日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

2017年10月8日(日) 16:00 〜 18:00 白鳥ホールB (4号館1階)

16:00 〜 18:00

[PF07] 教職及び保育者志望の学生が捉える「遊びの中の学び」とは?

小松和佳1, 野中陽一朗2 (1.広島大学大学院, 2.高知大学)

キーワード:保幼小接続, 遊びの中の学び, 学びの連続性

問題と目的
 保育者と小学校教員は,幼児期と児童期の教育がそれぞれ独自性を持っているからこそ,子どもの学びのつながりについて共通理解する必要性がある。保育者と小学校教員が学びのつながりを理解することは,保幼小接続における子どもへの重要な支援の一つと考えられよう。幼児期における学びは,具体的で文脈のある遊びの中で育まれる(山名,2013)。一方,児童期の学びは,教室で学んだ「学校知」を日々の生活体験から得られる「日常知」と結びつけ,自分自身の問題として体得することである(森,2013)。つまり,学びのつながりを理解することは,幼児期の「遊びの中の学び」から,日々の生活をよりよく生きるために活用できる「生きた知識」への連続性を理解することであると捉えられよう。
 山名(2007)は,教員・保育者養成機関の学生(以下,学生と記す)が捉える「遊びの中の学び」から,子どもの発達を読み取る視点を授業の中で議論することと,理論的な枠組を具体的に提示することの必要性を指摘している。また,福元(2002)は,「遊びの中の学び」について,子どもの具体的な遊びがいかなる学びの認知的,社会的,倫理的実践につながる可能性を持っているのか,保育者が探究することの必要性を示している。幼児期と児童期の教育を担う保育者と小学校教員は,学びの連続性を共通理解するためにも,理論的枠組に基づく「遊びの中の学び」を捉えることが必要であると考えられよう。
 そこで,本研究は,幼児期と児童期両方の教員免許及び保育士資格取得可能な学生を対象とし,次の二つを目的とする。一つ目は,学びの連続性についての概要を学んだ後,遊びの事例を読み取ることにより,学生が捉える「遊びの中の学び」を明らかにすることである。二つ目は,学生が捉えた「遊びの中の学び」が,幼児期の遊びから学びへどのように位置づけられるのか検討することである。
方   法
調査協力者 A大学2回生の学生11名(男子2名,女子9名)と3回生の学生1名(女子),合計12名(キャリア選択では,保育者や教職を志望している)。 手続き 学生は,保幼小接続の必要性及び「遊びの中の学び」に関する説明を受けた後,遊びの事例から学びを見取った。また,その前後に,「遊び中の学び」からイメージしたワードを3分間書くことを求めた。 分析方法 「遊びの中の学び」からイメージされたワード(以下,手続き前をPre,手続き後をPostと記す)は,KJ法により類似するカテゴリーにまとめられた。次に,見出されたカテゴリーを使って,「遊びの中の学び」因果プロセス図とストーリーラインを作成した。
結果と考察
 Pre 138とPost 162(合計300)は,19カテゴリーに分類された。保育にかかわるカテゴリーとして,【保育者のかかわり】,【日常の保育】,【自然環境】,【体験活動】,【道具の使用】,【興味関心】,遊びのカテゴリーとして,【ルールのある遊び】,【自由な遊び】,【表象遊び】,【動的遊び】,遊びから生起する認知的側面として,【創意工夫】,【発想】,【協同性】,遊びから生起する社会的側面として,【言葉による意思疎通】,【規範意識】,遊びから生起する情緒的側面として,【心情】,【自己】,遊びから生起する知的側面として,【感覚的な学び】,【無自覚的】が見出された。これらのカテゴリーは,幼児期の遊びと学びの因果プロセス図として示され,考察された。
 Preでは,社会的側面の【規範意識】,認知的側面の【協同性】,情緒的側面の【自己】が「遊びの中の学び」として多く捉えられていた。特に,【規範意識】が最も多く,学生は,「遊びの中の学び」について,子どもが友達と一緒に遊ぶ中で,友達の気持ちに気づいたり,決まりやルールが必要であることに気づき守ろうとしたりすること,と捉えていると考えられた。Postでは,認知的側面の【創意工夫】,知的側面の【感覚的な学び】が「遊びの中の学び」として多く捉えられていた。特に,【創意工夫】が最も多く,学生は,「遊びの中の学び」について,子どもが遊びの中で考えたり試したり工夫したりすること,と捉えていると考えられた。
 また,PreからPostへと大幅に増えたカテゴリーは,【創意工夫】,【発想】,【感覚的な学び】,【ルールのある遊び】,【自然環境】であった。これらのカテゴリーは,手続きで使用した事例の遊びの内容に該当していた。つまり,手続きで扱った事例が,学生の捉える「遊びの中の学び」に影響を及ぼしていることが明らかとなった。