16:00 〜 18:00
[PF55] 大学生の共感経験と達成動機との関連
キーワード:大学生, 共感経験, 達成動機
問題と目的
共感経験(角田,1994)は,「①情動伝染などの受動的な共感性を除く,②感情的・認知的アプローチの両方が含まれる,③過去の経験という制約がある,④感情の種類に幅がある」といった定義から成り,自分と他者が異なる存在であることを意識した共感ができる者と,そうでない(同情)者とを識別できるとされている(角田,1994)。
個人の活動体験における共感の背景には,それまでの価値観や学習歴が影響する(Davis,1999)といわれている。たとえば個人が何らかの活動をする際に,過去の経験から習得される共感の背景要因として,「難しいことを成し遂げたり,障害を克服し高い標準に達したりすること。他人と競争し他人をしのぐこと,才能をうまく使って自尊心を高めること」といった達成動機(Murray,1964)の影響が想定される。
先行研究を概観すると,自己と他者の区別をもった共感経験の1つの関連要因として,動機を詳細に検討している研究はいまだ少ない。
そこで本研究では,自他の区別に注目した共感の類型化により,共感経験と達成動機との関連を詳細に検討することを目的とした。
方 法
調査対象 私立A大学の大学2~4年生106名(男子60名,女子46名)。
調査時期 2016年1月中旬
使用尺度
1)角田(1994)の「共感経験尺度改定版」。評定は,「1.全くあてはまらない」~「7.とてもあてはまる」の7件法である。
2)堀野・森(1991)の「達成動機尺度」。評定は「1.全然当てはまらない」~「7.非常によく当てはまる」の7件法である。
結 果
共感経験尺度改定版(角田,1994)の因子分析の結果,「共有経験尺度(Scale of Sharing Experience:SSE)」および「共有不全経験尺度(Scale of Insufficient Sharing Experience:SISE )」の2尺度に分かれた。先行研究と同様に,全体の中央値を基準に高得点群と低得点群に分け,2尺度の組み合わせ(両向型,共有型,不全型,両貧型)から,共感性の類型化をおこなった。
この共感経験4タイプごとに,達成動機の下位尺度(自己充実達成動機および競争型達成動機)
得点における一元配置分散分析を行ったところ,それぞれの様相に違いが見られた。具体的には,「自己充実達成動機」において,「両向型」が「両貧型」よりも得点が高かった。また,「競争型達成動機」において,「不全型」が「共有型」よりも得点が高かった(Table 1)。
考 察
結果より,共感経験4タイプにおける達成動機の様相には違いが見られた。
「両向型」は自他を独立した存在として捉えることができており,自己の感情体験を内省する力をもっているという(角田,1994)。ゆえに,他人と競争して比較する傾向をもつ動機ではなく,自分自身を内発的興味にもっていくことができる動機を有することが予想される。
「共有型」は個別性の認識は低く,共有体験を自己に引きつける未熟な共感で(角田,1994),自己愛的確信が高いという特徴をもつという(角田,1998)。ゆえに,自己への自信の高さから他者との競争意識は相対的に低くなると推測される。
「不全型」は,潜在的に他者と関わろうとしながらも,他方で他者を阻むというアンビバレントな側面をもち,孤独感,信頼感の低さなどの特徴をもつという(角田,1994)。ゆえに,他人と対等の関係よりも上下関係や勝ち負けでの関係を意識しやすい傾向が可能性として考えられる。
「両貧型」は対人関係に苦手意識を感じており,自我の形成が弱く,無気力などの特徴があるという(角田,1994)。ゆえに,物事を成し遂げる際に内発的興味にもっていく意識を持ちにくいことが予想される。
共感経験(角田,1994)は,「①情動伝染などの受動的な共感性を除く,②感情的・認知的アプローチの両方が含まれる,③過去の経験という制約がある,④感情の種類に幅がある」といった定義から成り,自分と他者が異なる存在であることを意識した共感ができる者と,そうでない(同情)者とを識別できるとされている(角田,1994)。
個人の活動体験における共感の背景には,それまでの価値観や学習歴が影響する(Davis,1999)といわれている。たとえば個人が何らかの活動をする際に,過去の経験から習得される共感の背景要因として,「難しいことを成し遂げたり,障害を克服し高い標準に達したりすること。他人と競争し他人をしのぐこと,才能をうまく使って自尊心を高めること」といった達成動機(Murray,1964)の影響が想定される。
先行研究を概観すると,自己と他者の区別をもった共感経験の1つの関連要因として,動機を詳細に検討している研究はいまだ少ない。
そこで本研究では,自他の区別に注目した共感の類型化により,共感経験と達成動機との関連を詳細に検討することを目的とした。
方 法
調査対象 私立A大学の大学2~4年生106名(男子60名,女子46名)。
調査時期 2016年1月中旬
使用尺度
1)角田(1994)の「共感経験尺度改定版」。評定は,「1.全くあてはまらない」~「7.とてもあてはまる」の7件法である。
2)堀野・森(1991)の「達成動機尺度」。評定は「1.全然当てはまらない」~「7.非常によく当てはまる」の7件法である。
結 果
共感経験尺度改定版(角田,1994)の因子分析の結果,「共有経験尺度(Scale of Sharing Experience:SSE)」および「共有不全経験尺度(Scale of Insufficient Sharing Experience:SISE )」の2尺度に分かれた。先行研究と同様に,全体の中央値を基準に高得点群と低得点群に分け,2尺度の組み合わせ(両向型,共有型,不全型,両貧型)から,共感性の類型化をおこなった。
この共感経験4タイプごとに,達成動機の下位尺度(自己充実達成動機および競争型達成動機)
得点における一元配置分散分析を行ったところ,それぞれの様相に違いが見られた。具体的には,「自己充実達成動機」において,「両向型」が「両貧型」よりも得点が高かった。また,「競争型達成動機」において,「不全型」が「共有型」よりも得点が高かった(Table 1)。
考 察
結果より,共感経験4タイプにおける達成動機の様相には違いが見られた。
「両向型」は自他を独立した存在として捉えることができており,自己の感情体験を内省する力をもっているという(角田,1994)。ゆえに,他人と競争して比較する傾向をもつ動機ではなく,自分自身を内発的興味にもっていくことができる動機を有することが予想される。
「共有型」は個別性の認識は低く,共有体験を自己に引きつける未熟な共感で(角田,1994),自己愛的確信が高いという特徴をもつという(角田,1998)。ゆえに,自己への自信の高さから他者との競争意識は相対的に低くなると推測される。
「不全型」は,潜在的に他者と関わろうとしながらも,他方で他者を阻むというアンビバレントな側面をもち,孤独感,信頼感の低さなどの特徴をもつという(角田,1994)。ゆえに,他人と対等の関係よりも上下関係や勝ち負けでの関係を意識しやすい傾向が可能性として考えられる。
「両貧型」は対人関係に苦手意識を感じており,自我の形成が弱く,無気力などの特徴があるという(角田,1994)。ゆえに,物事を成し遂げる際に内発的興味にもっていく意識を持ちにくいことが予想される。