日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PF(01-81)

ポスター発表 PF(01-81)

2017年10月8日(日) 16:00 〜 18:00 白鳥ホールB (4号館1階)

16:00 〜 18:00

[PF66] イングランドの中学校におけるTheatre in Educationを用いたいじめ防止プログラムに関する一考察

伊藤嘉奈子 (鎌倉女子大学)

キーワード:Theatre in Education, いじめ予防教育, 中学校

問題と目的
 国を問わず,いじめは深刻な問題となっており,いじめの発生を防ぐことを重視した予防教育が国内外で実施されている。イギリスでは,「PSHEE」,「SEAL」,「Peer Support」,「Bystander Defender Training」や,プログラム化されていない取り組み等,多くの実践が学校現場でなされている(Thompson & Smith,2011)。また,いじめだけを扱ったものではないが,Theatre in Education(TIE)という,劇団員が学校の実態を調査し,学校のカリキュラムと子どもの生活に関連する主題を見つけ,独自のドラマを創作するという演劇と教育が最も理想的な形で結びついたイギリスならではの取り組みがある(清水,1988)。伊藤(2017)は,Englandで行われたTIEを用いたいじめ予防を目的とした心理教育的プログラムを観察し,プログラム構成,俳優の演技や役割,参加生徒の様子や生徒に求められるスキル等を考察し,プログラムの意義・効果と,日本への導入の可能性について述べた。本研究では,伊藤(2017)で詳細に取り上げなかったプログラムの実施とその実施者の観点に焦点をあて,考察することを目的とする。
方   法
 Box Clever TheatreというTIEのプログラムを制作・提供している劇団がLincolnshire及びLondonの中学校で「The Hate Play Project」といういじめを扱ったTIEのプログラムを実施した(Table 1)。筆者は,Londonの公立中学校6校の13~15歳の生徒,合計1,010人を対象とした実践を非参与観察法にて観察し,さらにDevelopment Managerへのインタビューを実施した。
結果と考察
 当劇団による質問紙の結果,生徒・教員ともにこのプロジェクトに対して非常に高い評価を行っていた。その背景には,いじめ場面を再現した劇の内容が参加生徒のニーズや学校の実態に合ったものであり,生徒のモチベーションが高かったことが影響していると考えられる。
 さらに,プロの俳優による迫力ある演技や,俳優がワークショップのファシリテーターとして十分に機能していたことも大きな要因と考えられる。すなわち,プログラムの実施者である俳優は,教育に関する知識があり,グループワークを推進するトレーニングを受け,集団力動の把握と対応のスキルも備えており,プログラムの展開に大きな影響を与えていた。日本への導入の際には,俳優がactor₋teacherとしてプログラムの実施者となること,プログラム実施者のための研修・トレーニングの実施,長期的なプログラム実施の時間の確保及びカリキュラムへの位置づけ,プログラム実施の資金等が課題となると考えられる。
引用文献
Box Clever Theatre (2015). What will you do? The Hate Play Project symposium Programme.
伊藤嘉奈子 (2017). イングランドの中学校におけるTheatre in Educationを用いたいじめ防止プログラム 鎌倉女子大学紀要 24, 11-23.
清水豊子 (1988). イギリスにおける演劇教育の歴史と現状 日本演劇学会紀要, 26, 37-45.
Thompson, F. & Smith, P. K. (2011). The Use and Effectiveness of Anti-Bullying Strategies in Schools, Department for Education.