(e.g., 小野田,2014)など,あらゆる情報発信活動において,「誰に向けて情報を発信するか」という宛名に関する認知(聴き手意識・読み手意識)は,情報発信の質に影響を与える重要な要因となる。本研究では,特に聴き手意識に着目し,情報発信活動を「どの情報を提示するか」に関する情報検索と,「どのように情報を提示するか」に関する情報提示の2つの活動に分節化して捉えた上で,聴き手意識がそれらの活動にどのような影響を与えるかを検討する。以上の検討を通し,聴き手意識が情報発信活動に与える影響と,その範囲を同定することが本研究の主たる目的となる。
方 法
参加者 中学校1年生の2学級80名(男子48名,女子32名)が参加した。
情報発信活動 本の魅力についてプレゼンする活動を行った。文献内容を統制するため,プレゼン対象の図書はミヒャエル・エンデ著の『モモ』に限定した。
条件 聴き手意識を操作するため,参加者を学級ごとに(1)本の内容を知らない保護者にプレゼンすると想定する「未知条件」と,(2)本の内容を十分に知っているクラスメイトにプレゼンすると想定する「既知条件」とに分けた。
情報検索ツール マインドマップを用いて『モモ』の魅力について自由に書き出すように求めた。
情報提示ツール A4縦長の用紙を用い,プレゼンのアウトラインを作成するように求めた。
手続き 実験授業は4時限から構成された。1限目にマインドマップを作成し,2限目ではマインドマップを基にアウトラインを作成した。ここでは,マインドマップのキーワードのうち「自分が興味深い,面白いと思う情報」について青で丸をつけ,「聴き手にとって重要,必要な情報」について赤で丸をつけるように求め,青丸と赤丸が重なる意見は提示すべき優先順位が高い情報であり,青丸だけの情報はそれに比べて優先順位が低い情報となることを伝えた。これは,「提示したい情報」と「提示すべき情報」とを区別するための指導として行われた。3限目はプレゼン練習であり,ペアでプレゼン練習を行った。4限目は最終版のプレゼンをペアで行った。
結果と考察
カテゴリ分類 マインドマップとアウトラインに記されたキーワードについて,1単語,および1文を単位として抽出し,ボトムアップでキーワードの分類を行った結果,(a)「内容情報」:あらすじや結末,登場人物など本の内容に関する情報,(b)「個人関連情報」:本との出会いや,読後感など,参加者自身の意見や感想に関する情報,(c)「書誌情報」:後続作品や受賞歴など文献や著者に関する情報,の3カテゴリが見出された(κ = .78)。
聴き手意識が情報検索に与える影響 マインドマップに記されたキーワードの産出数について,条件間の平均値差を検討した。その結果,「内容情報」に関しては既知条件に比べ,未知条件においてより多く産出されているのに対し,「書誌情報」に関しては未知条件に比べ,既知条件においてより多く産出されていることが示された。一方,「個人関連情報」については条件間で有意な平均値差は確認されなかった(Table 1)。
聴き手意識が情報提示に与える影響 アウトラインに記されたキーワードの産出数について,条件間の平均値差を検討した。その結果,「内容情報」に関しては既知条件に比べ,未知条件においてより多く産出されていることが示された。一方,「個人関連情報」と「書誌情報」については,未知条件に比べ,既知条件においてより多く産出される傾向にある(p < .10)ことが示された(Table 1)。
以上より,未知条件では本の内容に関する情報が,既知条件では本の内容以外の情報がより積極的に検索,提示される傾向にあることが示された。この結果は,聴き手意識がどのように情報を伝えるかという情報提示の段階だけでなく,その前段階である情報検索の段階にも影響を与えていた可能性を示唆するものといえるだろう。