16:00 〜 18:00
[PF19] やる気低下状況において動機づけ調整方略が学習行動に与える影響
高校生のやる気低下状況に着目した検討
キーワード:動機づけ調整方略, 学習行動, 高校生
問題と目的
「やる気がおこらないため勉強が進まない」という悩みを挙げる高校生は多い (Benesse教育開発センター, 2015)。このやる気が起こらない原因のひとつとして考えられるのが,やる気の上手な高め方が分からない,つまり動機づけ調整方略の問題であるといえるだろう。
これまでの研究から,動機づけ調整方略の使用はやる気低下状況によって異なることが示唆されている(Wolters, 1998)。しかし,やる気低下状況を考慮した動機づけ調整方略の研究は少なく,取り上げられているやる気低下状況も限られている。
そこで,本研究では高校生を対象にやる気低下状況を調査し,やる気低下状況と動機づけ調整方略との関連について検討を行う。さらに,やる気低下状況における動機づけ調整方略と学習行動の関連についても検討する。
方 法
予備調査 赤間(2013)とBenesse教育研究開発センター(2013)を参考に,やる気低下尺度を作成した。その後,公立高校1校に協力を依頼し,1,2,3年生計1077名を対象に調査を実施した。その結果,やる気低下状況として,「課題過多状況(課題が多くてやる気が低下する)」「能力に対する低効力感状況(どれだけ頑張ってもテストなどで良い点が取れそうになくて,やる気が低下する)」「低優先度状況(他にやりたいことがあって,やる気が低下する)」「身体的疲労状況(部活動などの疲れにより,やる気が低下する)」の4因子が見出された。
本調査 英語学習において,課題過多状況と低優先度状況という2タイプのやる気低下状況を想定した上で回答する質問紙を作成した(群間で質問紙を配付)。
調査対象者 三重県内の高校1年生181名,2年生185名の計366名
質問紙①動機づけ調整方略 梅本・田中(2012)と伊藤・神藤(2003)を参考に英語学習場面に合うよう作成した(26項目)。②認知的方略 佐藤・新井(1998)によって作成された学習方略使用尺度の「作業方略」5項目,「認知的方略」5項目。③持続性の欠如 山下(1985)の5項目。④課題先延ばし 藤田・仲澤(2010)によって作成された中学生用課題先延ばし行動測定尺度の9項目。
結果と考察
尺度構成 事前の調査で得られた「成績方略」「興味高揚方略」「協同方略」「達成想像方略」の因子構造において確認的因子分析を行った結果,適合度は課題過多状況でGFI=.907, AGFI=.857, CFI=.930, RMSEA=.077,低優先度状況でGFI=.926, AGFI=.886, CFI=.959, RMSEA=.060となり,どちらも概ね満足できる値が得られた。
やる気低下状況と動機づけ調整方略の関連 やる気低下状況によって用いられる動機づけ調整方略が異なるかどうかを検討した。やる気低下状況を独立変数,4つの動機づけ調整方略を従属変数とした対応のないt検定を行った結果,いずれの動機づけ調整方略にも有意差は見られなかった。
やる気低下状況別における動機づけ調整方略と学習行動の関連 4つの動機づけ調整方略を独立変数,各学習行動を従属変数とし,やる気低下状況別に重回帰分析を行った(Table1)。その結果,作業方略においてやる気低下状況の違いがみられ,課題過多状況で各動機づけ調整方略から作業方略への影響が示された。つまり,課題が多くてやる気が低下している際には,認知処理の浅い学習方略を促進するのに動機づけ調整方略が役立つと考えられる。また,低優先度状況において,成績重視方略から課題先延ばしへの抑制的影響が示された。明確なやる気低下状況を想定していないこれまでの研究においては,成績重視方略は学習行動に阻害的な影響を与えることが示唆されてきたが,やる気低下状況別に検討することで,成績重視方略の促進的な側面が示唆された。本研究の結果,動機づけ調整方略が学習行動に及ぼす影響はやる気低下状況によって異なる可能性が示された。
