10:00 〜 12:00
[PD64] 学級状態の違いによる特別支援対象児の学級適応感
学級状態6類型における学級満足度尺度4群の出現数の検討
キーワード:小学校通常学級, 学級適応感, 学級状態
目 的
本研究では,学級経営をする上での集団アセスメントの方法として広く学校現場で活用されている「Q-U」の中の学級満足度尺度を用いて,学級集団を分類し,学級状態の類型化を行う。また,学級適応感の指標として対象児の学級満足度尺度4群の出現数を検討する。そして学級集団の状態に注目して対象児の学級適応感との関連を明らかにすることを目的とする。
方 法
調査対象 A県内の公立小学校42校218学級の4・5・6年生4,908名(4年生1,618名,5年生1,737名,6年生1,553名)と各学級の担任教師218名が調査対象であった。有効回答4,886名のうち,特別支援学級在籍の105名を除外し,通常学級在籍の対象児294名と,218学級を分析の対象とした。
調査時期と手続き 201X~201X+4年にかけて,10~12月に実施した調査を対象に回収した。回収したデータは,「Q-U」の中の学級生活満足度尺度の結果と担任に実施した特別支援対象児童のスクリーニングテスト(文部科学省,2012)である。
結 果
河村(2010)による学級状態の分類は,①親和型,②ゆるみ型,③かたさ型,④荒れ始め型,⑤拡散型,⑥崩壊型の6類型である。
学級状態が,対象児の学級満足度尺度4群の出現数と関連があるか否かを検討するため,対象児289名について,所属学級の学級状態類型と学級満足度尺度4群によるクロス表にまとめ,χ²検定を行ったところ,出現に有意な偏りが認められた(χ²(12)=65.70,p<.001)ので,さらに残差分析を行った(Table1)。なお,崩壊型学級については,出現数のない群があるためχ²検定による分析から除外した。よって分析対象は289人である。
考 察
親和型学級に在籍する対象児は,満足群の出現が有意に多く,学級への適応が良好であることが示唆される結果であった。親和型学級に次いで,適応が良好なのはかたさ型学級で不満足群の出現は有意に少なかった。一方,適応が悪いのは荒れ始め型学級で,満足群が有意に少なく,不満足群が有意に多かった。ゆるみ型学級もあまり良好とはいえず,満足群は有意に少なかった。
学級状態類型と児童の学級適応感との関連を検討した武蔵・河村(2015)の研究では,かたさ型学級のスクールモラールは,ゆるみ型学級,荒れ始め型学級より低いことが明らかにされている。対象児のみを分析した本研究では,ゆるみ型学級や荒れ始め型学級より,かたさ型学級に在籍する対象児の学級適応感が高いことが明らかとなった。
このことから,対象児にとってはルールやマナーが未確立の集団は居心地が悪いことが考えられた。よって,学級のルールやマナーの確立を優先しつつ,最終的には親和型学級を目指していくことが,対象児が在籍する学級の学級づくりの方針として有効であることが示唆された。
引用文献
河村茂雄 2010.日本の学級集団と学級経営. 図書文化.
武蔵由佳・河村茂雄 2015. 小学校における学級集団の状態像と児童の学級生活意欲およびソーシャルスキルとの関連. 学級経営心理学研究,4,29-37.
本研究では,学級経営をする上での集団アセスメントの方法として広く学校現場で活用されている「Q-U」の中の学級満足度尺度を用いて,学級集団を分類し,学級状態の類型化を行う。また,学級適応感の指標として対象児の学級満足度尺度4群の出現数を検討する。そして学級集団の状態に注目して対象児の学級適応感との関連を明らかにすることを目的とする。
方 法
調査対象 A県内の公立小学校42校218学級の4・5・6年生4,908名(4年生1,618名,5年生1,737名,6年生1,553名)と各学級の担任教師218名が調査対象であった。有効回答4,886名のうち,特別支援学級在籍の105名を除外し,通常学級在籍の対象児294名と,218学級を分析の対象とした。
調査時期と手続き 201X~201X+4年にかけて,10~12月に実施した調査を対象に回収した。回収したデータは,「Q-U」の中の学級生活満足度尺度の結果と担任に実施した特別支援対象児童のスクリーニングテスト(文部科学省,2012)である。
結 果
河村(2010)による学級状態の分類は,①親和型,②ゆるみ型,③かたさ型,④荒れ始め型,⑤拡散型,⑥崩壊型の6類型である。
学級状態が,対象児の学級満足度尺度4群の出現数と関連があるか否かを検討するため,対象児289名について,所属学級の学級状態類型と学級満足度尺度4群によるクロス表にまとめ,χ²検定を行ったところ,出現に有意な偏りが認められた(χ²(12)=65.70,p<.001)ので,さらに残差分析を行った(Table1)。なお,崩壊型学級については,出現数のない群があるためχ²検定による分析から除外した。よって分析対象は289人である。
考 察
親和型学級に在籍する対象児は,満足群の出現が有意に多く,学級への適応が良好であることが示唆される結果であった。親和型学級に次いで,適応が良好なのはかたさ型学級で不満足群の出現は有意に少なかった。一方,適応が悪いのは荒れ始め型学級で,満足群が有意に少なく,不満足群が有意に多かった。ゆるみ型学級もあまり良好とはいえず,満足群は有意に少なかった。
学級状態類型と児童の学級適応感との関連を検討した武蔵・河村(2015)の研究では,かたさ型学級のスクールモラールは,ゆるみ型学級,荒れ始め型学級より低いことが明らかにされている。対象児のみを分析した本研究では,ゆるみ型学級や荒れ始め型学級より,かたさ型学級に在籍する対象児の学級適応感が高いことが明らかとなった。
このことから,対象児にとってはルールやマナーが未確立の集団は居心地が悪いことが考えられた。よって,学級のルールやマナーの確立を優先しつつ,最終的には親和型学級を目指していくことが,対象児が在籍する学級の学級づくりの方針として有効であることが示唆された。
引用文献
河村茂雄 2010.日本の学級集団と学級経営. 図書文化.
武蔵由佳・河村茂雄 2015. 小学校における学級集団の状態像と児童の学級生活意欲およびソーシャルスキルとの関連. 学級経営心理学研究,4,29-37.