13:30 〜 15:30
[PE12] 大学生のキャリア発達を促す予備的プログラムの実施と評価
個々の変化プロセスに着目して
キーワード:キャリア発達
問題と目的
青年期にある大学生においては,自己形成が大きな課題となり,卒業後の社会との関わり方について模索することが求められる。職業選択はキャリア発達の一部であり,必然的に自分と向かい合う過程ともなる。この課題にうまく適応できる場合もあれば,何らかの支援を要する場合もある。寺本(2017)では,少人数のゼミナールを活用し,グループワークを通じた予備的なキャリア支援プログラムを実施し,その評価を試みた。準実験デザインに基づき事前・事後テスト得点の比較をおこなった結果,肯定的変化が確認され,支援の有効性に関する示唆を得ることができた。本研究では,個々の参加者の変化プロセスに着目し,本プログラムを再度検討することを目的とした。
方 法
参加者 関東にある私立大学の心理学科の学生8名(3年生2名,4年生6名)。
手続き ゼミナールを活用し,キャリアに関するグループ・ディスカッションを継続的に実施した(月1回,計4回)。テーマは職業観,実際の就職活動,その振り返り,次の行動計画の4点であった。毎回学生がファシリテーターを務め,ワークシートを活用して進行した。アセスメントは,第1回の開始前(事前テスト)と各回の終了後(事後テスト1~4)に,進路選択に対する自己効力尺度(浦上,1995)とアイデンティティ尺度(下山,1992)(基礎と確立の2領域)を用いて実施した。事前テスト得点と各事後テスト得点の相関係数を求め,ベースライン水準と支援後の水準の関連について検討した。また,各参加者の得点変化についても吟味した。
倫理的配慮 本研究は発表者の所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得て実施された。
結果と考察
進路選択自己効力尺度の事前テスト得点と各事後テスト得点の相関係数をTable 1に示した。正の有意な相関が認められたのは,事後テスト1における進路選択自己効力(ρ=.86, p<.01)及びアイデンティティ基礎(ρ=.71, p<.05)であった。ベースライン水準の影響はプログラム開始の直後に部分的に確認されたが,その後は認められなかった。
各参加者の得点変化について,進路選択自己効力得点の上昇傾向が認められたのは8名中6名であった。その内,アイデンティティ基礎と確立でも上昇が確認されたのは3名(例:Figure 1と2),基礎のみでは3名(例:Figure 3)であった。徐々に上昇傾向を示す者やV字回復を示す者等,個々の特徴が見受けられた。また,途中まで上昇傾向を示したものの,最終段階で一気に下降に転じた1名や徐々に下降した1名も認められた。
以上のことから,本プログラムのグループワークを通じた自己分析,情報交換,励まし合い等は,全体的には肯定的変化を促したと考えられたが,その過程における個人差に敏感に対応した工夫や個別的支援の必要性も示唆された。
青年期にある大学生においては,自己形成が大きな課題となり,卒業後の社会との関わり方について模索することが求められる。職業選択はキャリア発達の一部であり,必然的に自分と向かい合う過程ともなる。この課題にうまく適応できる場合もあれば,何らかの支援を要する場合もある。寺本(2017)では,少人数のゼミナールを活用し,グループワークを通じた予備的なキャリア支援プログラムを実施し,その評価を試みた。準実験デザインに基づき事前・事後テスト得点の比較をおこなった結果,肯定的変化が確認され,支援の有効性に関する示唆を得ることができた。本研究では,個々の参加者の変化プロセスに着目し,本プログラムを再度検討することを目的とした。
方 法
参加者 関東にある私立大学の心理学科の学生8名(3年生2名,4年生6名)。
手続き ゼミナールを活用し,キャリアに関するグループ・ディスカッションを継続的に実施した(月1回,計4回)。テーマは職業観,実際の就職活動,その振り返り,次の行動計画の4点であった。毎回学生がファシリテーターを務め,ワークシートを活用して進行した。アセスメントは,第1回の開始前(事前テスト)と各回の終了後(事後テスト1~4)に,進路選択に対する自己効力尺度(浦上,1995)とアイデンティティ尺度(下山,1992)(基礎と確立の2領域)を用いて実施した。事前テスト得点と各事後テスト得点の相関係数を求め,ベースライン水準と支援後の水準の関連について検討した。また,各参加者の得点変化についても吟味した。
倫理的配慮 本研究は発表者の所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得て実施された。
結果と考察
進路選択自己効力尺度の事前テスト得点と各事後テスト得点の相関係数をTable 1に示した。正の有意な相関が認められたのは,事後テスト1における進路選択自己効力(ρ=.86, p<.01)及びアイデンティティ基礎(ρ=.71, p<.05)であった。ベースライン水準の影響はプログラム開始の直後に部分的に確認されたが,その後は認められなかった。
各参加者の得点変化について,進路選択自己効力得点の上昇傾向が認められたのは8名中6名であった。その内,アイデンティティ基礎と確立でも上昇が確認されたのは3名(例:Figure 1と2),基礎のみでは3名(例:Figure 3)であった。徐々に上昇傾向を示す者やV字回復を示す者等,個々の特徴が見受けられた。また,途中まで上昇傾向を示したものの,最終段階で一気に下降に転じた1名や徐々に下降した1名も認められた。
以上のことから,本プログラムのグループワークを通じた自己分析,情報交換,励まし合い等は,全体的には肯定的変化を促したと考えられたが,その過程における個人差に敏感に対応した工夫や個別的支援の必要性も示唆された。