「やる気がおこらないため勉強が進まない」という悩みを挙げる高校生は多い (Benesse教育開発センター, 2015)。このやる気が起こらない原因のひとつとして考えられるのが,やる気の上手な高め方が分からない,つまり動機づけ調整方略の問題であるといえるだろう。
これまでの研究から,動機づけ調整方略の使用はやる気低下状況によって異なることが示唆されている(Wolters, 1998)。しかし,やる気低下状況を考慮した動機づけ調整方略の研究は少なく,取り上げられているやる気低下状況も限られている。
そこで,本研究では高校生を対象にやる気低下状況を調査し,やる気低下状況と動機づけ調整方略との関連について検討を行う。さらに,やる気低下状況における動機づけ調整方略と学習行動の関連についても検討する。
方 法
予備調査 赤間(2013)とBenesse教育研究開発センター(2013)を参考に,やる気低下尺度を作成した。その後,公立高校1校に協力を依頼し,1,2,3年生計1077名を対象に調査を実施した。その結果,やる気低下状況として,「課題過多状況(課題が多くてやる気が低下する)」「能力に対する低効力感状況(どれだけ頑張ってもテストなどで良い点が取れそうになくて,やる気が低下する)」「低優先度状況(他にやりたいことがあって,やる気が低下する)」「身体的疲労状況(部活動などの疲れにより,やる気が低下する)」の4因子が見出された。
本調査 英語学習において,課題過多状況と低優先度状況という2タイプのやる気低下状況を想定した上で回答する質問紙を作成した(群間で質問紙を配付)。
調査対象者 三重県内の高校1年生181名,2年生185名の計366名
質問紙①動機づけ調整方略 梅本・田中(2012)と伊藤・神藤(2003)を参考に英語学習場面に合うよう作成した(26項目)。②認知的方略 佐藤・新井(1998)によって作成された学習方略使用尺度の「作業方略」5項目,「認知的方略」5項目。③持続性の欠如 山下(1985)の5項目。④課題先延ばし 藤田・仲澤(2010)によって作成された中学生用課題先延ばし行動測定尺度の9項目。
結果と考察
尺度構成 事前の調査で得られた「成績方略」「興味高揚方略」「協同方略」「達成想像方略」の因子構造において確認的因子分析を行った結果,適合度は課題過多状況でGFI=.907, AGFI=.857, CFI=.930, RMSEA=.077,低優先度状況でGFI=.926, AGFI=.886, CFI=.959, RMSEA=.060となり,どちらも概ね満足できる値が得られた。
やる気低下状況と動機づけ調整方略の関連 やる気低下状況によって用いられる動機づけ調整方略が異なるかどうかを検討した。やる気低下状況を独立変数,4つの動機づけ調整方略を従属変数とした対応のないt検定を行った結果,いずれの動機づけ調整方略にも有意差は見られなかった。
やる気低下状況別における動機づけ調整方略と学習行動の関連 4つの動機づけ調整方略を独立変数,各学習行動を従属変数とし,やる気低下状況別に重回帰分析を行った(Table1)。その結果,作業方略においてやる気低下状況の違いがみられ,課題過多状況で各動機づけ調整方略から作業方略への影響が示された。つまり,課題が多くてやる気が低下している際には,認知処理の浅い学習方略を促進するのに動機づけ調整方略が役立つと考えられる。また,低優先度状況において,成績重視方略から課題先延ばしへの抑制的影響が示された。明確なやる気低下状況を想定していないこれまでの研究においては,成績重視方略は学習行動に阻害的な影響を与えることが示唆されてきたが,やる気低下状況別に検討することで,成績重視方略の促進的な側面が示唆された。本研究の結果,動機づけ調整方略が学習行動に及ぼす影響はやる気低下状況によって異なる可能性が示された。