10:00 〜 12:00
[PD48] 当事者の語りの状況と児童生徒が感じる圧迫
キーワード:当事者, 児童生徒, 圧迫
はじめに
戦争体験者,被爆者,障害のある人,重い病気の体験者,災害被災者,薬物依存経験者,同和地区出身者等が,児童生徒に対して,自身の経験をもとに,学校に出向いて,あるいは遠足や修学旅行先で講話をすることがある。しかし,それらの講話から児童生徒が何を学んでおり,またそれらの講話にどのような教育的意義があるのかを検証した研究はこれまでにない。
教育現場で時w々教師が口にする話として「今回来てもらった障害のある人の話は自分の苦労話ばかりで,あまり教育的ではなかった。でも,子どもが当事者の話を聞いたことには意義がある」というものがある。学校行事等では,事前・事後学習をしっかり行っているが,当事者の語りに関しては「講話者に丸投げ」の場合が多く,非教育的な話が行われた場合であっても教師が事後指導をすることはほとんどない。
そこで,小学校から高校の教育の中で当事者の語りがどのように行われているのかについて大学生を対象にした質問紙調査(回想調査)を行った。本稿では,その結果をもとに,当事者の語りを児童生徒の教育に取り入れる際に配慮すべきことについて考察する。
方 法
(1)調査対象者:5つの大学の学生619名
(2)調査手続き:上記の大学の教員に依頼し,授業終了後に任意の自記式無記名式の質問紙調査を行った。調査は筑波大学医学医療系医の倫理委員会の承認を得て実施した。
結 果
当事者の語りを学校で聞いた経験があった者は368名(60%)であった。表1に当事者の属性を示した。調査対象者1名につき最大2件の回答を求めたが,小・中・高とも戦争体験者,次いで視覚障害者の講話を聴いた経験がある者が多かった。その他については学校別人数を示していないが,聴覚障害者は小・中学校で多く,薬物依存経験者は小学校では皆無であった。
当事者の話が勉強になったかどうかを尋ねたところ,どの当事者の話も8割以上の対象者が勉強になったと回答した。一方,当事者の話の内容に「圧迫・押しつけ」を感じたかを尋ねたところ,戦争体験者には22名(戦争体験者の話を聞いた者のうちの20%),視覚障害者には7名(12%)がそれらを感じたと回答した。また話を聞く前に学校で事前学習を行った者は368名のうち169名(46%)のみであった。
校外学習や修学旅行等で当事者の話を聞いた経験を尋ねたところ,619名のうち370名(60%)がその経験があると回答した。戦争体験者の話が最も多く370名のうちの84%であった。その話を97%が勉強になったと回答したが,同時に20%が「圧迫・押しつけ」を感じたとも回答している。84%が事前学習を行ったと答えた。
考 察
語りの当事者として,戦争体験者や障害者だけでなく,薬物依存経験者や北朝鮮拉致被害者など,話者が多岐にわたっていることが確認できた。
当事者の語りの教育的効果を上げるためには児童生徒の事前学習が必須である。話者がなぜそのような発言をしているのかを理解するためには,歴史的な背景や話者が置かれている立場に関する知識や認識が必要である。また,教師は話者である当事者と事前に会い,子どもの発達に応じた話の内容や話し方についての十分な打ち合わせを欠かしてはならない。さらに語りの中に子どもに誤解を生む話があった場合には事後学習において,教員が修正するべきである。
戦争体験者,被爆者,障害のある人,重い病気の体験者,災害被災者,薬物依存経験者,同和地区出身者等が,児童生徒に対して,自身の経験をもとに,学校に出向いて,あるいは遠足や修学旅行先で講話をすることがある。しかし,それらの講話から児童生徒が何を学んでおり,またそれらの講話にどのような教育的意義があるのかを検証した研究はこれまでにない。
教育現場で時w々教師が口にする話として「今回来てもらった障害のある人の話は自分の苦労話ばかりで,あまり教育的ではなかった。でも,子どもが当事者の話を聞いたことには意義がある」というものがある。学校行事等では,事前・事後学習をしっかり行っているが,当事者の語りに関しては「講話者に丸投げ」の場合が多く,非教育的な話が行われた場合であっても教師が事後指導をすることはほとんどない。
そこで,小学校から高校の教育の中で当事者の語りがどのように行われているのかについて大学生を対象にした質問紙調査(回想調査)を行った。本稿では,その結果をもとに,当事者の語りを児童生徒の教育に取り入れる際に配慮すべきことについて考察する。
方 法
(1)調査対象者:5つの大学の学生619名
(2)調査手続き:上記の大学の教員に依頼し,授業終了後に任意の自記式無記名式の質問紙調査を行った。調査は筑波大学医学医療系医の倫理委員会の承認を得て実施した。
結 果
当事者の語りを学校で聞いた経験があった者は368名(60%)であった。表1に当事者の属性を示した。調査対象者1名につき最大2件の回答を求めたが,小・中・高とも戦争体験者,次いで視覚障害者の講話を聴いた経験がある者が多かった。その他については学校別人数を示していないが,聴覚障害者は小・中学校で多く,薬物依存経験者は小学校では皆無であった。
当事者の話が勉強になったかどうかを尋ねたところ,どの当事者の話も8割以上の対象者が勉強になったと回答した。一方,当事者の話の内容に「圧迫・押しつけ」を感じたかを尋ねたところ,戦争体験者には22名(戦争体験者の話を聞いた者のうちの20%),視覚障害者には7名(12%)がそれらを感じたと回答した。また話を聞く前に学校で事前学習を行った者は368名のうち169名(46%)のみであった。
校外学習や修学旅行等で当事者の話を聞いた経験を尋ねたところ,619名のうち370名(60%)がその経験があると回答した。戦争体験者の話が最も多く370名のうちの84%であった。その話を97%が勉強になったと回答したが,同時に20%が「圧迫・押しつけ」を感じたとも回答している。84%が事前学習を行ったと答えた。
考 察
語りの当事者として,戦争体験者や障害者だけでなく,薬物依存経験者や北朝鮮拉致被害者など,話者が多岐にわたっていることが確認できた。
当事者の語りの教育的効果を上げるためには児童生徒の事前学習が必須である。話者がなぜそのような発言をしているのかを理解するためには,歴史的な背景や話者が置かれている立場に関する知識や認識が必要である。また,教師は話者である当事者と事前に会い,子どもの発達に応じた話の内容や話し方についての十分な打ち合わせを欠かしてはならない。さらに語りの中に子どもに誤解を生む話があった場合には事後学習において,教員が修正するべきである。