日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

2017年10月8日(日) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PD60] E-S理論からみた大学生のインターネット利用

西田敬志1, 川田裕次郎2, 柴田展人#3, 広沢正孝#4 (1.順天堂大学, 2.順天堂大学, 3.順天堂大学大学院, 4.順天堂大学大学院)

キーワード:大学生, インターネット, E-S理論

目   的
 インターネット(以下,ネット)の利用率はスマートフォンの普及に伴い,13~19歳では98.2%,20~29歳で99.0%であり(総務省,2016),若年者の9割強の者が利用している。しかし,そのネット利用に伴う問題も少なくなく,ネット依存やネットいじめだけではなく,ネットを通じたコミュニケーションなどもしばしば問題となっている。
 ネットを利用する場面やカテゴリについては,各個人によって異なり,その違いは環境要因によって生じる可能性があるが,生得的要因にも影響を受けると思われる。
 生得的な性質を説明する理論としてE-S理論(Empathizing‐Systemizing Theory;Baron-Cohen et al. ,2003)がある。この理論では,個人の認知スタイルを「共感化」と「システム化」の2次元の座標から「Extreme Type E」「Type E」「Type B」「Type S」「Extreme Type S」の5類型にしており,「Type E」の傾向があれば共感化の傾向があり,「Type S」の傾向があればシステム化の傾向がある。もし,生得的な要因とネット利用が関連するのであればネット利用の問題の対応には個人の生得的な特性に合わせた対応が求められるだろう。
 そこで,本研究では,E-S理論を用いてネット利用について検討することを目的とする。

方   法
1,対象:首都圏にある大学に在学する大学生731名(男性473名,女性258名,平均年齢:19.60,SD:1.27)
2,期間:2016年10月中旬(Empathy Quotient(以下,EQ) ,Systemizing Quotient(以下,SQ)に関して1年生時の同時期に実施。)
3,質問紙の構成:
(1)対象者の属性:性別,学年,年齢等からなる。
(2)ネット利用に関する項目:ネットの利用時間,最も利用するカテゴリ(SNS,ショッピング・オークション,ネット音楽視聴(ネットラジオも含む),ソーシャルゲーム,動画視聴(Youtube等),情報検索,ニュース,電子書籍)等
(3)共感指数(EQ;Baron-Cohen et al.,2004)とシステム化指数(SQ;Baron-Cohen,2003):E-S理論を基に作成された2つの尺度は,他者の感情や行動に注目しそれを予測する動因を測定する「共感指数」と物的な規則性や構造・動きへの興味と傾倒する傾向を測定する「システム化指数」であり,いずれもそれぞれの内容を示す60項目とダミー項目の20項目から成る。5類型の分類方法については,Baron-Cohen(2003)を参考にそれぞれをパーセンテージで分類し,「Extreme Type E」「Type E」「Type B」「Type S」「Extreme Type S」の5類型とした。

結果・考察
 まず,EQ,SQの得点をもとに5類型化し,最も利用するカテゴリとのクロス集計を行った(Table1)。
 その結果,最も利用しているカテゴリとしてはSNSと答えた者が全体の65.9%で最も多かった。E-S理論に基づきそれぞれタイプ別にみると「Type E」はSNSと答えた者が有意に多く,ソーシャルゲームと答えた者は有意に少なかった。「Type S」はSNSと答えた者は有意に少なく,ソーシャルゲームと答えた者は有意に多かった。「Extreme Type S」はニュースと答えた者が有意に多かった。これはヒトに対する興味が優位である「Type E」の者はSNSのようなヒトと交流するものをネットで利用する傾向があり,一方でモノに対する興味が優位である「Type S」の者はソーシャルゲームのような物事の構造を読み解くことが求められるものをネットで利用する傾向があるといえる。これらのことから,ネット利用には生得的な特徴を示すE-Sの傾向が関連していることが明らかとなった。そのため,今後ネット利用の実態把握やネット利用に関する問題を扱う際にはE-S理論を適用することでより実態を詳細に明らかにできる可能性が示された。