日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

2017年10月8日(日) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PD59] 援助要請スタイルと愛着および適切な援助要請行動の関連の検討

永井智 (立正大学)

キーワード:援助要請スタイル, 愛着

問題と目的
 近年,援助要請の量だけでなく質に注目することの重要性が指摘されている。こうした点を踏まえ,援助要請の質に注目した援助要請スタイル (永井, 2013)との関連変数がいくつか報告されている (青柳, 2016; 飯田, 2017)。しかしながら,各スタイルの特性を有する者がどのような特徴を示すのかについては十分明らかになっていない。
 そこで本研究では,各援助要請スタイルによる,援助要請意思決定前後の特徴について明らかにすることを目的とする。援助要請意思決定後の振舞いとしては適切・不適切な援助要請を,各援助要請スタイルをもたらす要因としては愛着を扱う。
方   法
調査協力者 大学生127 (男性48: 女性79)名
質問紙の構成 ①援助要請スタイル 援助要請スタイル尺度 (永井, 2013; 12項目7件法) ②愛着 一般他者版親密な対人関係体験尺度 (中尾・加藤, 2004; 30項目7件法) ③適切・不適切な援助要請行動 森脇ら (2002a)による適切な自己開示尺度および不適切な自己開示尺度を改変して用いた (34項目5件法)。
結果と考察
 性別および愛着の2変数が援助要請スタイルに影響し,それらが適切な援助要請行動および不適切な援助要請行動の各変数に影響するというモデルを仮定した。
 その結果 (Table1; χ2=47.91 (n.s.),df=43,GFI=.95,AGFI=.89,CFI=.99,RMSEA=.03),女性の方が「援助要請過剰型」の得点が高く,「援助要請回避型」の得点が低かった。次に愛着の「不安」は「援助要請過剰型」と「援助要請回避型」に正の影響を与えていた。また愛着の「回避」は「援助要請過剰型」と「援助要請自立型」に負の,「援助要請回避型」に正の影響を与えていた。
 適切な援助要請に対しては,「不安」が「文脈等配慮」および「時間及び場所選択」に正の影響を与えており,「回避」も「時間及び場所選択」に対して正の影響を与えていた。また「援助要請自立型」は適切な援助要請の各下位尺度に正の影響を与えており,「援助要請回避型」も「文脈等配慮」と「聞き手選択」のに正の影響を与えていた。
 不適切な援助要請に対しては,「不安」が「ネガティビティ」と「しつこさ」に正の影響を与えていた。また,「援助要請過剰型」が「ネガティビティ」を除く各下位尺度に対して正の影響を与えていた。そして,「援助要請回避型」も「聞き手等無選択」に正の影響を与えていた。
 このように,回避は援助要請過剰型及び援助要請自立型を抑制し,援助要請回避型を促進していた。一方,愛着の不安は援助要請過剰型と援助要請回避型の両方を促進していた。これらの結果はいずれも,愛着の両特性を反映した結果であると言える。また,援助要請スタイルと援助要請の適切性・不適切性との関連については概ね,援助要請過剰型が不適切な援助要請を促進し,援助要請自立型と援助要請回避型が適切な援助要請を促進するという結果が得られた。
 今後,各援助要請スタイルが適応にどのように結びつくかを明らかにする必要がある。