13:30 〜 15:30
[PE38] 大学生におけるアクティブラーニング授業実践の効果検証
キーワード:アクティブラーニング, チーム基盤型学習, 予習・復習
目 的
学士課程教育の質的転換として,能動的学習(アクティブラーニング)が求められている。学生の主体的な学修のためには,学生に授業のための事前準備,授業の受講,事後の展開を促す教育上の工夫が必要であるとされている。今回,Team-Based Learning(TBL:チーム基盤型学習)によるアクティブラーニング化を図った演習授業を実施した。その効果について検証する。
方 法
小児理学療法学の講義において,理学療法士養成4年制大学生37名と3年制短期大学生48名に同じ内容の講義を15コマ,レクチャー形式で実施し,同じ定期試験にて学業成績の差をみた。また大学生については講義後,TBLによる演習授業を10コマ実施した。演習はグループごとに担当疾患を提示し,疾患から考えられる理学療法評価・治療について実技を交え説明させた。そしてグループ発表の前には予習テストを実施し,発表グループだけが学習することがないような取組みを行った。また次の週には復習テストを実施し,全員が知識の整理・暗記を行うよう促した。復習テストは演習授業を受講していない短大生にも実施し,学業成績の差から演習授業の効果をみた。すべての演習授業終了後には,講義姿勢・講義形式・動機づけに関する質問紙調査を実施した。本調査の実施にあたっては大学倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
講義のみ実施した時点では短大生の方が成績は良く,演習終了時には大学生の方が有意に成績は良かった。TBLによる演習の効果が確認できた。またアクティブラーニングで重要とする予習・復習をしている学生の方が予習・復習テストの成績は良い傾向にあった。しかし予習・復習をしている学生が少なかった。口頭での促しでは学習行動につながりにくく,自主学習への意欲が低い学生に対する教育効果の低さが窺えた。予習・復習テストの結果が科目成績の一部であることを説明し,外的な動機づけではあるが,まずは学習する姿勢を身につけることが大事であると言える。そして発表グループと聴講グループの予習・復習テスト成績は共に発表グループの成績が良い傾向にあった。発表グループが誰よりも学習したという責任感の現れである。またプレゼンテーション形式が,意味や納得を求めて高次の認知機能を用いた成果であると考える。一方,聴講グループの学生が発表グループに頼っていることも窺えた。学習集団に対して均質な学習効果を得ることが困難であることも窺えた。また予習・復習テストの後には,グループで間違えた問題に対して正しい知識を確認し合うことを取り入れた。予習テスト直後の協同学習はその後に聴講するグループ発表の理解度に大きく影響し,復習テスト後の協同学習は知識の最終整理・定着に活用できていた。また自律的動機づけの学生は統制的動機づけの学生よりも最終成績が良かった。最終成績は定期試験,予習・復習テスト,発表点数,出席状況など総合的なものである。半年という長期間の継続的な努力が必要であり,これには高い学習動機づけが必要であることがわかった。最後に,講義形式については学力が高い学生ほどレクチャー形式の講義を好む傾向にあった。アンケート結果から,グループワーク・発表形式の講義を好む学生は,学習に対する能動的な姿勢が感じられた。レクチャー形式の講義を好む学生は「学生同士だと臨床的なことが分からない。」というように受け身ではあるが高い意欲が感じられた。そのような不安を与えないよう学生の発表の後には必ず教員の「臨床的知識」の補足をするように努めたい。これらのようにTBLの効果は確認できたが,アクティブラーニングに適応する大学生の意欲はまだまだといえ,それを引き出す教員の教育力が大いに期待される。
学士課程教育の質的転換として,能動的学習(アクティブラーニング)が求められている。学生の主体的な学修のためには,学生に授業のための事前準備,授業の受講,事後の展開を促す教育上の工夫が必要であるとされている。今回,Team-Based Learning(TBL:チーム基盤型学習)によるアクティブラーニング化を図った演習授業を実施した。その効果について検証する。
方 法
小児理学療法学の講義において,理学療法士養成4年制大学生37名と3年制短期大学生48名に同じ内容の講義を15コマ,レクチャー形式で実施し,同じ定期試験にて学業成績の差をみた。また大学生については講義後,TBLによる演習授業を10コマ実施した。演習はグループごとに担当疾患を提示し,疾患から考えられる理学療法評価・治療について実技を交え説明させた。そしてグループ発表の前には予習テストを実施し,発表グループだけが学習することがないような取組みを行った。また次の週には復習テストを実施し,全員が知識の整理・暗記を行うよう促した。復習テストは演習授業を受講していない短大生にも実施し,学業成績の差から演習授業の効果をみた。すべての演習授業終了後には,講義姿勢・講義形式・動機づけに関する質問紙調査を実施した。本調査の実施にあたっては大学倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
講義のみ実施した時点では短大生の方が成績は良く,演習終了時には大学生の方が有意に成績は良かった。TBLによる演習の効果が確認できた。またアクティブラーニングで重要とする予習・復習をしている学生の方が予習・復習テストの成績は良い傾向にあった。しかし予習・復習をしている学生が少なかった。口頭での促しでは学習行動につながりにくく,自主学習への意欲が低い学生に対する教育効果の低さが窺えた。予習・復習テストの結果が科目成績の一部であることを説明し,外的な動機づけではあるが,まずは学習する姿勢を身につけることが大事であると言える。そして発表グループと聴講グループの予習・復習テスト成績は共に発表グループの成績が良い傾向にあった。発表グループが誰よりも学習したという責任感の現れである。またプレゼンテーション形式が,意味や納得を求めて高次の認知機能を用いた成果であると考える。一方,聴講グループの学生が発表グループに頼っていることも窺えた。学習集団に対して均質な学習効果を得ることが困難であることも窺えた。また予習・復習テストの後には,グループで間違えた問題に対して正しい知識を確認し合うことを取り入れた。予習テスト直後の協同学習はその後に聴講するグループ発表の理解度に大きく影響し,復習テスト後の協同学習は知識の最終整理・定着に活用できていた。また自律的動機づけの学生は統制的動機づけの学生よりも最終成績が良かった。最終成績は定期試験,予習・復習テスト,発表点数,出席状況など総合的なものである。半年という長期間の継続的な努力が必要であり,これには高い学習動機づけが必要であることがわかった。最後に,講義形式については学力が高い学生ほどレクチャー形式の講義を好む傾向にあった。アンケート結果から,グループワーク・発表形式の講義を好む学生は,学習に対する能動的な姿勢が感じられた。レクチャー形式の講義を好む学生は「学生同士だと臨床的なことが分からない。」というように受け身ではあるが高い意欲が感じられた。そのような不安を与えないよう学生の発表の後には必ず教員の「臨床的知識」の補足をするように努めたい。これらのようにTBLの効果は確認できたが,アクティブラーニングに適応する大学生の意欲はまだまだといえ,それを引き出す教員の教育力が大いに期待される。